
医療現場では人材不足が慢性化しており、日々の業務が非常に多忙な状況です。そんな中、生成AIツールは作業効率化や業務負担の軽減に大きく貢献すると期待されています。
本記事では、医療に特化したAIツールを5つご紹介するとともに、導入時のコスト負担をサポートする「デジタル化・AI導入補助金」についても解説します。AIツールの具体的な活用事例や支援制度について知りたい方に役立つ内容になっています。ぜひ、ご覧ください。
AI活用はもはや“選択肢”ではなくなりつつある
医療現場での生成AI活用は着実に増えており、さまざまな事例が注目されていますが、ツール選定の複雑さや運用にかかる負担が読めず、未だに導入に踏み切れない医療機関も少なくありません。
しかし、実際の医療現場では「人材不足」「業務負荷の増加」「診療の質の維持」など課題が複雑化しており、AIはもはや使うべきかどうか迷うツールではなくなりつつあります。
そこで、今回は臨床での活用が進む医療特化型AIツールを紹介していきます。さらに、AI導入を加速させる補助金制度についても調査しましたので、AIツールと補助金を組み合わせ、効果を最大化するための戦略的な進め方を解説します。
注目の医療特化型AIツール5選!

医療に特化したAIツールを調査してみると、近年は特に、画像診断、問診、内視鏡、カルテ入力など、多角的なアプローチで医師の業務を支援するツールが次々と開発されています。
そして、2022年度の診療報酬改定では、AIなどを活用した画像診断支援ソフトウェアを個別に評価するための制度上の枠組みが整備されました。一定の要件を満たした場合に、個別ソフトウェア単位で診療報酬上の評価対象となる道筋が示されたことは、診断を支援する技術としてAIが医療現場と高い親和性を持つことを示す動きとも言えます。
しかし、これらのツールは、AIが医師の仕事を丸ごと代替するものではありません。機能を拡張する形で医師の能力を補完・強化し、ヒューマンエラーの最小化を目的としたツールが多い点も、医療AIに共通する特徴です。以下から日本国内で実績があるAIツールを5つご紹介します。
■1. EIRL(エイル)
医療AIスタートアップ企業、エルピクセル株式会社の「EIRL(エイル)」は、医療用画像解析ソフトウェアです。多様な医療画像を解析し、多忙な医師の診断をサポートするツールとして、現在は累計800以上の医療機関で導入、解析件数は640万件を超えており、その信頼性は医療現場において確立されています。
EIRLの導入メリットは、読影業務に伴う心理的・肉体的な負担を軽減できる点にあります。深層学習(Deep Learning)アルゴリズムを基盤とし、CT、MRI、X線画像から、医師が見落としがちな微細な病変候補を自動検出することができます。一人の医師が画像を読み、判断し続けるには体力の限界がありますが、EIRLならば疲れることなく一定の精度で画像をスクリーニングし、注意すべきポイントを医師に知らせる役割を担うことが可能です。
そして、EIRLの大きな特徴が制度面での実績です。2024年8月には、大腸内視鏡検査を支援する「EIRL Colon Polyp」が療報酬の加算対象となりました。これは、医療現場での実用性と有効性が一定程度認められたことを証明しているといえる実績です。また、EIRLのプロダクトは他にも、肺結節の疑いがある領域を自動検出し、医師の視認を補助する「EIRL Chest Nodule」や、嚢状動脈瘤に類似した領域を検出し、脳卒中予防に寄与「EIRL Brain Aneurysm」も展開しており、見落としを限りなくゼロに近づける、心強いサポート役zとして期待されています。
※参考:EIRL
※参考:エルピクセル株式会社「大腸内視鏡診断支援AI「EIRL Colon Polyp」が診療報酬の加算対象に」
■2. nodoca(ノドカ)
AIを用いた医療機器の開発・製造・販売を手掛けるアイリス株式会社の「nodoca(ノドカ)」は、咽頭画像をAIが解析し、インフルエンザの可能性を提示する診断支援AIです。AI医療機器として日本で初めて「新医療機器」の承認を取得しており、2022年12月の販売開始以降、2,000台以上が販売され、これまでに10万人以上の診断に活用されています。
nodocaの特徴は、専用カメラで撮影した咽頭画像と問診情報等をもとにAIが判定するため、患者に痛みが少ないインフルエンザ検査を提供できる点です。従来のインフルエンザ検査キットは、患者の鼻腔の奥に綿棒を挿入するため苦痛があり、さらに検査時の飛沫拡散といった医療従事者側のリスクも課題とされてきました。nodocaは、この課題に対し、専用カメラによる喉の撮影とAI解析だけで診断を補助できます。
この技術は、経験豊富な医師が診断の指標としてきた咽頭粘膜の特徴的な変化を的確に捉えるものです。50万枚以上の咽頭画像データを学習したnodocaは、従来、医師の経験に依存しがちだった「インフルエンザ濾胞(ろほう)」の判別を、客観的かつ再現性のある形で支援します。
現在は、機能が追加され、2025年10月に喉の写真を用いてコロナを判定するAI医療機器として、日本で初めて薬事承認を取得し、外来診療の負担軽減や診療品質の均質化に貢献しています。
