今回は、前回に引き続き、顧問で株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏による勉強会「世の中の『インチキ医療』はなぜなくならない?」のレポートの後編です。
今回は、“やぶ医者”と呼ばれる医師が出てしまうのはなぜか、かかりつけ医が必要な理由などにも触れています。一般の方も含め、より多くの方に知っておいていただきたい医療の話となっています。
2024.09.03 今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏による勉強会レポートの前編です。 テーマは「世の中の『インチキ医療』はなぜなくならない?」です。前半では、医師がクリニック等を開業す […]
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【勉強会:前編】世の中の「インチキ医療」はなぜなくならない?
勉強会の参加者
2018年中途入社
営業
佐塚さん
2022年新卒入社
Webディレクター
清水さん
2022年新卒入社
Webディレクター
澤田さん
専門医資格がない医師の手術で起きた医療事故も!
では、後半もよろしくお願いします!
前半で専門医という考え方も初めて知りましたが、色々な科を網羅して診られる総合診療専門医もたくさんいてくれたら安心ですよね
とはいえ、総合診療の専門医資格を持っていなくても、何でも診療している先生が実態としては多いのです。
勿論、専門医資格がなくてもたくさん診療経験を積んで良い診たてができるようになる先生はいらっしゃるんですけど、患者さんから見た時のわかりやすさという意味では、やはり専門医資格があった方が良いですね
あの、これまでに専門医資格がないから訴えられた、というケースはないんでしょうか?
それはないと思いますが、さっきの眼科の話で言えば、眼科の専門医ではない医師が眼科診療をしてトラブルを起こしていたというのはありますね。
一昔前にレーシック手術が流行っていた頃、眼科医的にはまぁまぁ儲かるというので、眼科専門医じゃない医師もレーシック手術に手を出していた時期があって。それで失敗例が結構出て、実は専門医が手術をしていなかった、ということで問題になったんです
調べてみると、日本眼科学会のガイドラインでは、『同学会が認定する眼科専門医でなければレーシックの手術は行うことができない』と出て来ますね
先ほどの問題が明らかになって、できたルールだと認識しています。
本来そうでないと拙いですよね
いわゆる“やぶ医者”っていうのは、専門科以外の治療をするから、そう呼ばれるんですか?
そうですね、とんでもない治療をしているケースでそういうケースは結構あると思いますよ
先ほどのジェネラリストの専門性について、もう少し詳しく聞きたいです
NHKの番組で2009年からシリーズ化されていた『総合診療医ドクターG』というクイズバラエティがあって、それがまさにジェネラリストの医師たちをフィーチャーしたものだったんですよ。
例えば、Aさんという人の症例の再現ドラマを見せて、『この人は一体、何の病気でしょうか?』という問いを出し、若手の医師たちが『私は○○病だと思います!なぜなら…』みたいな形で推論をしていくんです。
そこに、ドクターGと呼ばれる現役医師が出てきて謎解きをしながら病名を絞り込んでいく……というような。ジェネラリストの専門性について良く分かる、良い番組でしたね(笑)
総合診療医となるには長い道のりが必要!
もう一つ質問良いですか?
その、総合診療医になるまでの平均的な時間はどれぐらいかかるんでしょう?
良い質問ですね!
国家試験としての医師の資格を取るのにまず6年以上はかかりますよね。その後に何らかの専門医資格を取るトレーニングをするのですが、総合診療医に関しては、内科や外科などのいわゆる”基本領域”と同列の資格として取れる……というものだったと理解しています。
いずれにしても+4~5年はさらに必要になって来るのだろうと思っています
その専門医資格を取得するまで、例えば内科を取るのに3年、外科で4年……だとすれば、単純に何年で、とは言えないという事ですよね
そうですね。あとは、専門医の制度の事で知っておかなければならないことがあって。よく“二階建て”と言われるんですが、外科系だとしたら、まずは外科としての専門医資格をトレーニングして取得する必要があります。
で、その後に消化器外科、呼吸器外科、など細分化された専門医資格を取るのが一般的。総合診療専門医に関しては、前述のように一階部分の専門医資格ではあるものの、恐らく内科の専門医を取っておくことは推奨されていたのではないか思います。
それにプラスして、総合診療の専門医資格を取るためのトレーニングをするというのが通常パターンという感じかなと
整形外科は大工さん? “科”の特徴をピックアップ
僕からも質問良いですか?
小児科専門医ってあるじゃないですか。前々から思っていたのですが、例えば大人は一旦、内科に行ってから整形外科に行く事もあったりしますよね。大人なら、それぞれの症状に合わせた専門科がありますが、小児科は小児科。小児科にも専門科があってしかるべきなのではないかなと。
それに、小児科医は子どもの診療のジェネラリストなのか、スペシャリストなのかっていうのも気になります
おぉ、ベリーグッドな質問ですね!
