製薬会社で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)事例まとめ(2021年10月~11月)

DX事例まとめ

2021.12.14

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は2021年10月~11月の製薬会社の動きをまとめています。

コロナ禍の中で多くの製薬企業がデジタル化に舵を切りましたが、医療や介護という、国民にとって身近な分野での改革がデジタル庁の目標ということもあり、業務効率化や環境への影響を考慮し、さまざまな面でDXが進んでいます。

自社のDXの参考にしたいという方はもちろん、「今」の製薬業界の潮流を感じてみてください。

広がり続けるデジタル利活用! プロモーションや配送システムもデジタル化へ加速

製薬業界のデジタル化がさまざまな方面へと広がっていることが感じられました。ほんの数年前までは、SNSアプリやWEBサイトを活用している企業は一部のみだったかもしれませんが、コロナ禍も重なり、半強制的なデジタル化の中で大きなパラダイムシフトが起きているようです。

社内のDXに対する意識改革に取り組んだり、他のIT企業との協業など、製薬業界全体が自主的に変わり始めている様子がうかがえます。

◆業界の動向◆

待望の「デジタル庁」が発足し、製薬業界でも引き続き、デジタル化が進んでいます。これまでは主にMRの医療機関への直接訪問に代わる手段としてデジタル対応をしていましたが、直近では製薬企業の社員のデジタルに対する意識改革や配送システムのデジタル化、パートナー企業との共創など、製薬企業全体のデジタル化の底上げに取り組む様子がみられました。

日刊薬業:デジタル化で「縦割り打破」、医療・介護の改革も推進 牧島デジタル相、行政・規制改革併任で

牧島かれんデジタル相兼、行政改革・規制改革担当相は、10月5日の就任後の会見にて全国民がデジタル化の恩恵を享受できる社会の早期実現に強い意欲を示した。また、デジタル庁の目標として「医療・介護・教育といった国民にとって身近な分野での改革を進めていきたい」と強調。

行政のデジタル化を強力に推進するため、デジタルガバメントの確立・マイナンバーカードの普及・利活用などを進めるとした。併せて、「客観的データなどのエビデンスを用いて政策立案を行うEBPM(Evidence-Based Policy Making)を着実に推進していく」とのこと。

日本新薬株式会社:「日本新薬グループ デジタルの日」イベント開催 ~全従業員のデジタル化促進に向けた取り組み~

日本新薬株式会社は、デジタル庁が開催するデジタルの日の趣旨に賛同し、10月11日を「日本新薬グループ デジタルの日」として制定した。また、新たに策定した「日本新薬 デジタルビジョン・デジタル戦略」とともに開催されたイベントについて内容を紹介。テレワークによる業務遂行訓練では、災害等により出社できない状況でも企業活動が継続できることを確認するため、本社地区と小田原総合製剤工場において「オンライン災害対策本部設置訓練」を実施。

また、中井社長や取締役をはじめとして多くの従業員(本社地区80%以上)が自宅などでテレワーク勤務を実施し、DX推進プロジェクトメンバーによるパネルディスカッション、ウェビナーなどでデジタルについて学んだと説明した。さらに、第六次中期経営計画の一つとして「AIの積極的活用とIT化の促進」を掲げており、DX推進プロジェクトメンバーを中心にさまざまな活動を推進していく予定。

日刊薬業:DXのマインドチェンジ、消極的社員への対応紹介 中外・アステラス・ノバルティス

10月15日に開催された「バイオジャパン2021」にて、中外製薬・アステラス製薬・ノバルティスファーマの3社でDXの取り組み状況を伝えるシンポジウムが行われた。その中で、DXに消極的な社員への対応をどう行ったかについて担当者から体験談が紹介され、各社の取り組みが明らかになった。中外の志済聡子執行役員は、対外的な発信を積極的に行うことで社内意識を変えると発言。

アステラスの須田真也情報システム部長は社員への丁寧な対応、ノバルティスオンコロジー事業本部データ&デジタルトランスフォーメーション部の田中慎一部長は、DXに向けた社内の環境整備が重要と説明した。そのほか、シンポジウムではグローバル化に対する向かい合い方にも話が及んだ。

日刊薬業:デジタル駆使の配送、24年8月までに全支店導入 アルフレッサ/ヤマト、一部で試験運用「効果出ている」

アルフレッサ株式会社はヤマト運輸と共同し、デジタル技術を駆使した配送体制の構築に取り組んでいる。これは、両社が20年から取り組んでいる「ヘルスケア商品の共同配送スキームの構築」に向けた活動の一環で、この新システムを導入し、物流の効率化を図る狙い。

