私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。テーマは、前半に引き続き「Googleへの医師の集団提訴から考える、医療情報の口コミのあり方」。
鈴木氏運営のサイトはどのようなコミュニケーション設計をしているのか、そして、口コミと並んで検索される治療ブログを見るコツなどについても触れた勉強会となりました。
前編はこちら
【勉強会:前編】医療プラットフォームの口コミ対策を考える
2024.12.27
私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。テーマは、「Googleへの医師の集団提訴から考える、医療情報の口コミのあり方」。医療施設にも口 […]
勉強会の参加者
2018年中途入社
営業
佐塚さん
2013年新卒入社
エンジニア
平塚さん
2016年中途入社
プロデューサー
田原さん
2023年中途入社
プロデューサー
内海さん
2022年新卒入社
Webディレクター
澤田さん
2022年新卒入社
Webディレクター
土屋さん
2023年新卒入社
Webディレクター
マルダンさん
2023年新卒入社
Webディレクター
相馬さん
2023年新卒入社
Webディレクター
瀧さん
口コミ投稿の心理は患者さんへの情報共有
鈴木さん、後半もよろしくお願いします!
よろしくお願いします。
前半はネット上の医療情報の口コミについて、みなさんがプラットフォーマーならどう扱っていくかということや、僕が運用している病院/医師を探せる情報サイトの一つ、『イシュラン乳がん』を使って運用の裏側を解説していきました。
イシュランで入って来る口コミの7~8割はポジティブなものという事に触れましたが、ここをもう少し詳しくお話していきましょう
やっぱりみなさん、お礼を伝えたいのでしょうね。
あとは、他の方の参考にしてもらいたいとか、でしょうか
そうそう。まさにそれです。
『自分の情報が、他の患者さんの役に立つならぜひ!』という利他の気持ち……というと言い過ぎなのかもしれませんが、そういった感情を持ってらっしゃる方が多い印象です
プラットフォームの理念に共感してもらえているからこそ、そういったポジティブなトーンの口コミが集まるのかもしれないですね
それもそうかもしれません。公開に関する方針は感想を投稿する所に表示していますから。
とはいっても、『他の方が同じ目に遭って欲しくない!』という気持ちの上でネガティブな投稿をどうしても書きたい方もいらっしゃるので、そういった投稿が全く無いわけではないですけどね
すみません、前半で僕は口コミについて少しネガティブな意見を言いましたが、他の患者さんのために……という気持ちで書き込む方がいらっしゃるという視点が抜けていました。
そういった方からの口コミがあるからこそ参考になる情報があるのでしょうし、口コミをチェックする方の気持ちも理解できます
だからこそ、参考になる情報があるかどうか、と言うのがポイントになるのだと思います。これもカンパニー総会のときにお話したかもしれませんが、コミュニケーションが合う/合わないというのは大きい部分だと思っていて。
一方で、患者さんが先生の腕を正当に評価するのは難しいんじゃないかなと。何人もの先生に診察をしてもらうなんていうのは無いことですから。だけど、コミュニケーションの情報に関しては、自分に合いそうだな、とか、絶対に合わないだろうな……というのは判断できそうですよね
約8割がポジティブな口コミのサイト運用方針
そもそもイシュランでは、医師の腕の良し悪しを星の数で判断してはいません。
それと、前編で田原さんがサクラを使っている可能性を疑うことがあると仰っていましたが、そういったおかしな意図を持った人が投稿できないような構造にしています。
このサイトは、あくまで『コミュニケーションタイプ』に投稿するもので、『先生の良し悪し』に投稿するものではないということです。なので、設計の時点でターゲットにした医師を必要以上に持ち上げたり、下げたりするサイトにしていません。
投票する際には『この先生はどんな先生?』という見出しの下の説明を見ていただければ分かりますが、『学究型:数字を使ってきっちりした説明をする真面目なタイプ。 治療方針を論理的に理解・納得したい患者さんに向く』とか、『聴き役型:患者の話を良く聴き受け容れる優しいタイプ。 自分の話をしっかり受け止めてほしい患者さんに向く』という風にタイプ(型)が4つに分かれているので、それに合わせて投票できるようになっています。
こんな感じで運用設計してきましたが、ここまでで何か質問はありますか?
あの、選択肢にある先生の4タイプ(学究型・リーダー型・聴き役型・話し好き型)って、どのように決めたのですか?
これは僕がオリジナルで考案したものです。
会社員時代にコミュニケーションタイプ診断的なものをいくつかやりましたが、そういうものをイメージしながら作りました。色々なコミュニケーションの”型”がありますが、それがお医者さんだったらどうなるかな? というのを考えながら
そうなんですね。しかも、これなら先生のタイプへの投票なので、参加すること自体も楽しいと感じるような気がします。
もしかして、先生のタイプって『話し好き型』の先生が多かったりしませんか? お話するのが好きな先生も多そうなイメージなので……
実は、『聴き役型』が一番多いんです。自分の話をしっかり聞いてもらいたいという患者さんが多いので、ニーズに合っているんだと思いますね
『聴き役型』なんですね……! それはちょっと意外でした
先生も患者さんに合わせてコミュニケーションを取っている部分もあるんじゃないかというのが、僕の推測ですけれどね。
ちなみに、どんなタイプに投票が多いのかについては、一度まとめて乳癌学会でポスター発表したことがあるんです。先生によっては、『リーダー型』ばかりに投票が集まる方もいらっしゃったりして、人によってしっかり分かれるんですが、そういう意味でも上手く設計できたかなと思っています(笑)
僕も質問を良いですか? 日本では、病院や医者はサービス業として捉えられていますか?
おぉ、いい質問ですね! まずはここに参加されているみなさん、どう思いますか?
