
私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。今回のテーマは、前半に引き続き「社会保障改革と医療の質・アクセスの不都合な関係」です。後半は、日本の医療の現状の解説とともに、今後起きるであろう医療アクセスの変化などについてディスカッションを深めました。ぜひ、ご覧ください。
勉強会の参加者

2018年中途入社
営業
佐塚さん

2023年中途入社
プロデューサー
内海さん

2018年新卒入社
エンジニア
浅川さん

2017年中途入社
Webディレクター
平嶌さん

2024年新卒入社
Webディレクター
鈴木さん
診療報酬改定は30年ぶりの大幅引き上げ、3.09%増へ!
それでは、後半もよろしくお願いします。
出席者は、佐塚さん、内海さん、浅川さん、平嶌さん、私です。
よろしくお願いします。今回のテーマは『社会保障改革と医療の質・アクセスの不都合な関係』として、前半では、海外の医療に関するコスト・質・アクセスの状況や、米国のトランプ大統領が薬価政策として最恵国待遇(MFN)価格の設定を製薬企業に求めた話などに触れました。
後半は、その続き、日本国内の状況についての話をしていきましょう。
全員「よろしくお願いします!」
前半の最後でも少し触れましたが、日本の医療はコスト・質・アクセス、比較的どれも頑張ってきましたが、限界に達し始めています。特にコストは需要側となる、団塊の世代が後期高齢者になりましたので、医療全体のニーズが増えています。なので、単価は安いけれど、全体のコストは増えてきています。
そして、今何が起きようとしているかというと、社会保障改革ですね。このコストが膨らみ続けるのはもう耐えられない、みなさんも、お給料から社会保険料をたくさん引かれていますよね。あの比率がだんだん上がってきていて、これ以上引かれるのは困るというレベルになっている。そうすると、社会保障にかけられる費用というのはある程度限界があるので、社会保障費のかなりを占めている医療費をどう倹約するかという話が必ず出てくるわけです。
で、医療費をなるべく増やさないようにする方法について、前半で医薬品の単価は国が決めていますという話をしたと思いますが、薬価ともう1つ、診療報酬の話が結構大きいんです。毎年、診療報酬改定という制度があるのですが、診療報酬はこれまでずっと抑えられていました。上がっても、0.××%みたいな感じですね。
では、みなさんは、今回の診療報酬改定で出た数値を覚えている方はいますか?
3.09%ですね。
そうです! だから、今年は診療報酬がある程度ちゃんと上がったな、というイメージです。最近はずっとインフレだったわけじゃないですか。その中で診療報酬がずっと上がって来なかった。当然ですが、診療報酬イコール、病院の収入の単価になるわけです。これが上がらない中で、物価が上がっていくと人件費だけでなく、色んなメンテナンスや購入物品の費用も上がる。なので、病院の経営がどんどん苦しくなっていた訳です。
そこで、これ以上、病院がバタバタと潰れてしまったら困るというのが、今回の診療報酬改定での大きな話でした。それ以外でも、高市総理も緊急的な手当てをして行かなくてはいけないという話をされていましたけど。いずれにしても、そこは現場と国の綱引きのうえ、そう決まったという話です。ただ、医療費もまださらに削らなくてはいけないという話があって。高額医療費制度の限度額の引き上げの問題は、以前の勉強会でも取り上げましたけど(※)、あの話がまた出てきて、昨年の案よりは抑えられてはいますが、結局、また上げていくという方向性で議論がされ始めている。決着はこれからですけどね。
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高額療養費制度より手を付けるべきは無駄な湿布の処方