※参考:nodoca
※参考:アイリス株式会社「アイリス株式会社、「nodoca®」を用いた感染症診断が保険適用。AI医療機器を用いる診断への新機能・新技術区分での適用は日本初。」
※参考:アイリス株式会社「日本初、のどの写真を用いてコロナを判定するAI医療機器が薬事承認を取得」
■3. ユビー(Ubie)AI問診
ヘルステック・スタートアップのUbie株式会社が開発する「ユビーAI問診」は、2017年より提供が始まり、導入医療機関数1,800以上のWeb問診システムです。
患者が来院前や待合室にいる間にスマートフォンやタブレットを用いて回答する仕組みですが、紙の問診票に「はい/いいえ」を書くだけではなく、この問診は患者の答えに合わせて質問が変わっていきます。例えば、「喉が痛い」と答えると、AIが関連する追加質問を自動で提示して、症状の経過や強さなども含めて自然に聞き出すことができます。来院前に症状を把握できれば、新型コロナウイルスなどの感染症リスクを事前に判別して患者動線を分けられ、院内感染対策の強化にもつながります。
ユビーAI問診は、約5万本の医学論文をもとに設計されており、患者が入力した「なんとなく息苦しい」「ズキズキする」といった日常的な言葉を医学用語に自動変換し、電子カルテにそのまま反映できる点も大きなメリットです。診察時間に聞ききれなかった情報まで事前に整理できるため、診察時間の短縮や医師の負担軽減に貢献します。
また、クリニック専用の機能ではあるものの、紹介状の自動生成機能も備えています。地域医療の連携を強化したいクリニックにとっても有用であり、地域医療を支えるツールとしても活用が広がっています。
※参考:ユビーAI問診
※参考:株式会社スズケン「医療機関向け問診サービス「ユビーAI問診」」
■4. gastroAI(ガストロエーアイ)
内視鏡の画像診断支援AIの開発を手掛ける株式会社AIメディカルサービスが提供する「gastroAI(ガストロエーアイ)」は、内視鏡検査中の映像をリアルタイムで解析し、がんや腺腫の疑いがある部位を医師に知らせてくれるAI支援システムです。医師がモニターに映る映像を見ながら、わずかな色の違いや粘膜の変化を頼りに病変を探していきますが、特に胃がんは早期病変を見出すのが困難なケースがあり、専門医でも一定の見逃しが起こり得るとされています。
gastroAIは、検査中の動画内で、がんや腺腫の可能性がある領域を検出すると、その場でアラートを表示し、人間の見逃しを補います。そのため、gastroAIは医師の代わりに診断を下すツールではなく、「もう一度よく見てください」と注意を促すサポーターのような存在となって医師を支えます。
具体的なメリットは、5~26%と言われる早期がんの見逃し率を低減させ、早期がんの発見率を向上させること、医師間のスキル格差を補完し、施設全体の診断レベルを向上させる検査品質の均てん化などに寄与しています。
AIメディカルサービスは、内視鏡AIのリーディングプレイヤーとして「世界の患者を救う~内視鏡AIでがん見逃しゼロへ~」というミッションのもと、国内外140以上の医療機関と共同研究を進め、臨床現場での期待を集めています。
※参考:株式会社AIメディカルサービス「製品について」
※参考:ガストロAI media「内視鏡AI(AI内視鏡)とは?がんの早期発見を支援する人工知能」
■5. エムスリーデジカル(m3 Digikar)
医療情報サイト「m3.com」を運営するエムスリーグループが提供するクラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」は、クラウド型の電子カルテです。AI自動学習機能を搭載した電子カルテとして、8年連続クラウド電子カルテシェアNo.1であり、5年連続総合電子カルテシェアNo.1(2025年1月m3.com調査)といった実績があります。
これほどのシェアを誇るエムスリーデジカルは、AIによる入力支援機能に強みがあります。
自動学習機能によるキーワード検索からのカルテ作成の学習、カルテや検査履歴などの自動学習で約80%入力時間を削減でき、さらに、患者さん向けアプリ「デジスマ診療」との連携で、予約~問診~キャッシュレス決済~次回予約をワンストップで行えます。コスト面では、初期費用が原則0円(プレミアムプランを除く)、5年間の総コストでは、従来型電子カルテと比べて約70%のコスト削減になるという試算も示されています。クラウド型のため、自宅や外出先からのカルテ閲覧・記載も可能、院内のPC台数制限なしといった、場所や端末に縛られない柔軟な運用ができる点もこのツールのメリットです。
政府が2030年までに電子カルテ普及率100%を目指している中、現在も多くの医療機関が導入に関する課題を抱えています。実績のあるツールで価格を抑えて導入したい医療機関は、さまざまなツールの機能とコストのバランスを比較してみると良いかもしれません。
※参考:エムスリーデジカル
※参考:エムスリーデジカル株式会社「エムスリーデジカルの評判・口コミを解説!導入メリットや料金も紹介」
