【コラム】薬ができるまで(後編)臨床試験は、人体で行われる「治験」。薬の承認に向けた安全性と効能を治験で徹底検証!

コラム

2021.02.10

みなさん、こんにちは。広報担当です。

今回のコラムでは、薬ができるまでの前編に続く後編をご紹介していきます。 前回は、薬の種となる「リード化合物」の発見、そして、動物を使った非臨床試験のプロセスを解説しました。

今回は、その後の臨床試験から薬が発売されるまでの流れを解説していきます。最長で17年ぐらいの年月をかけて発売されるという創薬のプロセス。長く地道な歩みを知ることで、“知っているようで知らなかった”薬に対する関心を高めることも出来ます。ぜひ、ご覧になってください。

創薬プロセスで最も時間とコストを要する後半戦!偽薬を使った治験や販売開始後に調査も

コラムの前編では、創薬に掛かる時間とコスト、また全体のプロセスの中の「基礎研究」~「非臨床試験」を解説してきました。今回は、続きのプロセスとして「臨床試験」~「承認・販売」について解説します。

そして、3つ目のプロセスの「臨床試験」は「治験」とも呼ばれています。みなさんも、「治験アルバイト」などという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。薬を試す、ということは思い浮かぶかもしれませんが、「治験」の詳しい内容を知っている方は殆どいないと思われるので、今回はその内容についても解説していきます。

また、現在は新型コロナウイルス関連のニュース等で、ワクチン開発や治験、治療薬の承認についての話題が頻繁に取り上げられています。今後のウイルス対策や最新の治療に関わる情報として、関心を持ってニュースをチェックしている方も多いと思います。薬は私たちの生活になくてはならないものです。こちらで創薬についての基礎知識を身に付けましょう。

プロセス3「臨床試験」(期間:3~7年)

2つ目のプロセスの「非臨床試験」では、基礎研究において発見された医薬品の元となる「リード化合物」の安全性や有効性を、培養細胞や実験動物を使用して確認してきました。

ここからは、薬の候補となった治験薬を健康な人や患者さんに協力してもらいながら、人体での効果と安全性を調べていきます。

先ほども説明したように、人を使用して行われる試験は一般的に「臨床試験」と呼ばれていますが、「くすりの候補」である物質を用いて国の承認を得るための試験データを集める臨床試験については、特に「治験」と呼ばれています。

「治験」は人体に最適な用量や用法を見極めるために、3段階に分けて試験が行われます。最初は少人数から始まり、次は100人で服用、その次は1000人以上…のような形をとります。その中で服用する量を変えて安全性をチェックしたり、他の薬との相互作用や長期間服用しても安全かどうかも確認する必要があるため、試験期間は最長で7年程度となります。

【治験に関する豆知識】

事前にインフォームドコンセント(※)が行われている
治験の参加者は強制されることなく、自分の意思で参加・不参加を決めることができます。
治験の前には担当医師から治験の目的や方法、治験薬の特徴などが書かれた説明文書を渡され、内容について説明を受けます。また、参加者からも治験の内容について納得できるまで医師に質問することが可能です。
治験を受けることを決めたら、「同意文書」に参加者と治験を担当する医師が自筆で署名し、それから治験が行われることになります。
(※)医師と患者、双方の十分な情報を得た上での合意を意味する概念。

治験中に守らなければならないことがある
治験薬は服用方法や条件を守らないと、予期せぬ副作用が出ることもあります。そのため、治験の参加者に向けた注意事項が設定されています。
当たり前のことかもしれませんが、服薬方法、服薬期間、回数は正確でなければなりませんし、病気の種類によっては、食事や運動、喫煙や飲酒に制限が出ることもあります。また、他の市販薬や漢方薬の服用、他の病院へ掛かる場合には医師に相談しなければならないなど、参加者側も治験期間の中で気を配りながら生活をしなくてはならないところもあります。

治験の3段階について、以下からそれぞれ説明していきます。

【第一相(フェーズI)試験】

・治験薬を健康な人で初めてテストする。少人数の健康な成人に対し、少しずつ治験薬の投与量を増やして安全性を確認していく。

・血液や尿などに含まれる治験薬の量を測り、体内に吸収・排泄される時間や、どのように排泄されるのか体内動態を確認する。

【第二相(フェーズⅡ)試験】

・治験薬を少数の患者を対象にテストする。臨床用量の範囲や適応疾患の範囲を探索するために、効果があると予想される少数の患者で治験薬の効き目や副作用の程度を確認する。

・安全性と有用性を考慮して、治験薬の効果が最も得られる至適用法用量を設定する。

【第三相(フェーズⅢ)試験】

・治験薬を多数の患者を対象にテストする。
・至適用法用量の確認や有効性、安全性の検証が行われる。

上記のステップを終了したところで、治験薬を開発している製薬企業がデータをまとめて厚生労働省に医薬品として認めてもらうよう申請が行われます。

プラセボとは?
みなさんは、「プラセボ効果」という言葉を知っていますか。
新型コロナウイルスのワクチン開発のニュースで聞いたことがあったり、または心理学などに詳しい方は知っている用語かもしれません。これは、「プラセボ=偽薬」を飲んだ場合でも、患者さんは効き目があると思いこみ、実際に症状が良くなってしまうことを意味します。

臨床試験では、「プラセボ効果」を科学的に証明するため、有効成分を含まない偽薬を服用してもらうことがあるのです。心理的な影響によってデータが取れなくならないよう、有効成分を含むもの、含まないものも同じ外見にして、誰が偽薬を服用したか分からないようにテストしています。

プロセス4「承認と販売」(期間:1~2年)

臨床試験が終了すると企業から厚生労働省への承認申請と、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査に入ります。その審査を経て、厚生労働大臣の承認を得ることができた後、初めて販売することができるようになります。

