みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は8月~9月の製薬会社の動きをまとめています。
先日は、菅新総裁によって「デジタル庁」が創設されることが発表されました。新型コロナウイルスの流行期を経て、日本中が新しい生活様式を取り入れ、デジタルとの共存へと移り変わりつつあることを体感する日々です。
そして、医療業界がどんなビジョンを持ち、どんな方向性を見出しているのかも気になるところ。みなさんも直近の事例をチェックしながら、次なるDX施策の参考にしてみてください。
DX新時代のコミュニケーション手段を各社模索中!
10月に入り、夏の暑さがようやく落ち着いてきました。しかし、新型コロナウイルスの感染者数は現在に至っても増減を繰り返し続けています。
そんな中、製薬会社各社は従来のマーケティング方式でMRの活動量を回復させるということから発想を転換し、新たなデジタル対応に目が向けられ始めているようです。
例えば、直接訪問に代わるオンラインコミュニケーションに「デジタルならでは」の機能をプラスした新しい活用方法を検討するなど、それぞれが工夫を重ねている印象です。 以下から各社の8~9月の取り組みを見ながら振り返っていきましょう。
◆MR・MS活動◆
withコロナ時代となり、これまでのMRの働き方や業務の在り方にも変化が生じています。
新たなコミュニケーション手段としてツールを活用したり、デジタルのみでの情報提供など、生活様式に合わせたマーケティング活動へと踏み出し始めています。
医師の印象に残った情報チャネル MRが「1位」奪取するもコロナ前に戻らず HPは平時の6割、GPは9割(インテージヘルスケア)
インテージヘルスケアが提供する調査データ「Impact Track」によると、MR活動インパクト(医師が印象に残った割合)は、新型コロナ流行前(20年1月)を100%とした場合、7月度は75%となり、コロナ流行前の水準に達しないことがわかった。MRは医師の印象に最も残る情報チャネルではあるが、デジタル化などで活動の変化は避けられない模様。
エムスリー株式会社、新たな医師コミュニケーションプラットフォームを武田薬品工業と構築~my MR君をベースに新規コミュニケーション機能を開発~
エムスリー株式会社が運営する「m3.com」は、日本の医師の9割以上にあたる29万人以上が登録する医療従事者専門サイト。今回、新たな医師コミュニケーションプラットフォームを武田薬品工業と構築。医師とMRとの非対面コミュニケーションが加速する中、コミュニケーションチャネルの拡充を通じ、オフラインとオンラインを組み合わせた医師とのコミュニケーションの深化を目指していく。
中外製薬、MRを中心とする約2,400名にワークスモバイルジャパンの「LINE WORKS」を導入
ビジネス版LINE「LINE WORKS」を中外製薬が導入し、MRをはじめとした約2,400名の社員が、医療関係者との双方向コミュニケーションを行うための新たなツールとして利用を開始。非対面コミュニケーションをさらに円滑化する。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社、がん領域を対象とする医療従事者向けLINE公式アカウントを開設
LINE公式アカウントの開設により、医療従事者は情報入手のチャネル選択肢が増えることになる。知りたい情報をWEBで検索することなく、手軽にタイムリーに入手できる。さらに、担当MRの訪問をリクエストすることも可能で、今後は、がん領域に加え他の疾患領域に対応できるようサービスの拡充を図る予定。
大日本住友・小田切本部長、「リモート専任MR」のみでラツーダの病院採用を実現 iMRで聖域にメス
大日本住友・小田切本部長は、医師の多様なニーズに柔軟に対応できる多くの手段を持つことを強調し、「iMRならではの顧客は存在する」としている。また、実際にiMRを導入後、リピート率も8割という高さをキープできている。さらに、iMRによる活動は、今年10月に長期処方が解禁される統合失調症薬・ロナセンテープに広げる計画だという。
