私たちメンバーズメディカルマーケティングカンパニー(以下、MM)による「生成AI」の業務改善の事例を紹介します。自社へ生成AIを導入し、活用を検討している製薬業界の方は、業務改善の参考になるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。
ウェビナー支援プロジェクトによる生成AI活用事例
「生成AIを活用して業務を効率化したい……」と考えてはいるけれど、漠然としたイメージから先に進まない方も多いのではないでしょうか。そんな時は具体的な事例を知ることで導入シーンが思い浮かびやすくなるかもしれません。
【プロジェクト】
ある製薬企業さまのウェビナー支援
【背景】
コロナ禍以降、オンラインセミナー(ウェビナー)は、新たなコミュニケーションのカタチとして医療・製薬業界にも定着していきました。医薬品の情報提供や医療従事者とのコミュニケーション手段として現在も多くの製薬企業さまが活用されているのではないかと思います。
実際、ウェビナーは低コストで開催が可能であり、気軽に参加してもらえるというメリットもある一方、開催数が増える中で課題が発生し始めていました。
【課題】
・毎月約70本のウェビナー開催により、配信設定のタスクが多くなり、作業時間が増加。
・配信設定の変更時、Excelのマクロを作成できる人材の不足(当時1名)。
【改善策・効果】
・生成AIを活用し、Excelマクロを担当者レベルで作成できるようにした。
・マクロ作成の工数が55分から27分に減少。約50%の工数削減につながった。
導入の背景やプロンプト例をご紹介
さらに詳しい背景などを含めて説明していきます。
こちらのウェビナー開催に携わる業務全般を担当していたチームでは、視聴者数の増加に伴い開催告知メールを作成する工数が増えていました。
具体的には、メール配信の設定に関して以下の課題を抱えていました。
■配信エリアの選択に時間がかかる。エリア選択のミス。
■配信対象ではない関係者のアドレスを検索して削除しなければならない。
■予約者に送信しないよう、配信リストから既予約者を削除しなければならない。
■Excelマクロを作成できる人材がチーム内に1人しかいないため、作業が属人化している。
これらの課題に対し、ChatGPTを活用してVBA(ExcelやWordなどのMicrosoft Office製品を自動化するためのプログラミング言語)でマクロを生成するというアプローチで解決に挑みました。
ChatGPTは、質問に対して回答を返すだけではなく、コードの生成からアイデアの発想までできるツールです。プロンプトにマクロ生成をするための指示をすれば指示内容に対応したコードを生成して返してくるため、作業者がコーディングをする手間が省けます。
例えば、条件に一致する行を削除したい場合は、このようなプロンプトを実行します。
【プロンプト例】関係者を削除するマクロ
———————–
VBAでマクロを作成したいです。以下の行動をするマクロを作成して下さい。
1.D列(所属情報)に以下の文字列を含むデータ行を削除する。
OOO企業名OOO
OOO企業名OOO
2.B列(メールアドレス行)に以下の文字列を含むデータ行を削除する。
OOO企業メールアドレスドメインOOO
OOO企業メールアドレスドメインOOO
———————–
プロンプトを実行すると、マクロのコードが返ってきます。(※コードの一部のみ表示)
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Sub DeleteRows()
Dim lastRow As Long
Dim i As Long
‘ 最終行を取得
lastRow = Cells(Rows.Count, “D”).End(xlUp).Row
‘ D列の条件に基づいて行を削除
For i = lastRow To 2 Step -1
If InStr(1, Cells(i, “D”).Value, “OOO企業名OOO”) > 0 Then
Rows(i).Delete
End If
Next i
・
・
・
・
————————
作業者は、Excel上で「何をしたいか」をプロンプトで指示するだけなので操作は簡単です。これによって手作業によるコーディングミスの心配もなくマクロが実行できるようになります。
同様に、フィルターをかけて手動で重複を削除するという作業もマクロで実行できるため、手動でフィルタリングをする際に発生する待ち時間を短縮させることにも成功しています。
そもそもこの作業を生成AIで実現しようとした理由は、マクロ作成が1人の作業者に依存しており、属人化していたためです。さらに、マクロの更新が頻繁に発生し、短時間でマクロを作成できる人材が必要だったにもかかわらず、その作業者が他の案件にアサインされたため、マクロを作成する人材が不在になってしまったのです。
この状況を改善させるためにChatGPTを使った施策がスタートしました。その結果、ChatGPTにマクロ作成を任せることで作業者全員が短時間でマクロを作成することが可能になりました。ExcelでのVBA編集方法のレクチャーからコードの内容まですべてChatGPTに任せることで、レクチャーに関するリソースを省き、作業全体の効率化が実現できました。
「形式値の再現性の高さ」が効果・活用のポイント!
課題に対応する施策を実行して運用を続けた結果、以下のような効果がありました。
■マクロの使用で工数を大幅削減。作業時間が55分から27分に減少。50%の工数削減を実現。
■営業日毎に配信設定を行うため、1ヶ月で換算すると削減した時間は27分×20日=約9時間。
■生成AIにマクロ作成を任せることで属人化から脱却。全員が短時間でマクロ作成が可能。
Excelマクロを作成する作業をChatGPTに置き換えて工数削減に繋げたように、生成AIは『形式値の再現性が非常に高い』というところに本質的な価値があるツールです。
この特長は、活用する際に覚えておいていただきたいポイントです。 手作業でマクロを記述するとコーディングミスも発生しますが、生成AIは同じ結果を繰り返し得ることが得意なため、生成AIがコーディングを行うことでそれを防ぐことができます。今回の事例も生成AIにマクロを実行してもらうことで工数削減を実現しています。
その他にも、生成AIはアイデア出しをする時の壁打ちツールや文章などのセルフチェックツールとして使うこともできます。使っていく内に生成AIができること、できないことに関しての感覚が掴めるようになると思いますので、無料で使えるAIツールなどを動かしてみるのも良いでしょう。「(業務の)この部分をAIに置き換えられないだろうか?」というイメージやアイデアが湧きやすくなります。
製薬業界への生成AIの導入・運用支援は私たちにお任せください!
今回は、製薬業界への生成AI活用の成功事例を紹介しました。
誰かにその作業を依頼することによって発生する「伝達コスト」や依頼された人にかかる「稼働コスト」は積み重なっていく内に大きくなり、組織のリソースを圧迫している場合があります。そして、これらのリソース改善に生成AIを活用するという方法があることもご理解いただけたのではないでしょうか。
これからデジタル活用が企業の成長を大きく左右していく製薬業界では、生成AIを取り入れた業務スタイルがスタンダードになることが考えられます。
また、生成AIはツールの進化も速いため、変化に柔軟に対応できる組織やチームであることも必要になってきます。実際にやるべきことが判明していても、それに対応する人材を確保するところからのスタートになると、実業務に着手するまでに時間が掛かることも懸念されます。
メンバーズメディカルマーケティングカンパニーでは製薬業界に特化した生成AIの導入・運用支援を行っておりますので、スピーディーに生成AIの活用を進めたい企業さまはお気軽にお問い合わせください。
この記事の担当者
菰田 なつみ/Komoda Natsumi
職種:ディレクター
入社年:2023年
経歴:2023年新卒入社後、大手外資系製薬会社さまの運用案件にアサイン。案件業務のほか、広報としてのブログの更新や社内サイトの改修プロジェクトを担当中。
※左のプロフィール写真も生成AIを用いて作成!