
医療業界における生成AIの活用事例を紹介していきます。
多くの課題を抱えている医療業界において、すでに様々な生成AIテクノロジーが導入され始めています。生成AIは医療の現場でどのように役立っているのか、導入のメリット、注意点を具体的に解説していきます。今回はMMによるご支援の事例も含めてご紹介しますので、参考にしてみてください。
揺らぎ始めた日本の医療環境を支える生成AI!
日々のニュースからも感じ取れるように、日本の医療制度が揺らぎ始めています。
直近では高額療養費制度の負担上限額の引き上げに関する話題など、医療制度を今まで通りに維持する難しさを感じている方は多いのではないでしょうか。
2024年は医療現場の労働環境の問題も表に出始め、医師の働き方改革が始まり、医療の安全性や質を維持するための取組みが本格的に開始しました。しかしながらすぐに労働環境が改善されるわけではなく、現在も医療従事者不足であることは変わりません。
そのため医療の課題や問題を解決に導くにはAIのようなテクノロジーの積極活用が必須です。
以前の記事では、製薬業界の生成AI活用事例(※)をご紹介しましたが、今回は日本の医療環境を支えるテクノロジーとして、医療業界の生成AI活用事例を紹介していきます。
最初に注目ニュースをいくつかピックアップしてみましたので、近年の生成AI活用の方向性やどのような場面で導入できるか等の参考にしてみてはいかがでしょうか。
※製薬業界の事例紹介の記事はコチラ!

生成AIは製薬企業の業務に好相性!導入メリットや活用例を紹介
2025.04.02
製薬業界における生成AIの活用事例を紹介していきます。業界ならではの活用方法や使うことによるメリットを具体的に解説していきます。今回はMMによるご支援の事例も含めてご紹介しますので、参考にしてみてください。 目次 新薬開 […]
【医療における生成AI活用事例】
株式会社AIメディカルサービス:画像診断による胃がん早期発見
内視鏡の画像診断支援AIの開発を行う、株式会社AIメディカルサービスが「2024年日経優秀製品・サービス賞 スタートアップ部門賞」として特に優れた新製品・新サービスと評価され、受賞しています。
こちらは画像診断にAI技術を用いて医師とAIがともに内視鏡検査を行うことで早期胃がんの見逃しや医師の負担を減らすというものです。
参考:株式会社AIメディカルサービス「AI医療機器「内視鏡画像診断支援ソフトウェア gastroAI-model G」が、「2024年日経優秀製品・サービス賞 スタートアップ部門賞」を受賞しました」
東京大学医学部附属病院:映像データによる糖尿病や高血圧の検出
東京大学医学部附属病院では、顔などの映像データからAIが血管のダメージなどを推定し、糖尿病の兆候や高血圧の有無を検出するシステムを開発中とのこと。
30秒の動画で糖尿病を約75%、高血圧を約90%の精度で的中させたという臨床研究の結果が出ているようです。
参考:読売新聞オンライン「糖尿病や高血圧、30秒の動画撮影だけで高精度判定…「これからの医療にはAIが不可欠に」」
学校法人 関西医科大学:医療面接ロボット開発
関西医科大学と、サービスロボットの開発・製造・販売を行う株式会社テムザックは医療面接をトレーニングするための「医療面接ロボット」(Prototype)を共同開発しました。
こちらのロボットは面接のトレーニングに実践的に使うことができる生成 AI を搭載したヒューマノイドであり、医療面接の技法やコミュニケーションスキルの向上を目指すものです。
参考:関西医科大学「関西医科大学とテムザックが共同開発!「医療面接」のトレーニングに実践的に使える対話型ロボット」
日本電気株式会社:地域医療・DX推進
日本電気株式会社(NEC)は、2025年2月から「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」の提供開始を発表しました。
これは、病院経営の最適化や持続可能な地域医療の実現に向けた医療機関及び、関係機関におけるDX推進を目指して地域医療における生成AI早期実装を支援する取り組みとのこと。
参考:日本電気株式会社「NEC、医療DX推進を目指し、「ヘルスケア生成AI活用プラットフォーム」を提供開始」
Ubie株式会社:生成AI活用ガイドライン改訂
こちらは生成AIの技術ではなく、ガイドラインに関するニュースです。
Ubie株式会社がワーキングリーダー企業として参加する日本デジタルヘルス・アライアンス(JaDHA)が、「ヘルスケア事業者のための生成AI活用ガイド」を改訂し第2.0版を策定したというものです。
参考:日本デジタルヘルス・アライアンス「【プレスリリース】ヘルスケア領域に特化した生成AI活用のガイドラインを改訂」
【MMのご支援事例】
私たちメンバーズメディカルマーケティングカンパニーによる医療機関のご支援事例をご紹介します。
業界特化型カンパニーとして生成AIの導入・運用支援を行っていますが、こちらは医療DXとして医療機関へのデジタル支援を行った事例です。
<課題>
医療の質向上のために電子カルテの導入を行ったものの、それ以外のDX化が進んでいないという状況にありました。
また、申請業務に関してアプリ開発プラットフォームを導入するも運用が整理されておらず、業務が非効率となっていることや患者さんの利便性向上やセキュリティ強化が追い付かないという課題を抱えていました。
<支援内容>
弊社の対応として最初に医療機関全体のフローに関して可視化を行い、改善が必要な個所の洗い出しを行ったうえで運用フローが適切なものであるかを判断し、デジタルを活用した最適なフローを確立しました。
業務フローの可視化と設計をし、以下についてご支援をしました。
・進行計画立案・要件整理
・WBS/課題管理表の作成・管理
・ワークフローの整理と追加案の提出
・承認ライン一覧の作成
・医療機関業務フローの整備
・成果物品質確認
医療に導入される生成AIは、画像や映像で疾患の早期発見や予防に繋げるもの、経営の最適化や人材不足をフォローアップするもの、適切な医療に繋げるものなど多岐にわたります。
また、Ubie株式会社のトピックは生成AIの開発に関するニュースではありませんが、新しい技術や手法に対応し、安全性を担保するためにも技術を提供する側としては欠かせない重要な視点です。
生成AIとDXが連動することで発生するメリットや注意点は?

