みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、病院や医療に関するデータを調査し、私たち日本人の健康に関する数値や、それらが今後の医療にどう関わって行くのかを考えてみました。さまざまな切り口からデータを見る事によって、医療に関する問題を改めて実感し、健康を維持していくことの大切さも感じ取れるかもしれません。みなさんもぜひ、チェックしてみてください。
少子高齢化社会へ突き進む日本。健康や医療を取り巻く環境を統計データからチェック!
生活習慣病の予防や健康な体を維持するため、日々のライフスタイルを工夫したり、定期的な健康診断などで自身の健康管理をしている人は多くなっています。今回はもう少し視野を広げ、国民全体の健康状態や医療についてのデータを見てみましょう。実は、医療・健康に関するデータは省庁などからも多数発表されており、医療環境の動向や私たちの健康状態が見えるような数字が出ています。
健康に関するデータや数字をさまざまな切り口でピックアップしてみたので、私たちを取り巻く医療環境や日本の医療がどのような状況となっているのかを改めて確認していきましょう。
「100人でみた日本」や「日本の1日」から私たちが置かれている状況を把握しよう!
厚生労働省が公開している「令和2年版厚生労働白書 -令和時代の社会保障と働き方を考える-」では、今の日本を100人単位にして換算した人数、1日で換算したデータが掲載されています。
【人口100でみた日本】
こちらは、「100人で見た日本」のデータの一部です。上記の数字に換算すると、「今」 私たちが置かれている状況が分かりやすくイメージできます。健康志向が高くなってきた現代でも、運動をする習慣がある方は3割程度しかおらず、悩みやストレスを感じる人(12才以上)が5割ほどというのもストレス社会を感じさせる数値です。また、病気やけがで通院している人も4割いるというのも高い数値に感じられました。
【日本の1日】
上記のデータは人口、医療についてのデータを「日本の1日」に換算したものです。
人口は1日で1,413人もの減少になっており、生まれる人口より亡くなる人口の方が多いため、少子高齢化社会を感じる数値が出ています。そして、日本人の亡くなる病気として一番多いのは「がん」。また、次の項目で見られる数字ですが、がんのような特効薬のない病気では治療薬は高額となり、罹患する人が多いほど医療費もかさんでいくということに繋がります。現在の日本の医療費の総額は年間では40兆円以上かかっており(下記の表参考:厚生労働省「令和元年度 医療費の動向」)、国民一人あたりの1日の医療費は931.2円(上記データ:赤枠部分)という計算に。私たち一人ひとりが、毎月約3万円程度負担しているというのも頷けるのではないでしょうか。
健康保険料にダイレクトに繋がる医療費負担。近年の推移をチェック!
以下の表は、近年の医療費の推移をまとめたものです。
全体の医療費、1人当たりの医療費、診療種別の医療費のデータとなっています。年間40兆円というデータの内訳を見る事で、医療費がどの年代、診療種別で大きくなっているかが見えてきます。
【医療費の推移】
【1人当たり医療費の推移】
【診療種類別の概算医療費】
さらに、医療費は少しずつではありますが、年々確実に増加していることは確かです。
医療費を押し上げているのは高齢化社会となっていることや、新技術の導入、高価な薬剤が使われるようになることも関連しています。医療の技術は進歩しているため、医療費の問題は日本だけではなく、先進国は同じ問題を抱えています。
医療費を増加させないように健康な人々が取り組むべきことは、高齢化社会の中でなるべく医療を受けずに過ごせることかもしれません。社会全体で健康寿命を延ばすこと、予防医療や健康な生活習慣を推進させていくことを心掛けて行きましょう。
世界でトップレベルの数を誇る日本の病院数!しかし、その数は減少傾向
こちらは、国や民間企業等が提供している主要な統計データを提供している「統計ダッシュボード」の「医療」分野から、診療科目別に病院・診療所のデータを出力してみた一覧表です。
診療所の方は、取得できるデータが2~3年間空いていますが、大まかな傾向はこちらで掴めると思います。
【診療科目別一般病院数】
【診療科目別一般診療所数】
病院と診療所、それぞれの数の推移を追ってみると、赤文字部分の病院の歯科と診療所の内科が数を増やしていますが、その他の施設数は減少していました。
病院数は人口の減少にともなって自然に減っていること、また、地域の病院の統合なども増えてきたためと考えられます。以前にも取り上げていますが、医療施設は数が多いから良いわけではなく、「人口1,000人当たりの臨床医師数」や「病床100床当たりの臨床医師数」は、諸外国に比較すると最も少ないというデータもあります。そのため、医療施設の「数」より「質」が高いことが患者にとっては良い環境であり、医療従事者にとっても望まれることでもあります。また、今後は在宅医療なども取り入れられていけば、さらに病院の数は減っていくと考えられます。