ビッグデータやAIを活用し、得意先ごとに配送業務量を予測、日ごとに必要な配送車両や配送人員などを試算する2つのシステムを開発している。試算では配送リソースの生産性が最大20%向上し、総距離やCO2排出量を最大25%削減できるといった試算もあるという。また、2024年8月までに全支店へ導入する目標へ向けて、8月から首都圏の支店でトライアルを開始している。

アストラゼネカ株式会社:アストラゼネカ、「i2.JP」発足1周年を記念し、1年間の進捗を発表

アストラゼネカ株式会社では、ヘルスケア分野におけるオープンイノベーション活動を積極推進する日本発のイニシアティブ「i2.JP(アイツー・ドット・ジェイピー)」の発足1周年を記念し、2021年11月11日にメディア発表会を開催。11月1日時点では、7つの企業・団体で発足した「i2.JP」は、1年を経てパートナー数が131にまで増えたという。この取り組みによって、コミュニティ内外においてビジネスマッチングの機会の創出や、「i2.JP」内で走り始めたアストラゼネカが関わる共創プロジェクトも16案件進行中とのこと。「i2.JP」の2年目は、より実務的なプロジェクトを推進しながら、社会実装にもつなげていく狙いがあるという。

◆MR・MS活動◆

引き続き、リアルとデジタルの両方を駆使したハイブリッドなMRの活動が中心となっているようです。しかしながら、コロナ禍でデジタルに特化したMRが急増したわけではなく、今後もMRの存在価値やデジタル専任のMRがどういった位置づけになって行くのかは、時代の流れに合わせて対応していく必要がありそうです。

日刊薬業:デジタル専任MRを戦略活用、製薬各社に動き コロナや働き方改革で拡大も、リアルMRとの関係は?

製薬企業でデジタルによる情報提供を専門とするMRの育成が進められている。情報チャネルの多様化はコロナ禍の中でニーズが顕在化し、各社ともに戦略的に取り組みを開始。すでに導入した企業の取材が掲載されている。

6月には、アステラス製薬と住友製薬が「オンラインMR」の名称を使用することを発表し、日本ベーリンガーインゲルハイムでは8月に本格稼働段階に入った。日本イーライリリーは2009年に「e-MR」を設置しているため、この分野の先駆者ともいえる。しかし、これまでに面談できた医師や施設数については各社とも開示されておらず、訪問規制などがあっても現時点ではデジタル専任MRが急速に拡大しているという訳ではない模様。提供する情報の内容は、日本イーライリリーのみ、e-MRは通常のMRから独立したチャネルとしているため、特定のテーマを掘り下げたものとしているが、その他は対象とする製品・領域はプライマリー、スペシャリティーを問わず、新薬や注力品が主体で担当者数はやや増加している。活動実績としては、新薬発売時に集中的な説明会の開催が目立っていた。

今も続くMR削減の流れとの関係も気になる所ではあるが、今後のデジタル専任MRの位置づけについては、複数の企業が5年後を目安として状況が変わると予測している。

株式会社メディパルホールディングス:2022年3⽉期 第2四半期決算「新型コロナウイルス感染症の影響は続くが、⼀部では回復の兆し」(PDF)

株式会社メディパルホールディングスの2022年3月期第2四半期決算において、渡辺秀一社長は、事業環境について「新型コロナウイルス感染症の影響は続くが、⼀部では回復の兆し」と発表した。

また、コロナ禍で医療機関等への訪問規制がある中、医療従事者とのオンライン面談及び勉強会やWEB講演会を実施し、適正な医薬品の情報提供と収集に努めた。メディセオのオンライン⾯談の回数は、2020年の170回から、2021年9月は23,247回まで増加。営業面の強化については、MR認定試験合格者をAR(Assist Representatives。MR認定試験に合格した医薬品卸の営業担当者や薬剤師などに付与した社内呼称)、MR認定試験に合格した(MS[医薬品卸売業の営業担当者] や薬剤師など)として任命し、高い専門知識とスキルを活かした情報提供活動に取り組んでいるとのこと。

◆新サービス◆

LINE公式アカウントや独自のコミュニケーションプラットフォームの活用はすでに多くの企業で行われています。徐々に情報取得の形がデジタル移行され、リモートによる対応などがスタンダードとなっている様子が伝わってきます。

