Google ChromeのCookie規制にどう対処すべきか? 選ばれるべき製薬会社のオウンドメディアについて考える

デジタルマーケティング

2022.01.25

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、WEBブラウザのGoogle Chromeのサードパーティークッキーが、2023年をめどに徐々に廃止されることから、製薬業界の広告がどう変わるかについて考えてみました。日本でも高いシェア率を誇るGoogle Chromeから、サードパーティークッキーが規制されることによる影響はどのようなものか。また、対策はどのようにするべきか。

これからの広告の手法について悩んでいるという製薬会社のデジタル担当者の方も、ぜひ参考にしてみてください。

個人情報保護の観点から、シェア率が約50%を誇る「Chrome」がCookie規制へ

GoogleがWEBブラウザ「Chrome」でWEBサイト閲覧者の行動をトラッキングできるサードパーティークッキーの利用を規制することを明らかにしたのは2020年1月のこと。

このお知らせ以降、製薬会社のデジタル広告のプロモーションに関わっている方は、クッキー規制について気になっているという方も多いのではないでしょうか。そして、この規制に向けた取り組みは、2023年半ばから後半までの3カ月の期間で段階的に廃止する見込みであることが発表されています。

クッキー規制まで2年足らずということもあり、残された時間はどんどん少なくなっています。

デジタル広告のプロモーション担当者のみなさんも、私たちとともに、これから脱クッキーに向けて何をするべきかを考えていきましょう。

なぜ、Cookieに規制が掛けられてしまうのか?
まず、このような施策を取ることになった理由は、プライバシーの侵害や情報漏えいなど、個人情報保護への対応が必要になったためです。ユーザー視点で見ると、クッキーによる情報収集は、行き過ぎた個人情報の収集や追跡(トラッキング)が行われているともいえました。その点で、Appleのブラウザ「Safari」では、すでにクッキーを規制し、対応していました。他にも「Mozilla Firefox」では、プライバシー関連の機能を強化しており、クッキーなどの追跡技術を遮断する技術に開発リソースを割いているといいます。

※Cookieとは?
WEBサーバーやJavaScriptからユーザーのブラウザへ送られて保存される小さなテキストファイルで、WEBサイトを表示したブラウザの情報を一時的に保存しておく仕組み。クッキーにはIDが記載されており、そのIDを用いてWebサイトを閲覧したユーザーの識別を行うことで、再訪者であるか否かを判断する。ページを閲覧した履歴やログイン情報などを記録しておき、クッキーによってサイト訪問者のユーザー属性や閲覧履歴、買い物履歴などが把握できるようになるため、見込み顧客の分析などマーケティング施策を検討するうえでの手がかりとなる。

※サードパーティークッキー/ファーストパーティークッキー
ファーストパーティークッキーは、訪問しているWEBサイトのドメインから直接発行されたクッキー。他のサイトを横断してトラッキングすることはできない。
                            サードパーティークッキーは、訪問しているWEBサイトとは異なるドメインから発行されたクッキー。この広告配信サーバーがWEBサイトと別ドメインで運用されている場合、サードパーティークッキーが発行される。

そもそも、クッキー規制で大きな影響があるといわれているのはなぜかというと、以下のグラフからも分かるように、日本のブラウザのシェアではChromeが5割ほどを占めているからです。そのため、サードパーティークッキー規制による影響もChromeユーザーが多い分、大きくなると考えられています。

※参考:Statcounter(2020年12月~2021年12月の日本のブラウザシェア)

リターゲティング広告に打撃! 今後はサードパーティークッキーからファーストパーティークッキーの利用へ

そして、クッキーの規制によって影響を受けるのは、主にリターゲティング広告です。
みなさんも、あるオンライン通販サイトを見た後に別のサイトを開いたら、さっきまで見ていた商品の広告が表示されている…。こんな状態を多くの人は経験したことがあるのではないでしょうか。これが「サードパーティークッキー」の利用による広告出稿なのです。リターゲティング広告は、ある程度、興味のあるユーザーへの広告配信を設定することができるため、効率の良いマーケティング手法でもあります。

ということは、サードパーティークッキーの仕組みを利用した配信ができなくなれば、費用対効果が高いリターゲティング広告が出せなくなるということになり、リターゲティング広告からの流入を狙った売り上げが低下してしまうことに繋がります

このように、広告主側には大きな懸念点がありますが、WEBサイトを使うユーザー側は、サイトをより安全に使うことができるようになります。

そして、今後はサードパーティークッキーの廃止によって、上記で説明したファーストパーティークッキーで取得できるデータの重要性が著しく高まっていくことが考えられます。

他業界と異なる製薬会社のプロモーション。これから活用するべきはオウンドメディア!

