【予防医療勉強会:前編】身近な予防医療やワクチン接種の効果を解説!

コラム

公開日:2024.03.26
更新日:2024.07.09

身の回りの予防医療やワクチン接種の効果について

私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏と、弊社社員による勉強会のレポートです。

テーマは、一般の方にも浸透して来つつある「予防医療」。何が予防医療にあたるのか、さまざまな身の回りの予防医療や、その代表ともいえるワクチン接種の効果についての考え方についても解説しています。ぜひ、ご覧ください。

筋トレやリハビリも予防医療?

佐塚さん「それでは鈴木さん、今日もよろしくお願いします!」

全員「よろしくお願いします!」

鈴木氏「はい、よろしくお願いします。今日は予防医療のお話です。みなさんも予防医療という用語はご存知だと思いますが、では、具体的にどんなことをするのが予防医療なのでしょう? 菰田(こもだ)さん、いかがですか?」

菰田さん「予防医療は、そもそもお医者さんにかからないようにすること。例えば、インフルエンザの予防接種などのことだと思います」

鈴木氏「ありがとうございます。そうですね、病気になることを防ぐ。それが予防医療ですね。プラスアルファするなら、すでに病気にかかってしまっているけれど、それが悪くならないように防ぐのも予防医療に入ってくるかなと。

あとは、一般的な寿命ではなく、健康でいられる時間を長く伸ばしましょうという “健康寿命”というものがありますが、そこに資するものであれば予防医療と呼んでもいいのではないかという考え方があります。先ほど予防接種の話が出ましたけれど、他に『そういうことであれば、これも予防医療では?』というものがあれば挙げてみてください」

大浜さん「じゃあ私から。私は夫の健康診断の結果を見て『血圧が……』と思ったりするんですが(笑)、これは妻ならではの予防医療だったりするんでしょうか?」

鈴木氏「おぉ、素晴らしい! それも予防医療に入りますね。その結果を見て、食生活を改善する、なんていうのは予防医療に入ります。他の方はいかがでしょう?」

内海さん「いわゆる筋トレはどうでしょう? 予防というか、未病の対策になるのかなと」

鈴木氏「良いですね! 運動習慣、筋トレも先ほどの食生活の管理と同じですね。予防医療に入れて良いんじゃないかと思います。あ、清水さんどうぞ」

清水さん「怪我をした時のリハビリは入らないんでしょうか? もう1回、同じ怪我をしないようにすることなので」

鈴木氏「そうですね。リハビリも含みます」

一次・二次・三次に分けられる予防医療

一次・二次・三次に分けられる予防医療

鈴木氏「みなさん、素晴らしい! 次々に色々なものが出てきましたね。とはいえ、先ほど挙げていただいた予防接種と食生活の管理が同じかというと、ちょっと違うように感じませんか? 

実は、僕もこの勉強会をする前に調べたのですが、予防医療の中でも、一次予防、二次予防、三次予防という概念があって。一次予防というのが、先ほど出た食事管理とか運動習慣、禁煙、うがい手洗いのような衛生習慣です。誰にでもできて、簡単に生活の中に取り入れられるようなものですね。

じゃあ、二次予防は何かというと、健康診断や歯医者の定期健診、人間ドックに行くなどの検査や健診。そして、三次は病気にならないように治療的な介入をすること。お薬の投与や手術をする、放射線を当てるとか。ワクチン接種なんかは典型的なものです。あと、先ほど大浜さんからご主人の血圧が……というお話も出ましたが、高血圧って病気だと思いますか?」

大浜さん「うーん。症状が分からないですし、数値しか出ていないので。でも、高い数値が出るとお医者さまからは怖い言葉を掛けられるというか、ちょっと脅されるような感じになります……(笑)」

鈴木氏「そうそう(笑)。まぁ、少し高い数値なら、時々ぼーっとしてしまう位の症状はあるかもしれないですね。でも、それが病気ですか? と言われると『ん?』と思いますよね。けれど、放っておいたら心臓の病気になったり、血栓ができてしまったりと、他の病気に発展していくようなことがあるので血圧はコントロールしましょうと。

コレステロールや血糖値もそうですね。だから、僕からしてみれば、そういった病気の治療も予防医療に入れて良いんじゃないかと思ったりします。これは世の中で言われていることというより、僕の考え方なのですけどね。いずれにしても、そういった医療的な介入をするのが三次予防です。

ということで、ここまでは何が予防医療なのか、という話です。では次は、ワクチンの予防医療について考えていきたいと思います。先ほど菰田さんがインフルエンザワクチンの例を出してくれましたが、予防医療というとワクチンは最初に頭に浮かんでくるものです。多くの方にとって馴染みがあって分かりやすいものですからね。みなさんは、会社としてインフルエンザワクチン接種をされるんですよね」

全員「(うなずく)」

効果はある、ない? ワクチンの効果が判断しにくい理由

鈴木氏「じゃあ、世間一般では、インフルエンザワクチンはどれくらいの人が接種していると思います? 実は、半分もいないんです。せいぜい3割~4割だと思いますよ。なぜだと思いますか?」

相馬さん「私は毎年“打つ派”なんですが。でも、打たない方は、打つと体調が悪くなってしまうからとか、打っても罹ってしまうからとか、そういう理由なのではないかなと」

鈴木氏「ありがとうございます。『打っても罹るよね』か、もしくは『自分は絶対に罹らない!』の2パターンは良く聞きますね(笑)。言っていただいたように、『打っても罹るよね』というのは、みなさんも聞くことはあると思いますが、これはなぜだと思いますか?」