MSD株式会社:MSD、LINE公式アカウント「AskMSDTM メディカル」を開設

MSD株式会社は10月12日に、MSDの医療関係者向けの情報サイト「MSD Connect™」と連動したLINE公式アカウント「AskMSD™メディカル」を開設し、運用を開始した。

「AskMSD™メディカル」は、「MSD Connect™」の利用者に向け、より迅速に医薬品の適正使用情報を提供する目的で開設されており、医療関係者のLINEアプリからアクセスが可能になる。

また、活用ニーズが特に高いとされる、MSDの医薬品に関する適正使用情報「製品基本Q&A(FAQ検索)」や、AskMSD™チャットボット、MSDのメディカル担当者とのオンラインミーティング、カスタマーサポートセンターの各疾患領域への直通電話等のアクセスが向上するよう設計されている。

武田薬品工業株式会社:多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ®」を服用している患者さんのための新しいサポートサービスの提供について

武田薬品工業株式会社は、11月19日、がん患者支援の一環として、多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ®」を服用している患者さんを対象とした「ニンラーロ服薬サポート」の提供を開始した。

これは、LINE株式会社が提供する個人・法人向けアカウントサービス「LINE公式アカウント」において、ニンラーロによる治療を受ける患者さんやそのご家族向けに提供されるもので、薬剤服用日や患者さんの毎日の体調について記録ができるだけでなく、「ニンラーロ.jp」などの既存のサービスへのアクセスも簡便にする。

ユーシービージャパン株式会社:医療関係者・患者さんとの新しいコミュニケーションプラットフォーム「UCBCares」が 11 月 24 日にスタート(PDF)

ユーシービージャパン株式会社は、患者さんの笑顔のために、デジタルコンテンツとリモートを中心としたリアルコミュニケーションのハイブリッドサービスを通じて、医療関係者・患者さんの双方に対し、疾患に関連するサービスや情報をワンストップで提供するプラットフォーム「UCBCares(ユーシービーケアーズ)」を 11 月 24 日にスタートさせた。

「UCBCares」では、これまで「くすり相談室」を始めとする複数の窓口で対応していたあらゆる問い合わせについて、新たに設置する「コンタクトセンター」で一元的に対応するという。

さらに、プロアクティブな情報提供活動を行う「リモートコミュニケーション」を強化し、医療関係者に対するリモートディテールだけでなく、患者さんに対しても治療をサポートするさまざまな情報を届けていく。

◆事業計画・業務提携◆

今後を見据えた事業計画や業務提携の中で、IT関連企業との業務提携も目立っています。パートナーシップを組むことで、いま必要とされる仕組み作りを加速させられると考える企業が増えているようです。

また、デジタルプロモーションに集中投資するという企業もあり、その他の業界でスタンダードになったデジタルの取り組みが、ようやく製薬業界へ認知され、広がりつつある印象です。

塩野義製薬株式会社:塩野義製薬と日立が、シオノギグループのIT業務に関する 中長期的かつ戦略的なパートナーシップに向けた基本合意書を締結

10月4日、塩野義製薬株式会社、およびグループ会社のシオノギデジタルサイエンス株式会社と、株式会社日立製作所、および日立のグループ会社である株式会社日立医薬情報ソリューションズの4社は、シオノギグループのIT業務に関する中長期的かつ戦略的なパートナーシップに向け、基本合意書を締結したことを発表した。

この取り組みは、シオノギグループが今年7月にDX推進本部を塩野義製薬内に設立し、新たなヘルスケアソリューションの創出に向けた活動を加速してきたことや、このようなDXの推進(戦略領域)と、これまでシオノギデジタルサイエンスが担ってきたIT機能(実行領域)を有機的につないで強化し、新たなステージへ向けた検討を進めてきたことによるもの。

これからシオノギグループのIT戦略・企画およびIT全体のガバナンスを強化するため、シオノギデジタルサイエンスの戦略・企画業務を塩野義製薬に、また、ITシステムの運用・保守および一部の開発業務をシオノギデジタルサイエンスから日立医薬情報に移管し、2022年1月を目途に塩野義製薬が日立医薬情報に運用・保守および開発業務の委託が開始される予定。