AI導入を加速させる補助金制度
上記のAIツールからも分るように、医療現場でのAI活用の本格化が感じ取れます。しかし、クリニックなどはコスト負担が導入の壁になっているのではないでしょうか。
こういった医療機関は、経済産業省が管轄するAIに関する補助金制度「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」を活用することで、自己負担を軽減させながらDX推進を行えます。
医療機関がAIツール導入で活用する場合、利用されやすいのが「通常枠」です。補助の条件などをまとめましたので、参考にしてみてください。
■業務プロセスが1〜3つの場合
・補助額:5万円〜150万円未満
・補助率:原則1/2以内(一定条件を満たす事業者は最大2/3)
対象費用には、ソフトウェア購入費、最大2年分のクラウド利用料、導入支援費用などが含まれる。
■業務プロセスが4つ以上の場合
・補助額:150万円〜450万円以下
・補助率:原則1/2以内(一定条件を満たす事業者は最大2/3)
複数の診療業務や院内業務を横断的に改善する、比較的大規模なDX導入に適している。
■2026年度からの重要な変更点
今回の変更における特徴は、“過去に補助金を利用した事業者”に対する要件が強化された点です。2022年度〜2025年度の補助金を受けた事業者が再申請する場合、以下が必須となります。
・3年間の事業計画の策定
・導入効果の報告
・賃上げ計画の策定
特に賃上げについては、「1人当たり給与支給総額」を、日本銀行が掲げる物価安定目標に1.5%以上を上乗せした水準で引き上げる計画を示す必要があります。この計画を達成できなかった場合や、効果報告を提出しなかった場合には、補助金の返還を求められる可能性があるため注意が必要です。
2026年度の交付申請は、2026年3月下旬頃から開始される予定です。導入検討中のツールが「デジタル化・AI導入補助金」の対象として登録されているかなど事前の確認や準備も必要なので、それらと併せてご確認ください。
※参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金」
「AI×補助金」を成功に導く3つの鍵とは?

AIツールと補助金を組み合わせて効果を最大化するためには、単なる導入に留まらない、導入後の現場に合わせた戦略的な視点が必要です。
■1. 課題の優先順位を決め、ツールを選ぶ
課題に基づいた段階的なツール導入計画が重要です。まずは、自院にとって最も大きな課題は何であるか?を考えましょう。外来の待ち時間が長いなら「AI問診ツール」、診断の見逃しリスクを低減したいなら「画像診断AI」、事務作業の効率化なら「AI搭載型電子カルテ」のようなイメージです。そのうえで課題の優先順位を決め、ツールを選びます。
■2. 補助金申請は「早めの準備」を!
デジタル化・AI導入補助金を活用するためには、事前準備が欠かせません。
申請に先立って「GビズIDプライム」のアカウント作成が必須ですが、作成までに数週間かかるケースもあります。公募が始まってから慌てて準備するのではなく、平時からID取得や体制整備を進めておくことが、結果的に採択率を高めるポイントです。
■3. スタッフとAIの役割を共有する
新たなAIツールの導入は、医師だけでなく、看護師や事務スタッフの業務フローにも影響を与えます。
導入時には、「なぜこのAIを導入するのか」や「誰の負担がどう減るのか」をきちんと共有しないと、「仕事が増えた」「よく分からないシステム」という印象を持たれてしまうことも少なくありません。簡単な研修や説明の場を設けるだけでも定着度は大きく変わるので、導入に併せて教育機会を提供することが重要です。
“業界特化型人材”がAI活用を伴走支援します!
医療特化型AIツールは、すでに実用フェーズに入っています。
これから医療現場で効率化に差をつけるには、「どのツールを、どの順番で、どの体制・予算で導入するか」という戦略が重要です。ご紹介した補助金制度を活用すれば、AI導入を“コスト”ではなく“将来への投資”として進めることができます。今回取り上げたツールを参考に、自院の課題に合ったAI導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、生成AIの導入や活用に興味はあるものの、技術を効果的に活用できる人材が確保できず、導入後の従業員への教育・定着に不安がある医療機関のご担当者さまもいらっしゃるかもしれません。MMは医療・製薬・ヘルスケア業界に特化した人材が、生成AIの導入・運用支援を行っております。医療現場での生成AI活用に興味をお持ちの方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
この記事の担当者

鈴木 まりあ / Suzuki Maria
職種: Webディレクター
入社年:2024年
経歴:2024年新卒入社後、コーダーとしてWebサイトの運用・リニューアル業務に従事。現在はWebディレクターとしてWebサイトの運用案件を担当。