あと、もう1つ。OTC(over the counter)医薬品は、ドラッグストアで処方箋なしで買える薬ですが、同じ成分で医療用医薬品として処方されているお薬ってたくさんあるんですよね。解熱鎮痛剤、水虫の薬、花粉症の薬とか。元々は医療用医薬品だったものが薬局で買えるようになる薬は、毎年ちょっとずつ出てきますが、いざ出ると広告宣伝がバンバンされるので、皆さんもイメージしやすいものが多いかと思います。有名なものは湿布薬ですね。
で、ドラッグストアで買う時は保険は効きませんが、医療用医薬品として処方される時は保険が効くわけですよ。元々の単価は医療用医薬品とOTCとではちょっと違うので、完全な比較はできないんですけど、例えば、後期高齢者の方なら湿布を処方されたら医療費負担は1割ですよね。ある意味バーゲンセールなので、患者も欲しがるし医師も気軽に処方しがち。そうやって処方された湿布薬を使わずに、家に積み上げているような状況も生まれてくるとなると、それは無駄遣いじゃないか……と。こういうことが問題視されています。
で、これを何とかするためにはどうすれば良いかというと、薬局で買えるような薬を処方する時は保険適応をしない、ということにしたらいいんじゃないかと。これについては、日本維新の会が医療制度の抜本改革として提言書を出していましたが、僕自身も高額療養費制度に手を付けるより、こちらの方が先だなと思いますけどね。でも、いきなり保険が効かない、という話にすると大変なんです。なぜ大変かというと、混合診療ということになってしまうんですね。これは、保険診療と自由診療を一緒にできないという話で、自由診療をしてしまうと他の保険を効かせることができないというルールがあります。すると、OTCと同じ成分の薬を処方すると自由診療になってしまうので、風邪で受診した人の診察費とか他の薬にも保険を効かせることができなくなる。医師会でも、そんなことをすれば受診抑制になってしまうという心配もしていて。
で、結局、OTCと同じ成分の薬を処方する時には、患者さんが少し……25%だったかな? 上乗せ負担をするという形になったんです(※)
確か、1/4、25%だった気がします。
(※)参考:厚生労働省「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方について」
ありがとうございます。そう、25%上乗せ負担をするという案で基本的にはまとまったという話があります。なので、先ほどの日本のコスト・質・アクセスで、コストはなんとかこうして抑えようとしている動きがあります。
だとしても、病院で湿布を貰った方がまだ安いんですね。
そう。だから、中途半端な妥協案で終わったなぁというイメージですよね。とは言え、患者さんの負担は少し増えるけれど、国は少しコストを節約できる、と。
我われの世代からすると、病院の湿布に関しては、薬局に行く労力と病院に行く労力を比べると……どうなんでしょう?
高齢者の方にすれば、病院は常に通う場所なので、ついで買いの感覚なのでしょう。
日本は医療アクセスが良い半面、医師の数は少ない!
それから、アクセスの話をしておきたいのですが、日本は医療のアクセスがメチャクチャいいというのは、医療機関の数が多いから、ということがあるんですよね。OECD(経済協力開発機構)の調査で見ると、特に病院の病床(ベッド)数、国民一人当たりのベッド数が世界的に見ても、ものすごく多いんです。お医者さんの数はそうでもないんですけど、病院の数は多い。
どういうことかっていうと、大病院じゃなくても中小病院が色々な所にあって、医師がそこに散在するわけですよ。なので、住んでいる側からするとアクセスはすごく良い。ただ、その体制を確保し続けるのが非常に厳しい、という現実があります。みなさんもちょっと考えればわかると思いますが、救急医療とか、産科の医療というのはかなり立ち行かなくなっているという話は結構前から出ていますよね。お医者さんの数がそれほど多くないのに、たくさん医療機関があって、それぞれの病院がそれなりの機能を持とうとした場合、例えば、この病院に産科の先生が1人、あの病院に産科の先生が1人、あちらの病院に産科の先生が1人と、ポツポツ先生がいて……ということになったら、その1人の先生が倒れたら途端に立ち行かなくなるわけじゃないですか。それに、チーム医療をするなら1人ではカバーできない。なので、救急とか、産科とかでもそうですが、地域で3つ4つ別れていた医療機関を1つに集約すれば、3~4人のチームとして回せる。そうやって集約させていこうというのは、実はだいぶ前から厚生労働省などがその必要性に気付いていたんです。
医療機関の集約に、たちはだかる課題も