今後も4社では緊密なパートナーシップの下、具体的な取り組みに向けて、詳細の検討・協議を進めていく。

ミクスOnline:武田薬品・岩﨑日本管掌「我々の存在意義そのものがSDGsに貢献」 デジタルで取り組み加速

10月6日に開催されたIFPW(国際医薬品卸連盟)東京総会にて、武田薬品の岩﨑真人代表取締役日本管掌が基調講演を行った。岩﨑日本管掌は、「我々の存在意義そのものがESG(環境・社会・企業統治)であり、これからのSDGs(持続可能な開発目標)に貢献するものと信じている」と述べ、地球環境や社会、経済活動が持続可能な、サステナブルな経営の重要性を強調。環境問題に精力的に取り組む理由は、温暖化により熱帯や亜熱帯で感染症が広がってきていることや、従業員からも必要性を指摘する声があがったとのこと。すでに国内の主要製造拠点では100%再生可能エネルギーの電力に切り替えているという。

また、製薬産業を取り巻く環境変化が速く大きいことに触れ、「240年間やってきた絶対変えてはいけないものを見極めながら、変えなければいけないことはどんどん変えていくことが大切だ」と説明した。AI (人工知能)やVR(バーチャルリアリティー)などを積極的に取り入れていることも紹介し、その一方で、「私どものバリューであるタケダイズムは240年間、変わっていない。次の240年も変えることは全く考えていない」と言い切った。

株式会社インタラクティブソリューションズ:インタラクティブソリューションズ、ケアネット社と医薬DX分野で業務提携

10月に株式会社インタラクティブソリューションズは、株式会社ケアネットと業務提携したことを発表。製薬企業のDX化支援の一環として、オンラインでのエンゲージメントに特化したプラットフォームの提供サービスを2022年度より開始する。現在、製薬企業は医師への情報提供を行うプラットフォームの構築・拡張、医師の利用登録の推進、MRによるリモートディテーリングの開始、社内CRMシステムとの連携等の取組みを進めている。

その一方で、医師の利用登録者の拡大、視聴数の拡大、リモートディテーリングによる医師の利用満足度向上、費用対効果の検証方法確立等において多くの課題に直面しており、製薬企業にとってはコストと時間がかかる取組みとなっている。これらの背景を基に、インタラクティブソリューションズはケアネットと新たなプラットフォーム提供サービスを開発することで合意した。新たなプラットフォームは、製薬企業にとって最大の課題の「医師とのエンゲージメントの実現」に特化したモデルで、具体的にはMRを介さないeディテーリングの拡大を支援し、さらに、MR/MSLによるリモートディテーリングの満足度向上も支援するという。

日刊薬業:EAファーマ籔根新社長、営業力強化で売上挽回へ エーザイ時代の経験踏まえ、「KGI/KPI」を重視

EAファーマ株式会社の籔根英典社長は、日刊薬業の取材で2021年度中に医療関係者の顧客管理システムの内製化を完了することを機に、今後の営業戦力として適切なKGIとKPIを設定し、複数チャネルを使った営業力の強化を図っていくと回答。

また、データベースを自社構築し、MR個々の担当施設に応じた目標設定と評価がより的確に行えるという。さらに、炎症性腸疾患と消化管・肝臓疾患のスペシャリティファーマとして存在価値を向上させる活動として治療薬の「メディスン」、治療アプリ等の「デジタルメディスン」、遠隔診療に代表される「リモートメディスン」に注力していくと社内へ発信している。

株式会社ツムラ:2021年度 第2四半期決算説明会「e-プロモーションを強化2021年度下期は上期の3倍以上のディテールインパクトを目指す」(PDF)

株式会社ツムラの2021年度 第2四半期決算説明会にて、加藤照和社長CEOは動画配信やWeb講演会などMRを介さない情報提供活動をe-プロモーションと定義したうえで、2020年度下期~2021年度上期においては、e-プロモーションに必要な投資を集中的に実施した結果、多くの医師に漢方薬の情報がお届けできたと説明。また、「2021年度下期は、上期の3倍以上のディテールインパクトを目指し、e-プロモーション関連を含めたデジタル投資を行う」と発表した。

デジタル活用を通じて変化をもたらす戦略的パートナーシップにも注目!

新型コロナウイルスの新規感染者数も一時期は減少しましたが、新たな変異ウイルスが確認されるなど、まだ予断を許さない状況が続いています。これからのウィズコロナの日常の中で各製薬会社のデジタルへの取り組みや在り方はどう進化していくのか、製薬業界を含め、多くの方が注目しています。

戦略的なパートナーシップを組むといった企業も増え、新たな試みが製薬・医療業界に大きな変化をもたらすかもしれません。 今後も当ブログにて各社のDXの最新事例をお伝えしていきます。