また、販売後の「市販直後調査」は、新医薬品の販売開始後(効能・効果の追加時等は承認後)の6ヶ月間、その医薬品の副作用等に関する情報を早急に把握するため、医薬品の製造販売業者が実施します。

販売までのプロセスは以下から説明します。

【承認申請】

・承認申請資料の作成
承認申請時に添付すべき資料は、「起原又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料」、「製造方法並びに規格及び試験方法等に関する資料」、「安定性に関する資料」等、細かな内容を含めると20種類以上にも及ぶ。

【承認審査】

・厚生労働省・総合機構による承認審査
提出された申請資料の内容が倫理的かつ科学的に信頼できるかどうかを調査する「信頼性調査」、信頼性調査の結果を踏まえて申請された製品の効果や副作用、品質について現在の科学技術水準に基づき審査を行う「承認審査」、申請された製品を製造できる能力を有するかどうかを調査する「GMP/QMS/GCTP調査」などがある。

これらの調査・審査の結果を踏まえ審査報告書・調査報告書を作成し、厚生労働大臣へ報告する。

【承認】

・厚生労働大臣による承認

【市販後】

・医薬品発売後の安全性や使用方法についての情報収集・必要な措置の実施。
※新たな医薬品の市販直後は、安全対策が必要となる。

審査で承認された医薬品の使用患者数が短期間で急激に増加するため、使用患者も治験時よりさらに多様化していく。それによって承認前には捉えられなかった重篤な副作用等の出現や、予測できないような副作用等が発現するおそれがあるため。

「市販直後調査」
新医薬品の販売開始後(効能・効果の追加時等は承認後)6ヶ月間、診療において当該医薬品の適正使用を促し、必要な副作用等に関する情報を迅速に把握するために製造販売業者が実施する。新医薬品の承認審査の過程において市販直後調査が必要であると判断された場合、医薬品の承認の条件となる。重篤な副作用等の発生情報を医療機関等から入手した場合には、速やかに詳細情報の把握に努め、薬機法の規定に基づき医薬品医療機器総合機構 (PMDA)に副作用等の症例報告を行う。

「再審査」
新医薬品の承認後、一定の期間が経過した後、製造販売業者が実際に医療機関で使用されたデータを集め、承認された効能効果、安全性について再度確認する再審査制度が設けられている。

【承認に関する豆知識】

◇新薬の承認期間について

現在も猛威を振るう新型コロナウイルスの治療薬として、海外の製薬会社が販売しているエボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」がわずか3日間で厚生労働省に承認されるという事例があった。

この記事で解説したように、通常の創薬に掛かる期間は9年~17年程度であるため、承認期間の短さに驚かされた方も多いのでは。今回、「レムデシビル」が承認されたのは薬機法 第14条の3「特例承認制度」の条件を満たしたことによるもの。しかし、有効性や安全性に関する情報が極めて限られているため、追加の義務や条件がある。

◇審査制度における特例について

医薬品の審査には、条件に基づいたうえでの特例が適用されることもある。どの特例制度が適用されるかは、その医薬品開発の背景などによって異なる。

これらの特例によって、新薬が発売されるまでのスピードが早まるだけでなく、製薬会社は時間とコストの負担が大きい新薬開発に積極的に取り組めるというメリットもある。

「先駆的医薬品指定制度」
この制度は、世界に先駆けて革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品を日本で早期に実用化するべく創設された。これにより、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第77条の2第2項に基づき、治療薬の画期性、対象疾患の重篤性、対象疾患に係る極めて高い有効性などの条件に合致するものとして、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣に指定される。

「希少疾病用医薬品の指定制度」
この制度が制定される以前は、難病、エイズ等を対象とする医薬品や医療機器は、医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少ないことにより十分に研究開発が進んでいなかった。しかし、昨今の医療をめぐる国民のニーズの多様化等や、医薬品・医療機器の研究開発をとりまく状況の変化等を踏まえ、希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器の試験研究を促進するための特別の支援措置が講じられることとなった。

これにより、希少疾病用医薬品・希少疾病用医療機器・希少疾病用再生医療等製品は、医薬品医療機器法第77条の2に基づき、対象患者数が本邦において5万人未満であること、医療上特にその必要性が高いものなどの条件に合致するものとして、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣に指定される。

「条件付き早期承認制度」
これは、重篤な疾患に対する有用な医薬品をいち早く承認することを目的とした制度。患者数が少ないなどの理由で臨床第3相試験などの検証的臨床試験を行うことが難しい医薬品・医療機器・再生医療等製品について、発売後に有効性・安全性を評価することを条件に承認される。

長い時を経て処方される薬は、安全性と有効性のテストに合格した証!

私たちの身の回りにある医薬品の効果が高く、安全な理由に納得いただけたのではないでしょうか。また、長い時間を掛けて販売にこぎつけた後にも製薬会社は副作用に関わる調査を続けるなど、やるべき作業は続いていきます。これほどまでに慎重に安全性を確認し、効果が高いものを私たちは安価に提供してもらえる環境にあるというのは、やはり素晴らしいことです。

しかし、処方された薬の飲み忘れや、飲み切らないで薬を捨ててしまうという問題は、長年医療従事者を悩ませています。薬の効果を証明するためにも、服用量や時間を守るようにしましょう。薬の飲み忘れによって病気が完治できず、再び病気に罹ってしまうことも有り得ないとは言えません。さらに、このような小さな積み重ねが医療費を押し上げてしまう要因にもなりかねないのです。一人ひとりの健康や医療への考え方が、日本の医療環境に繋がっていることを意識していきましょう。

ブログでは今後も、みなさんのヘルスリテラシーを上げられるコラムを配信していきます。

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