医師数は病院・診療所ともに増加! 平均年齢も過去20年で2~3歳上昇
厚生労働省が公開している「平成30年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」に、医師数のデータが掲載されています。総数を見ると、前回調査の2016年から全体では2.4%の増加になっていました。男女別では男性が1.4%、女性が6.3%と、女性医師数が大きく増えていることが分かります。
【施設・業務の種別にみた医師数】
【施設の種別にみた医師数】
上記の表は、施設の種類で分けた医療施設に従事する医師数の年次推移です。
こちらも、施設問わず医師の数は増加。特に病院の医師数は他の施設に比べて増加が著しいようです。また、驚くことに、36年前の1982年と比較すると医師の数は倍以上に増えています。それでも世界に比べて病床や人口に対する医師数が少ないというデータがあるという事は、患者の数が多くなっており、人口は減少していても医療に関わる人が必要とされている時代になってしまったということです。
【年齢階級別にみた、病院・診療所の医師の平均年齢】
また、私たちが少子高齢化の時代の中で生きているように、医療の現場でも高齢化は進んでいるようです。
病院・診療所で差は出ているものの、病院の医師の平均年齢は2018年のデータで44.8歳、診療所では60歳です。こちらも少しずつですが確実に上昇しているようなので、直近のデータはもう少し上がっている可能性もあるかもしれません。
医療の進歩で入院患者数は減少へ!近年の訪問医療は急激に増加
保険会社のCMなどでも伝えているように、現在は医療の進歩に伴い、日帰り入院も増えています。がんのような病気でも入院せずとも治療ができるというのは、患者さんにとっても身体の負担も軽く、喜ばしいことなのではないでしょうか。
厚生労働省の平成29年(2017年)患者調査の概況、入院日数の推移をみてみると、平成初期から日数はどんどん右肩下がりに減少しています。約1ヶ月半の平均入院期間だったものが、平成29年になると病院・診療所を平均して29.3日まで短縮できています。しかし、この数字も諸外国で比べるとかなり長期間であることには変わりはありません。
【施設の種類別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移】
【主な傷病の患者数】
また、患者の傷病の内訳は高血圧性疾患が第1位。2位以下の傷病に比べてかなり多い数値です。高血圧性疾患も加齢に伴い患者数が増えるため、このような結果になっていると考えられます。2位は、歯肉炎及び歯周疾患。成人の8割が歯周病などとも言われていますが、歯周病は自覚症状のないまま進行していくこともある病気です。症状がなくとも予防のために歯科医院に通うなどの生活習慣を根付かせない限り、患者数は減りにくいかもしれません。
【施設の種類別にみた推計患者数の年次推移】
【年齢階級別にみた推計患者数の年次推移】
施設や年齢階級別で入院/外来の患者数を見てみると、やはり入院患者は減り、外来も入院ほどではないものの少しずつ減っています。しかし、年齢別の状況を見ると入院/外来ともに65歳以上の患者は着実に増えていることが分かります。
【在宅医療を受けた患者数】
さらに、平成20年以降は、訪問医療を受ける人数が急激に増えていることが分かりました。また、直近では新型コロナウイルスの流行で「オンライン診療」が注目され、スマートフォンのアプリケーションを使った「治療アプリ」などもリリースされたことは、みなさんもご存じなのではないでしょうか。これらの新しい取り組みもこれまでの医療体制に変化を与えるものとなり、数年後には入院や外来のデータに影響が出てくるかもしれません。
医療の未来を見据えてヘルスリテラシーを上げていこう!
私たちが健康であり続けられるよう、一人ひとりが自身の健康状態に気を使うことは今後も国民全員で心掛けていきたいことでもあります。また、健康で暮らせるということは少子高齢化社会に伴い、確実に逼迫していくであろう医療費の負担を軽くすることにも繋がって行くはずです。まずは自分自身の健康を保ちつつ、ヘルスリテラシーを上げて予防医療などにも積極的に取り組んでいきましょう。
これからも省庁などが発表するデータを基に、私たちの医療や健康を取り巻く状況をお伝えしていきます。
※本記事の医療情報や内容は現時点(2021年7月)で確認できるものとなっています。最新データの更新などにより数値が変わるおそれがある点にご注意ください。