でも、これは政治家やそのバックにいる住民たちが反対するんですね。『おらが町の病院が潰れるのは困る』ということです。そういう声が上がり、医療機関のアクセスを重視する勢力がある程度いたので集約されなかったんです。
でも、その場所の医療の質を担保するには、もう集約をせざるを得なくなってきています。まずまずの待ったなしの状況ですね。特に外科系の先生は、なり手がすごく少なくなってきているので、これからますますそういう話が出てくるかなと。救急も撤退する医療機関というのも結構出てきているんですけど、救急とか産科と同じロジックで外科系の診療科もかなり集約化されていくと予測します。
すなわち、患者側からするとアクセスは少し悪くなっていく。自分の町の近くの病院ではなく、隣町や、さらに隣の町まで行かなくてはならなくなってくる。そういう状況が今後は出てくる可能性があるな、というのが今の日本の医療の状況という感じですね。
今日は結構難しい話をしてきたかなと思いますが、みなさんから何かありますか?
日本はこれから衰退していく雰囲気がありますが、現状を維持するためにやれることとして、アクセスとコストは下げられるけれど、質は下がりにくいのかな?
というのを感じます。
これは良いポイントですね。質は下がりにくいし、下げてはいけないですよね。これは妥協できない所なので。で、コストも上げるのが難しいとなると、アクセスはある程度は妥協しなくてはならないかなという話ですね。
一方で、AIが進歩することで実はコストは下げられるんじゃないかという期待がないわけではないと思うんです。つまり、質を犠牲にせずにコストを下げる。そのツールとしてAIはあるかなと思います。
娘を産んだ産院は閉院になりました。そうなるくらいなら、遠くても産院があってくれた方が嬉しいです。
そうですね。産まれる子供の数が減る以上に、産婦人科医の担い手自体が減っていますからね。閉院ということにもなっているんでしょうね。
質を担保するために、病院の集約をしていかなくては……というお話でしたが、病院がある場所が限られてくると、オンライン診療の需要が高まってくるかなと思ったのですが、産科や外科だとオンライン診療は難しいのかなと。
どうしていくんだろう? と。
良い質問ですね! 内科系はいけそうですが、産科や外科系はオンラインでやっていくのは難しそうですよね。産科の場合は、本当に出産する時は病院に行かなくてはなりませんが、途中の外来での経過観察のタイミングに関しては、例えば、自宅でエコーをお腹にあてて画像が出るような技術ができたら、遠隔診療も可能かと思います。
でも、外科は難しいですね(笑)。ただ、日本の外科の先生も手術しているばかりではなく雑用も多いですし、がんの世界で言えば、抗がん剤の治療は外科の先生が担ったりするケースも結構あります。例えば、外科は患者さんに手術の説明をしたり同意を取ったりとか必ずありますが、その辺りはAIを使ったりしながら効率よくできる可能性もあるのかなと。
そうなのですね。ありがとうございます。
では、今日はこんなところで終わりにしましょうか。みなさんお疲れさまでした!
全員「ありがとうございました!」
―― 今回は、「社会保障改革と医療の質・アクセスの不都合な関係」の勉強会レポートをお届けしました。日本の医療制度も、各国の医療のコスト・質・アクセスと比較していくことで、日本の医療環境の恵まれている点とともに、少子高齢化社会ならではの課題が現実となっていることも感じられたのではないでしょうか。今後も勉強会の模様をお届けしつつ、医療・製薬などに関する知識を共有していきますので、ぜひご期待ください。
この記事の担当者

佐塚 亮/Satsuka Ryo
職種:sales
入社年:2020年
経歴:大手スポーツメーカにて店舗sales,エリアマネージメント業務を担当。のちWEB制作会社にてWEBサイトの提案からディレクションをこなし、コンサルタントとしてサイト立ち上げ後の売上向上まで支援。その後2020年にメンバーズへ入社。主にクライアントからのヒアリング及び検証データを基に要件定義を行い、サイトの構築運用を実施。定常的に支援サポートを行う。クライアントはもちろんエンドユーザーの立場・視点に立ち、問題抽出から改善案の立案までを手がける