高橋さん「接種したらインフルエンザになっても症状が軽くなると聞いたことがあるので……、ワクチン接種をすることによって免疫が付くのかなという認識はあります」

鈴木氏「良い視点ですね。まず、今のお話で大事なところがあります。ワクチンの効果には病気に罹らないという面と、もし、その病気になったとしても軽く済むという面があります。新型コロナウイルスのワクチンなんかもそうでしたよね。

では、インフルエンザワクチンの効果について考えてみましょう。例えば、2万人の人がいたとします。ワクチンを打たない人が1万人で、その内4,000人がインフルエンザになります。打った人が1万人で、その内2,000人がインフルエンザになります。この結果の場合、効果があったといえるのでしょうか?」

全員「……(困惑)」

鈴木氏「じゃあ、挙手してもらいましょうか(笑)。効果があったと思う人(画面をチェックしながら)……4人。効果がなかった、もしくは分からないと思う人……2人。そうですね、普通に考えて、打った人も打たなかった人も同じ条件だったとして。ワクチンを打たなかったら4,000人、打ったら2,000人がインフルエンザに罹ったということ。この差は偶然ではないですよね。4割と2割ですから、インフルエンザに罹る確率は半分になっている。だから医療としては50%の予防効果があったと考える。

ということは、ワクチン接種をした人全体で考えれば効果がある一方で、1万人がワクチンを打っても、その中の2,000人はインフルエンザに罹るわけです。だからこそ、直感で効果があるかどうかが分かりにくいんです(笑)。

ワクチンの効果を理解するのが難しい理由の1つは、こういったことがあります。ワクチンを打ったら100%、その病気に罹らないのであれば、効果も実感しやすいんですけど。それ以外にワクチンの難しい所があるとしたら、どういうものがあると思いますか? 以前、子宮頸がんワクチンの勉強会でもお話しましたが、普及しにくい理由は何だと思います?」

清水さん「副作用でしょうか。私は中学生ぐらいの頃に親から副作用の話をされたような……。それで、接種するかどうかという風になったと思います」

鈴木氏「そうそう。ワクチンの場合は、“副作用”というより“副反応”という言い方を良くしますが、副反応がどうなんだろう、というのは1つありますね。あと、接種するメリットがあるとすれば何でしょう?」

大浜さん「私はワクチンを接種したんですが、メリットは子宮頸がんに罹らないということ。接種時はある程度の年齢になっていたので、接種するかしないかの判断軸はそこですね。がんに罹ることの方が怖かったので。

ただ、若い方であれば、このワクチンが承認されてからの期間が短いから接種するのが怖いというか。将来的な妊娠の可能性を考えたら判断が難しいんじゃないかと」

鈴木氏「ありがとうございます。僕が言おうとしていた話がちょうど出たのですが、“接種したら罹らない”。これはメリットなんですけど、予防接種を受けた中高生が2、3年後に子宮頸がんになるかと言ったら、そういうわけではないですよね。

実際には、10年、20年単位でがんになるリスクを減らすということ。とても時間軸の長い話になってしまう。だから、子宮頸がんワクチンは、メリットを身近に感じにくいワクチンだということになるんです。コロナウイルスのワクチンは、今目の前で流行しているものに罹らないという話だから分かりやすいんですけどね。

けれど、子宮頸がんワクチンの効果を実感するにしても、実証するにしても、10年単位で時間がかかることになります。治験ではしっかりと確認しているんですが。大浜さんが仰っていたことと同じで、社会全体が効果を実感して認知するには10年、20年かかるわけですから、難しい。メリットを感じにくいという一面があります」

接種を拒否する人は“損失回避”をしていた!

ワクチン接種を拒否する人は“損失回避”をしていた!

鈴木氏「で、もう1つは副反応が大丈夫なのか、ということですね。これは、行動経済学の“損失回避”という概念があって。人間というのは、ずっと先にある利益やリスクよりも、目の前にある利益やリスクが大きく見えるものなんです。

だから、リスクに関しての不安感は増幅されてしまい、子宮頸がんワクチン接種をするかどうかという時に接種する方に踏み出せた人は少なかった。お医者さんが想定するよりも接種人数が大分少なくなってしまったというのは、そういうことなんです。科学的にはメリットがあると証明され、子宮頸がんワクチンの副反応として騒がれた症状は、接種をしていなかった思春期の女性にも同じくらい出ていたことがわかっています。

でも結局、子宮頸がんワクチンは悪いイメージを引きずったまま今に至ってしまったという感じですね。こういうところがワクチン接種の難しさです。みなさんは、他に『このワクチンを打とう』とか、『友達に止められたけど、どうしよう?』なんて思っているものはありますか? あ、菰田さんが頷いていますね」

菰田さん「私は、コロナウイルスのワクチン接種をしたくなかったです。というのも、コロナに罹るより、副反応で発熱などがあるのが嫌で。なので、先ほど鈴木さんのお話でも出た、身近にあるリスクを大きく感じていたのだと思います。

ただ、その時は旅行に行きたかったので、結局、旅行に行くにはワクチン接種が必要だから打つことにはなって。コロナに罹るかどうかより、旅行に行けなくなるということの方が嫌だった、デメリットとして大きかったということですね(笑)」

鈴木氏「すごく良い事例が出ましたね(笑)。そうなんです、人間の行動原理は、目の前にある大きな損失やリスクを避けたい、というのがあるんですよね」

―― 前半は一旦ここまでとなります。後半では、最近発売された注目のダイエット効果のある新薬やアルツハイマーの予防薬のこと、そして、製薬会社と予防医療の関係性などについて触れていきます。楽しみにお待ちください。
後編はこちら