製薬会社で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)事例まとめ(2020年6月〜7月)

デジタルマーケティング

2020.08.04

患者数が増加する中、製薬会社のMR活動においてデジタルコミュニケーションの活用が急がれます。

公開:2020/8/4

みなさん、こんにちは。広報担当です。

今回は6月~7月の製薬会社の動きをまとめています。デジタル化を急がなくてはならなくなった医療業界に対し、製薬会社はどのような方法でアプローチを続けているのか。誰もが経験したことのない状況を乗り越えていくためには何が出来るのか。各社のマーケティング関連のデジタルトランスフォーメーション(DX)事例をまとめましたので、自社での取り組みのヒントにしてみてください!

デジタルの「波」も来ている?DXが標準化していく医療業界

緊急事態宣言の解除以降、経済活動が再開の兆しを見せる中で新型コロナウイルスの第2波と思われるような感染状況も出始めています。

緊急事態宣言以降、製薬会社はMRの医療機関への直接訪問(リアルマーケティング)が減り、それらをフォローする手段としてリモートでの面談やメルマガの配信、ウェビナーなど、デジタルコミュニケーションを活用しています。このような対応は一時的なものではなく、恒久的なものになるであろうことは医療業界全体で体感しているのではないでしょうか。

直近の医療業界のDXに対する動きを見ていると、最初は手探り状態だった企業も徐々にデジタルツールへの対応が進み、取り入れられているように感じます。強制的にデジタル対応しなくてはいけない状況で、製薬会社はどう変わったか。そして、それは医療従事者に受け入れられているのか。今後は、医療の現場や患者さんが本当に必要としていることがどんなものであるのか見極めていく必要がありそうです。

さらなる感染の広がりという最悪の事態も想定しつつ、以下の事例から医療業界の動向についてチェックしていきましょう。

◆MR・MS活動◆

新人MR導入研修 新型コロナを受け自宅・Web研修主流に 求められる新人MRへのケア
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69390

製薬会社各社は、リモートでの対応を中心にした活動へと切り替わりを見せています。新卒MRの研修に対してもフルリモート対応をしてきた製薬会社も多く、この流れは今後も取り入れられていくでしょう。従来通りの研修を行っていたのはわずか数%の企業となっていました。


アルフレッサHD・荒川社長 MSが得意先の要望に応じリモートMRにつなぐ活動展開 コロナ後成果もhttps://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69607

医療用医薬品、医療機器等の卸販売のアルフレッサホールディングスでは、MS(医薬品卸販売担当者)の機能の約半分をオンラインにシフトすることでMSの立ち位置を確立し、付加価値の高い提案活動への時間を増やすという流れを描いているようです。さらに、MSが得意先の要望に応じてリモートMR(医薬情報担当者)につなぐ活動へと体制の構築を進めています。


エムスリー株式会社アステラス製薬、リモートディテーリングサービス「my MR君」によるMRからの情報提供を開始 ~デジタルトランスフォーメーションの加速を支援~https://corporate.m3.com/press_release/2020/20200608_001609.html

このようなオンラインでのコミュニケーションは、既存のMR業務の中にも広がり続けているようです。アステラス製薬では、エムスリー株式会社の「my MR君」(ターゲット医師と直接コミュニケーションを図れる専用プラットフォーム)を取り入れ、MR自身が「顔」や「名前」をサイト上に表示させて医師とMR、双方向からコミュニケーションが取れる仕組みを採用しました。


大日本住友製薬株式会社デジタル技術を介した医療関係者向けの新たな情報提供 iMR およびvMR 開始のお知らせ
https://www.ds-pharma.co.jp/ir/news/2020/20200622-2.html

大日本住友製薬株式会社では、「iMR®」でリモート専任MRが非定型抗精神病薬「ラツーダ」を中心とした精神科領域の製品に関する情報を提供。さらに、「vMR™」という、バーチャルMRが製品や対象疾患、医療行政について説明してくれるというユニークなVRシステムを発表しています。それぞれ設定が異なる3人のオリジナルキャラクターがいるというのも、機械的すぎずに親しみが持てます。


ファイザー株式会社COVID-19に対応する 『ニューノーマル・ロードマップ』~医薬情報担当者(MR)等外勤社員および本社等内勤社員の活動方針~https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2020/2020_06_22.html

ファイザー株式会社では、MRや内勤社員の今後の活動方針を発表しました。期間によって働き方のステージを分け、「新しい生活様式の実践」を取り入れた新たな働き方を目指しています。7月1日より在宅勤務を解除しつつも、医療関係者との面会はリモートを優先する方針にしていくとのことです。

◆新型コロナウイルス感染症への取り組み調査事例◆

オンライン診療を経験した医師の4割超 MRとのリモート面談に抵抗なく MCI調べ
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69588

2019年冬以降、医師とMRの直接の面談は大幅に減少していました。ヘルスケア業界に特化したコンサルティング会社、エム・シー・アイの調査によると、リモート診療の経験があるという医師の4割ほどが、MRとのリモート面談を利用したいと思う傾向にあるという結果が出ていました。新型コロナウイルスの影響も考慮しているせいか、オンライン診療の準備を進める医師も昨年秋の調査から倍増しているのだそうです。


PwC 新型コロナ下の医師インサイト VR活用やMR/MSL呼び出しアプリなど「プル型」に期待
https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/commercial-model-pharmaceutical200622.html

さらに、PwC Japan グループの4月最終週のアンケート調査によると、MRとの直接の面談機会が減少した部分をフォローし、医師との接点になっていたオンラインチャネルはWEBサイトやWEBセミナーだったことが判明しました。