まず、答えとしては小児科としてのジェネラルな専門医がいます。これはマストであって、その中に、小児アレルギー専門医、小児血液専門医……のように二階建てのような形で専門医資格がある、そんな感じですね。
なので、ジェネラルな専門科医の資格だけを持っている医師、二階建ての部分の資格も持っている方もいらっしゃいます
あと、自分が十字靱帯を切った時に、最初は普通の病院に行って、その後は断裂しているのかどうなのかを整形外科で診てもらったんですが、これも同じことなのでしょうか?
整形外科というのがまた面白い領域です。まず、整形外科の学会があるので、整形外科の専門医資格があるかどうかという話があります。で、整形外科の世界は大工さんだと思ってください(笑)。
例えば、ある大工さんは膝、ある大工さんは肩を直す仕事が得意……のように、身体の部位によって何の専門なのかが細かく分かれている世界なんです。勿論、ジェネラリストとして整形外科全般も診られますが、さらに得意な部位があるんですよ(笑)
そうなると、新たな疑問が出てくるのですが……例えば、膝の痛みが実は腰や背中から来るような場合はどうなのかなと……
それも面白い観点ですね。さっき言ったように、整形外科の先生は大工さんなので、外科としての仕事は得意なんです。でも、痛みに関して、その痛みがどこから来るのかという診断が得意な先生は意外にいないと思います。腰痛などが典型的ですが、整形外科的な要因以外もかなりあり得るとなると、診断はやはり難しいですからね。
少し話が脱線しますが、痛みに関しては面白い学会や専門医があって。頭痛専門医、というのがあるんですよ。頭が痛い原因も、色々ありうるんですよね。
もしかしたら、脳神経内科的な疾患かもしれないし、外科的な要因があるかもしれないし、精神的なものかもしれない。症状単位で学会を作っているのは珍しいので、貴重なんです。
僕の友人で内科クリニックを開業している医師がいますが、実は頭痛専門医で、そういうクリニックだと頭痛で悩んでいる方にはお勧めしやすいですね
総合診療医や専門科医の役割を知って適切な医療を受けよう!
そういった症状で分けてある方が、“患者さん目線”じゃないですか?
そうなんです!
おっしゃる通り。鋭い視点ですね。患者さんは症状でしか認知しないですよね。何科に行くべきかは分からないけど、『頭が痛い』『お腹が痛いから何とかして欲しい』とか。
だから、症状単位で専門医がいてくれると患者さん側は選びやすいですよね
そこに居る医師は、ジェネラリストなんですよね?
それぞれに専門はあるんです。頭痛専門医の資格を持っていても、脳神経内科系や脳神経外科系、精神科系の医師もいるというように、出自は違っていたりはするんです。
でも、皆さん頭痛に関してはこうだ……っていう診断が出来て、対処ができる。これは、前半で話していたアレルギー専門医に似ていますね
時々ニュースにもなりますが、きちんと診断されず、病院をたらい回しにされるのって嫌ですよね
嫌ですよね!
そういう意味では総合診療医、身近にジェネラリストがいる病院で、ある程度まで診断をしてもらえば、専門的な治療までやってくれるわけではないけれど、『おそらくは○○という病気なので、○○病院の○○科で診療を受けてください』と言ってもらえるはず。
だから本当の意味で、かかりつけ医がいて機能していれば、たらい回しにならないはずなんですけどね。イギリスは、かかりつけ医の制度がありますから、最初は自分のかかりつけ医に診てもらわないとダメなんです。
そういう方法を取っている国もありますよね。それか、症状単位の専門医が揃っている方が、我々としても分かりやすいんですけどね
そういった観点で病院を選ぶというのがなかったので、これから母や他の人にも教えてあげたいです
そうですね。専門科医の視点で見るというのは、みなさんは殆ど知らないので、意識しておくと良いのではないかと思います。
医師の世界では当たり前の事なんですけどね
ありがとうございました。
今回は一般の方にも興味関心がある内容だと思いますので、ぜひ知っておいてもらいたいですね。
また、こういった内容で勉強会をして頂けると良いなと思います
そうですね!
では、今回はこの辺で。ありがとうございました。
清水さん・澤田さん「ありがとうございました!」
―― 総合診療医や専門医がどのようなものかを知っておくことで、思っていたような診察を受けられないことが減らせるかもしれません。今回も私たち一人一人の医療リテラシーを上げる必要性があることを感じられる勉強会になりました。今後も日常に役立つ勉強会のレポートもお届けしますので、楽しみにお待ちください。