医療業界の生成AIテクノロジーはさまざまな現場に導入され、この数年で大きく躍進した医療や製薬業界のデジタル化やDX推進にも良い影響を与えています。
では、医療DXと生成AIが連動することによるメリットはどのようなものなのか。そして、その一方でどのような点に注意するべきかについても併せて解説します。
【メリット】
■業務プロセスのデジタル化・自動化
手作業や紙ベースの業務が多い医療現場をデジタル化し、生成AIを導入することで患者の情報入力や診療記録の作成、診断支援のプロセスを自動化できます。
これによって時間やコストを削減し、医師や看護師が本来の診療業務に集中できるようになり、医療リソースをより効率的に活用できます。
■データ駆動型意思決定の強化
DX推進によって患者さんのデータのデジタル化が進みました。さらに、そのデータをAIがリアルタイム分析することで迅速な意思決定をサポートできるようになっています。
また、疾患に関する大量のデータや過去の症例を分析することによって今まで発見することのできなかった見落とされがちな傾向や気づきにくい共通点を抽出することが可能になり、疾患の早期発見や予防に役立てることができます。
■患者体験の向上
医療機関のオンライン予約や医療相談などはすでに一般化しつつあり、患者さんの利便性が向上している場面も増えています。
例えば、予約システムを通して事前に通院の予約をすることは混雑の解消につながり、医師もゆとりを持って診察にあたることができます。また、オンライン相談でAIチャットボットなどを通じて軽い症状のアドバイスを受けられれば、遠隔地や過疎地の患者さんに対して迅速かつ正確な治療が提供でき、深刻な症状ならば適切な医療へ繋げていく足掛かりにもなります。
■経営の最適化
経営改善もデジタルとAIを組み合わせることでコントロールしやすくなります。
医療機関がデジタルデータを活用し、収益管理や診療報酬の最適化を図ったうえで生成AIが診療内容を分析、無駄なコストを削減する提案や効率的な資源配分の支援を行うことができます。例えば、生成AIに患者の来院予測や必要なリソースを予測させたデータを基に医療機関はあらかじめリソース(医師、看護師、診察室など)を最適に配置することができます。
■クオリティ・コンプライアンスの向上
人手不足になると医療ミスのリスクが高まるため、AIを導入して医療従事者が診療時に起こしやすいエラーやリスクを検出・警告し、事前に対処させて医療過誤を減少させることも可能です。
生成AIは、最新の医療ガイドラインや治療法をリアルタイムで学習できるため、それを基に診断や治療提案を行い、医療ミスを減らして患者に対して安全かつ質の高い医療を提供できます。
【注意点】
■データセキュリティとプライバシー保護
データを扱う医療従事者とともに、患者さんも気にしているのがセキュリティやプライバシーです。
情報を保護するために、医療機関が生成AIを導入する際にはデータ漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるための強固なセキュリティ対策が必要です。個人情報保護法に準拠し、適切な暗号化、アクセス管理などを行う必要があります。患者さんには、個人情報をどのように集め、保管、利用するのかを明確に説明し、患者さん自身がその情報の確認や管理をできるようにすることが大切です。
■AIの判断に対する過信
医療の現場において最も気を付けなければならない点です。
AIはデータに基づいたアウトプットをしますが、そもそも誤ったデータや不完全なデータを基に診断が行われると、誤診や不適切な治療法が提案される可能性があります。AIの提案に対して過信せず、医療従事者は自身の経験や判断を補完するツールとして活用することが重要です。また、AIはすべての病状や症例に適応できるわけではないため、数が少なかったり、複雑な症例に対しての最終的な決定は医師が行う必要があります。
■医療従事者の教育とスキルアップ
AI技術に対して抵抗感を持つ医療従事者もいるため、ツールに合わせて医療従事者の教育とスキルアップは欠かせません。AIを正しく使いこなせる医療スタッフを育成し、ツールのアップデートにも対応できるよう、導入後のサポート体制を整えることが求められます。
新しいテクノロジーを使うことでさまざまなメリットがある一方、医療の現場では特に注意を払わなければならないことも発生します。全ての作業をAIに任せておけるわけではないため、これらの注意点も含めて運用するコストやリソースのバランスも考えて現場に取り入れていく必要があることを認識しておきましょう。
生成AI活用による医療の本質的な課題解決を目指して

医療関連の生成AI活用事例やMMの医療DX事例をご紹介しました。
ご覧いただいた他にも数多くの生成AIを活用した新しい治療法の発見や研究を加速させるテクノロジーの開発事例があり、医療の課題解決に貢献し、医療従事者や患者さんを日々支えています。
私たちも「日本の医療費問題を解決し、人々が健康で心豊かに暮らす社会を創る」カンパニーとして、生成AIが医療機関でどのように活用されていくか今後も注視していきます。
メンバーズメディカルマーケティングカンパニーは業界特化型カンパニーとして、医療・製薬・ヘルスケア業界に特化した生成AIの導入・運用支援を随時行っております。自社業務に生成AIの活用を進めたい企業さまはお気軽にお問い合わせください。
この記事の担当者

加藤 美羽 / Kato Miu
職種: Webディレクター
入社年:2023年
経歴:2023年新卒入社後、Webinar運用案件→ イベント事務局運用案件に従事。