デジタルマーケティングに携わっている方の業務に役立つ知識として、MMの上級ウェブ解析士が資格取得時にも使用していた分析手法を中心に解説していきます。Webサイトの運営に関わっている方、業務の改善や提案に必要なことを知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
現場での即戦力になる認定資格「上級ウェブ解析士」とは?
今回は、デジタルマーケティングに関する実践的なスキルを高めるための分析手法や課題抽出のポイントについて解説していきます。
MMには、「上級ウェブ解析士」の認定資格を取得しているメンバーも在籍していますが、デジタルマーケティングに携わる方であれば、「上級ウェブ解析士」や「ウェブ解析士」の資格をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。また、「上級ウェブ解析士」と「ウェブ解析士」は、資格としてどのような点が違うのか知りたい方も多いのではないでしょうか。
「ウェブ解析士」は、主に用語理解や知識習得を目的とした資格なので、基礎的なものとなります。次のステップとなる「上級ウェブ解析士」は、現場で即戦力となるプロフェッショナルな視点を持つ解析士としての認定資格です。そのため「上級ウェブ解析士」は、より現場の業務に沿った実践的なものであり、ウェブ解析やデジタルマーケティングの知識を駆使してコンサルティングまでこなせる解析士となります。
市場理解のスタートラインは事業分析から!
ウェブ解析をするためには、どのようなステップが必要なのか? 何となく業務の流れの中で身につけている方も多いのかもしれませんが、上級ウェブ解析士は、デジタルマーケティングの施策の立案と運用管理の一連の流れについて、事業分析や提案書の作成などを通して実践していきます。今回は、その流れに沿って解説していきますので、戦略を立てる前段階で必要な「分析」のフェーズから説明していきます。
※参考:「上級ウェブ解析士とは」
【事業分析の必要性】
マーケティングの戦略の事前準備として最初にするべきことは、「分析」です。自社や他社の立ち位置を知ることで、より明確な目標や目指すべきポジションなどがハッキリしていきます。移り変わりが早いWebマーケティング業界では、その時々でトレンドになる施策などもありますが、自社の立ち位置や売る商品と必ずしも相性の良い施策であるとは限りません。戦略や施策をトレンドに左右されずに、基礎となる分析から始めて必要な施策を打っていきましょう。
分析は、自社の事業理解や顧客理解を深めるための大切な第一歩でもあります。現在の業界の状況や自社・他社の立ち位置の理解が正確であれば、誤ったデータの読み取りや施策を立案せずに本質的な課題を見つけ出し、的確な解決策へと導くことが可能になります。
【事業・環境分析のフレームワーク】
分析のためのフレームワークは複数ありますが、事業(自社)・環境(市場)分析時に役立つフレームワークの特徴や方法を解説していきます。
《市場理解》
■PEST分析
Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の分析。
外部環境が自社に与える影響をマクロ的な視点で分析していく。環境分析は、この先のマーケティング戦略や施策のベースとなるもの。マクロ環境は、税制の変化、法改正、株価や人口の変動、AIやブロックチェーン活用といった自社でコントロールすることが難しいもの。そのため、自社に影響を与える「脅威」を洗い出せる。
PEST分析では、市場における自社製品の将来性(法改正、規制緩和等によるビジネスチャンス)や変化(値上げ・値下げ、撤退など)を中長期的な事業戦略策定として予測できる。
■3C分析
Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の分析。
この分析では、市場・顧客→競合→自社の順番を守って分析をしていく。「市場」がどのような状況で「顧客」は何を求めているか?「競合」はどのような戦略を取っているか? 「自社」の脅威や強みは何か? これらを調査し、それぞれの立ち位置を明確にすることで、顧客・市場の求めるニーズが把握でき、競合他社がどのような戦略でマーケティングをしているかが分かる。そして、最後の「自社」分析の際には、市場・顧客の中に含まれるPEST分析のマクロ環境の要素も意識したうえで分析を行うことが重要。この情報を元に、自社がどのような戦略を取るべきかを導き出していく。
■5フォース分析