全員「……(首を傾げる)」
みなさん首を傾げていますね。みなさんの反応だと医者はサービス業だとは言い切れない、という感じでしょうか。そうですね、これが世の中全体の反応を表しているとは思います。
ちなみに僕は個人的にはサービス業だと思っています。もちろん、とてもプロフェッショナリティが必要なお仕事ですけれど、それは他の職業だって同じですよね。日本は特に国民皆保険制度があってどの病院に行っても良いし、患者さんに選ぶ権利がある。なので、サービス業と言って差し支えないかなと。
ちなみに、マルダンさんはどうしてこの質問をしたんですか?
サービス業だから、こういう風に口コミで評価をされるのではないかと思ったからです
口コミと並んで参考にされる「治療ブログ」。読む時の注意点は?
そうそう。とはいえ、悪い口コミを書かれた先生は『こんなに頑張っているのに』とか『何でこんな評価をされなければならないんだ!』と思ってしまいますよね。特に勤務医の先生はかなり過酷な労働条件で頑張って働いていらっしゃるので、イシュランの運営側としても、ポジティブな口コミで医師側のモチベーションがなるべく上がるような設計にしているという所もありますね。
今日は医療情報の口コミという話をここまでしてきましたが、がんの患者さんが良く参考にするものと言えば、治療の体験記やブログというのもあります。口コミのお話のついでに少し、この話にも触れておきましょう。
治療の体験記やブログなど、みなさんは見たり、参考にされていらっしゃいますか?
僕は自分というより親が病気になった時に参考にするために見ましたね。CML(慢性骨髄性白血病)になってしまった時でしたが。
あとはきっと、希少疾患とかの時じゃないと見ないかもしれません
重篤な疾患にならないと見ないというのはあるかもしれませんね。
今CML(慢性骨髄性白血病)という血液のがんのお話が出ましたが。そういった重大な疾患になった時にはネット上で検索行動をとる方が多くて、そうすると患者さんの書くブログや体験談などがヒットします
あとは、以前の職場にいた方で、お子さんが小児疾患になった時にいつ治るのかの情報がどこにもなくて調べていたというのは聞きました
その方は、もしかしたら難病や希少疾患などで、情報があまり無いので調べていたのかもしれませんね。ブログなどで情報を出す方は、患者さんの気持ちが理解できるからこそ後に続く患者さんのために書いておこうというマインドが働くのだと思います。
なので、情報が全くないよりある方がもちろん良いのですが、とはいえ治療ブログも問題を含んでいます。内海さんは、何に気を付けて読んでいましたか?
あまり変な情報はなかったのですが、怪しげな化学療法については無視するようにしていました
そうですね。その化学療法がどうかはわかりませんが、科学的に見て怪しい治療に向かってしまう方もいるので、そこは注意すべき点です。
あと注意すべき点が2点あるのですが、1つは最新の情報であるかという点。
薬や治療法について色々事細かに書かれていることが多いですが、それが今現在最新でベストの治療法(標準治療)なのか? という点です。内海さんからCML(慢性骨髄性白血病)のお話が出ましたが、特にがんについてはどんどん治療法が新しくなります。治療そのものもそうですし、副作用対策の吐き気止め、下痢止めとかもそうです。
少し脱線しますが、抗がん剤でありがちな副作用の脱毛についても予防できるようになってきたんですよ。頭を冷やすと良いらしいんですね。ちゃんと科学的な根拠があって、頭皮に薬剤があまり到達しないように冷やすと脱毛が予防出来るらしく、実用化され始めています。
話を戻しますが、もう1つは、治療の効果の出方に個人差があるという点。
だからこそ、自分に当てはまるかどうかは分からないということを認識して冷静さを保ちながら情報を見ないといけないんです。難しい所ではあるんですけどね。こういう事もみなさんを含め、多くの方に知っておいていただきたいですね。
本日はこんなところですが、何かみなさんからありますか?
そういえば、生成AIで口コミの返信を作るツールというのも出てきたようですね
なるほど。僕らも生成AIのさまざまな使い方は取り入れていますが、口コミに対してデジタルで対策する企業が出てきてもおかしくはないですね。
とはいえ、今日教えていただいた口コミに対する向き合い方やサイト設計の部分は最も基本的なところです。今回の内容を参考にしたいと感じたメンバーも多いのではないかなと思います。今後、何かプラットフォーム運用の案件が出て来た時にはぜひ、取り入れていきましょう!
それでは、そろそろ時間なのでまた時事ネタなども含め、色々な視点でディスカッションしていきながら我々に何ができるのかを考えていきたいなと思います。鈴木さん、本日もありがとうございました!
全員「ありがとうございました!」
――単なる口コミも内容や数によっては医師から提訴されるほどインパクトがあるものに変わり、プラットフォーム運営では注意して扱わなければならなくなってきました。
そんな中でも、口コミが有用な情報として患者さんの間で役立っている鈴木氏運営の「イシュラン」の方針は参考になる部分が多かったのではないでしょうか。
今後も勉強会レポートを通じて、医療・製薬業界のトレンドや専門的な知識をお伝えしていきます。
この記事の担当者
佐塚 亮/Satsuka Ryo
職種:sales
入社年:2020年
経歴:大手スポーツメーカにて店舗sales,エリアマネージメント業務を担当。のちWeb制作会社にてWebサイトの提案からディレクションをこなし、コンサルタントとしてサイト立ち上げ後の売上向上まで支援。その後2020年にメンバーズへ入社。主にクライアントからのヒアリング及び検証データを基に要件定義を行い、サイトの構築運用を実施。定常的に支援サポートを行う。クライアントはもちろんエンドユーザーの立場・視点に立ち、問題抽出から改善案の立案までを手がける