また、現場の医療従事者が必要としているDXの施策は、製品情報などのデジタル化、情報提供時のVRの活用、MR/MSLをリモートで呼び出せるアプリなどが多く挙がっています。これまではプッシュ型の営業が中心でしたが、個々の医師が必要とする情報を興味・関心に応じて提供するプル型が適した形であることも分かって来たようです。

◆チャットボット活用事例◆

アストラゼネカ、患者さん向けチャットボットサービス、「アズポート」の対象製品を拡充
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2020/2020070801.html

医療業界のWEBサイトに限らず活用される場面が多くみられるチャットボット。 アストラゼネカ株式会社では、患者さん向けAI型チャットボット「アズポート」がリリースされています。そこで、今後もさらに多くの問い合わせに対して的確な情報提供をサポートするため、チャットボットの対象製品を6製品増やすことを発表しました。

◆AI活用事例◆

今後はさまざまな場面で人手不足を解消するためにも活用されることが見込まれているAI。 多忙を極める医療従事者にとっては、時間を問わず対応できるツールは、いち早く現場に取り入れたいアイテムなのかもしれません。

キッセイ薬品工業株式会社 医療関係者向け情報サイトにおけるオートメーションディテールシステム「AI-Detail」の運用開始についてhttps://www.kissei.co.jp/news/2020/20200608-3638.html

キッセイ薬品工業株式会社は、木村情報技術株式会社と共同開発を行ったオートメーションディテールシステム「AI-Detail(アイ-ディテール)」の運用開始を発表しました。これは医療関係者への情報提供時、検索キーワードに合わせて関連する情報のスライドが自動抽出されたり、スライドが表示されるとともに説明音声が流れるというもの。視覚のみの情報提供から視覚と聴覚を組み合わせたツールへと進化しています。

◆ビッグデータ活用◆

歩数計測や睡眠管理など、健康維持のためのアプリケーションはさまざまな企業からリリースされ、アプリを活用したヘルスケアサービスはすでに多くの人の健康を支え始めています。

エーザイ・DeNA 業務提携契約に基づきスマートフォンアプリ「Easiit(イージット)アプリ」を共同提供
https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202047.html

エーザイ株式会社は、株式会社ディー・エヌ・エーの子会社、DeSCヘルスケア株式会社と業務提携契約に基づいたスマートフォンアプリ「Easiit(イージット)アプリ」を共同提供しました。

これは、エーザイの認知症領域の豊富な経験とディー・エヌ・エーのゲームやスポーツのノウハウを活用して開発されたもの。アプリを通じてデータ解析をしつつ、ブレインパフォーマンス(脳の健康度)低下のリスクを減らせるよう、ブレインパフォーマンスによい行動や習慣について独自にスコアリングし、その変化や内訳などを元に良い習慣作りをサポートします。

◆新会社・新組織設立・協業◆

withコロナの中で、製薬会社各社の今後の経営計画は、「患者中心」の医療の実現へと向かう動きが目立ち始めています。

日本イーライリリー株式会社:社長メッセージhttps://www.lilly.co.jp/about/default.aspx

日本イーライリリー株式会社の代表取締役社長、シモーネ・トムセン氏も、社長就任後のメッセージに「患者さん中心」の思考を掲げ、デジタルテクノロジーの活用に前向きであることを伝えています。


塩野義製薬  新中期経営計画の策定についてhttps://www.shionogi.com/jp/ja/news/2020/06/200601-1.html

塩野義製薬 中国平安との合弁会社設立に関する契約締結子会社の新設https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2020/07/200713_1.html

塩野義製薬株式会社は、2030年のビジョン達成へ向けた新中期経営計画を策定。「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」と今後のビジョンを明確にし、「創薬型製薬企業」から、「ヘルスケアプロバイダー」となるべく、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて取り組んでいます。

さらに、7月中旬の取締役会ではデータを活用したヘルスケアソリューションを武器にグローバル開発品の開発拠点への育成を見据え、「中国平安保険」と合弁会社の設立へ踏み切ったと説明がありました。


メドレー、製薬企業および医療機器メーカー等の デジタル活用支援を行う新子会社「MEDS株式会社」を設立
https://www.medley.jp/release/medsiqvia.html

中外製薬 AWS ジャパンと中外製薬、製薬業界におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みに関するオンライン記者説明会
https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/media/conference.html

その他、患者向けアプリケーションの開発などを中心に成長してきた株式会社メドレーも、今後は患者中心の医療実現を推進させるため、デジタル活用支援をする子会社「MEDS(メッズ)」を発足させています。

また、中外製薬株式会社は、社内の研究プロジェクト、アカデミアや病院との共同研究プロジェクトを迅速に進められる研究環境を2021年末までに整備すると発表。基盤技術にアマゾンウェブサービス(AWS)を採用することでDXを加速させる計画です。

「今」だけではなく、先を見越したDXを!

MR活動はDXで次なる一歩へ

今回の調査では、DXを進めている製薬会社の「次なる一歩」が感じ取れるような事例が多くなっているように感じられました。また、既にリリースされたシステムの機能を拡大したり、機能を増やすなどの工夫が見られました。

これからの時代を生き抜く強固なマーケティング活動に繋げていくためには、実装するDXの機能をさらに掘り下げつつ、現場の医療従事者や患者さんを本当の意味でサポートするものになっているかどうかを見極めることも大切です。

変革の真っ只中にある医療業界。より安全で快適なマーケティングで支えていく最新のDXに今後も注目していきましょう。

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