「業界内の競合/代替品の脅威/新規参入者の脅威/買い手の交渉力/売り手の交渉力」の分析。
PEST分析がマクロ分析(自社でコントロールすることができないもの)であるのに対して、5フォース分析はミクロ分析(自社でコントロールすることができるもの)となる。この分析では、競争要因の5つを元に競合各社や業界全体の状況、収益構造を明らかにすることができる。その中で、自社の利益の上げやすさを分析していくが、自社が属する業界の分析では主観的な目線になってしまうことが多い。公平な目線で評価できるよう、具体的なデータを収集するようにし、自社にとって都合の良い分析になっていないか客観的に評価していく必要がある。客観的なデータを集めることによって正しい分析が行え、自社の強みやリスクを漏れなくチェックすることができる。
《自社理解》
■SWOT分析
Strength(強み)Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の分析。
最初に内部環境を強みと弱みに、外部環境を機会と脅威に分けて整理し、これらから自社の現状を把握する。
・強み(S) …自社の競争優位な点、商品などの独自の技術・ユニークな機能、内部リソースの強み
・弱み(W) …競合に比べて劣る点、多いクレーム、顧客満足度低下の要素
・機会(O) …新規市場や顧客が獲得できるか、技術の進歩で新製品が開発できるか、新たな販路はあるか
・脅威(T) …法改正の可能性、業界に起こりうる変化、技術の進化による影響
さらに、内部環境と外部環境の内容をベースに、それぞれの要素を掛け合わせて「クロスSWOT分析」を実施する。マトリックスで組み合わせていくことで、多面的な分析ができる。
〈クロスSWOT分析の要素〉
・強み(S)×機会(O) …チャンスが来たとき、自社の強みを活かして何ができるか
・弱み(W)×機会(O) …チャンスを活かすために、弱みをどう克服するか
・強み(S)×脅威(T) …脅威に遭遇した時に、自社の強みを活かしてどう切り抜けるか
・弱み(W)×脅威(T) …脅威に遭遇した時に、弱みへの影響を最小限にとどめるにはどうするか
この分析によって、チャンスが来た場合や脅威に遭遇した場合など、それぞれのシーンに対しての具体的な戦略が見えてくる。
分析で現状整理ができれば課題抽出は簡単!
フレームワーク自体は目的によってさまざまな手法があり、他にも数十以上あります。興味がある方は調べてみていただくと今後の業務に役立てられる機会があるかもしれません。また、分析に関しては「どのフレームワークを使うか?」に気を取られてしまいそうですが、フレームワークは目的ではなく手段のひとつです。さまざまな切り口から分析をするための《手段》であることを忘れないようにしましょう。フレームワークは、何を使ったとしても、その先の戦略を正確に導きだすための元データがアウトプットできているかどうかが重要です。分析が必要になった時に、最適なフレームワークを選択できるように知識を付けておきましょう。
各フレームワークで分析を終えると、現状整理ができた状態になります。次のステップは課題抽出となるので、分析データを活用し、その中から自社のマーケティング課題を抽出していきます。
マーケティング課題の抽出方法は、いわば自社の「弱み」の克服手段や、顧客が「製品・サービスを購入しない理由」を探し出すことでもあります。すでに前段階の分析を通して自社の弱い部分や自社・競合の立ち位置、何が脅威になるかについても把握できているため、これらは見つけやすい状態になっていると思われます。そして、どのような方法であれば自社の商品やサービスの魅力を伝えることができるか?(=戦略)を次の段階で考えていきましょう。
戦略を立てるのは下準備=分析データを整えてから!
さまざまな角度から事業分析をすることで、デジタルマーケティングの運用が上手く回らない、成果が出ない……といった場合にも打つ手が見えやすくなるのではないでしょうか。ぜひ、ご紹介した分析をみなさまの実務にも取り入れてみて下さい。また、すでに過去の分析データを持っているという方は、改めて確認し、今の視点で再分析してみるのも良いかもしれません。
MMには製薬業界のデジタルマーケティング運用に特化したメンバーが揃っていますので、業界に特化した知識を持ちつつ、今回ご紹介したウェブ解析にも対応することができます。他にも、デジタルマーケティングでお困りのことがあればお気軽にお問い合わせください。
次回は、今回の分析内容を踏まえ、その先のステップである戦略立案について解説していきます。