前提条件として、医療の情報は医療法、及び、薬機法による広告規制がかけられているため、広告可能事項以外の情報を記載することはできないというルールがあります。そのため、基本的に製薬会社が使う広告としては、医師であることがチェックできるプラットフォームなどからの情報発信が多くを占めています。

また、広告にはプル型(検索連動型広告、リターゲティング広告等)、プッシュ型(ディスプレイ広告や動画広告等)の2種類に分かれています。今回のサードパーティークッキーの規制によって、ニーズに合わせて特定のユーザーにのみ配信するプル型広告(リターゲティング広告)の精度が落ちてしまう、ということを覚えておきましょう。

そして、リターゲティング広告が使用できなくなり、直接売り上げにダメージが出るのは、OTCなどのBtoCマーケティングをしている製薬会社です。医療用医薬品のように医者から処方してもらう薬を扱う製薬会社のWEBサイトは、サイトから直接商品の購入をするわけではないため、考慮する点が異なってきます。

先ほどもお伝えしたように、医療業界の場合は制約があるため、単にプッシュ型の広告を増やすことや、ここ数年注目を集めているSNSマーケティングなどが使用できないケースもあります。武器が少ない製薬業界のマーケティングに携わる担当者さまには、自社内でコントロールができる自社のWEBサイトやコンテンツページ等の、“オウンドメディアの活用”をおすすめしています。

高まるオウンドメディアの価値! 選ばれるWEBサイトを作るためには “ストーリー”を描く

クッキー規制に関わらず、改めてオウンドメディアを活用し、やるべきことを整理してみましょう。

もしかすると、読者のみなさまを含め、製薬会社の方々はDX推進の真っ最中で、デジタル化対応に追われているかもしれません。そもそも、製薬業界というのは、MRのリアルマーケティングを中心に医師への情報提供が行われているという特殊な事情をもつ業界です。これが、コロナ禍によってMRと医師の面談がWEB化される等、インターネットを介した情報提供に切り替わりつつあるのが現状です。

これらのデジタル化については、医師だけではなく、患者側についても同様です。医療従事者の労働負担を減らすという意味でも、WEBサイトを利用した情報提供や診察の予約受付、AIによる問い合わせ対応なども取り入れられつつあります。

ここからは、オウンドメディアの活用を目的とした見直しポイントを説明していきます。

自社サイトの見直し、改修などに着手する場合には、以下の項目も参考にしてみてください。

■自社のWEBサイトやコンテンツ等をドクターや患者が検索し、訪問してもらう場合のポイント

・SEO対策をする事で、検索時に早くサイトへたどり着けるようにする。
・実際にサイトを訪問し、閲覧した時の使いやすさを考慮する。(UI/UX)
・常に最新情報に更新されているなど、情報の鮮度に気を配る。

■WEBサイトを整理する前に、考えるべきはターゲットの背景(*ストーリー)

 *ストーリーとは… ペルソナ設定・ペイシェント(カスタマー)ジャーニー
「どういう状態になることを目指すのか?」それをわかりやすくするために、ストーリーを描く。注意したいポイントは、例えば、“疾患啓発のサイトにコンテンツを増やす“等のHow(方法)の部分ではなく、サイトに訪問した患者(または、医師)がどういう状態になってほしいか(to be)です。

【ペルソナ設定】
実際のWEBサイトの訪問者に近い、架空のユーザーを「具体的に」作り上げること。
◎ペルソナ例:
斉藤京子さん『43歳、女性、既婚、子どもあり。都内で3LDKの部屋に住み、年収は450万円』…

【ペイシェントジャーニー】
ペルソナが固まった後、さらにユーザーの動きを時系列で可視化したもの。
◎上記の「斉藤京子」というペルソナを使ったペイシェントジャーニー例:
『子どもが(疾患名)に罹り、治療は5年目。精神的にも疲れを感じ始めている状態だが、友人伝いに最新の治療薬の情報を知り、担当医にその治療薬が使用できるかを相談。家族と話し合った結果、治療への希望を見出し最新の治療薬での投薬を決意』…

※ペルソナ設定、ペイシェントジャーニーについて詳しく知りたい方は、過去のブログ記事も参考に。
MM流WEBサイト制作のポイント#3【フェーズ1:要件定義】

変化し続けるインターネット環境! サイト構築後は適切な「運用」をすることで対策

インターネットサービスの仕様も常に変化の中にあります。これまで常識とされていたものが覆ることはある、という前提で仕様変更などのニュースをウォッチしていきましょう。また、数年前まで医療業界はリアルマーケティングが主流だったこともあり、初回のサイト構築の後はWEB担当者が不在というケースもあったのではないでしょうか。

今後は、このような変化に迅速に対応できるチームや専任体制が必要になり、これまで以上にデジタル周りの仕様変更にも柔軟に対応できる組織であることが企業としても求められていきます。

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