協和キリン、MR活動にデジタルプラットフォーム導入 コロナ禍における情報提供で社内議論も加速
協和キリンは、9月16日にWeb会議システムを通じたメディア懇談会(オンラインコミュニケーションデイ)を開催。コロナ禍の中で医療機関側の訪問自粛要請は続いており、リモートによる情報提供活動にも着手している。石丸CSR推進部長は、「リアルとバーチャルの組み合わせが求められている」という認識のもと、デジタル活用の議論がさらに加速していることを明らかにした。
◆新型コロナウイルスへの取り組み◆
新型コロナウイルスの流行期から暫く時間が経ち、製薬会社は働き方の変化だけではなく、ワクチン研究も進んでいます。今後は、ワクチンの供給に向けた課題も出てくることでしょう。
また、現在も日常生活の中での感染リスクはゼロにはならないため、ワクチンが医療機関へスムーズに流通されるかどうかは気になるところでもあります。
日本製薬工業協会、「新型コロナウイルスワクチンの早期実現・安定的な予防接種体制実現に向けて」(PDF)
日本製薬工業協会は、新型コロナウイルスワクチンを国民が混乱なく予防接種を受けられるために必要な施策などを取りまとめて発表した。生産体制整備、承認審査、流通など実務的な課題の中には、MRの直接訪問も取り上げられ、代替手段にはWEB面談が推奨されている。
◆新サービス◆
DXの一環として既存のシステムの機能を強化したり、次世代のAIなども開発されています。
MRの営業活動支援ツールのカスタマイズや、登録ユーザーが多いアプリケーションからの情報提供を可能にすることで、より簡便なコミュニケーションを可能にしているようです。
Interactive-Pro、汎用ウェブ会議システム(Microsoft Teams、Zoom 等)との親和性を大幅に強化し、非対面でのディテール活動を強力にサポート(PDF)
これまでのウェブ会議システムを用いたリモートでのディテール(ウェブ面談、ウェブ説明会)では実現困難とされていた活動を、IT が不得手な MR でも通常の対面営業に匹敵するレベルで実施することを可能にした。
CAC、ポストコロナ時代の製薬企業の情報提供活動を支援するシステム「Promotion Mail」を提供開始
MRの活動が従来のように戻ることはないと考えられている中、製薬企業のデジタルプロモーションの活用ニーズに応える新システムとして開発された。どのMRが誰にプロモーションメールを送信したのか、その開封タイミングとコンテンツ閲覧状況を取得することで医療従事者にとっての情報提供のベストタイムや求める情報を把握することができる。
SQREEM Japan合同会社、独自AI技術の製薬特化型メディカルプラットフォーム「モノリス」を発表
「モノリス」は独自のAI技術を搭載し、30億人分の医師や患者の行動データを分析できる次世代のAI技術。クッキーなどの個人情報を一切使用せず、医師や患者のインサイト行動分析から実際のコミュニケーションまでのエンドツーエンドのサービスを提供することができるという。
◆新会社・新組織設立・事業計画◆
他社との資本提携や新組織創設で自社の強みを再発掘している企業もありました。
デジタルマーケティングの組織を新たに設立している企業、他社のコミュニケーションプラットフォームを取り入れるなど、デジタルを駆使したビジネス展開がみられます。
旭化成ファーマ マーケ本部に「デジタルマーケティングプロジェクト」新設 営業活動のデジタル化推進
医薬マーケティング本部に新組織として9月に新設された。MR活動を補完するデジタルツールの有効活用や医療従事者向けのデジタルコンテンツも検討するなど、デジタルの活用について注力していく。
東邦HD エンタッチ株式会社との資本提携についてのお知らせ(PDF)
東邦ホールディングスは、リモートディテーリングサービスを提供するエンタッチと資本提携したことを発表。これによってMRのディテーリング減少の問題解決や、現場の医師への情報の効率的な提供を目指す。
⼤⽇本住友製薬株式会社 記者懇談会・社⻑会⾒(2020年8⽉6⽇)(PDF)
大日本住友製薬の野村博社長は、オンライン記者懇談会・社長会見にて国内営業の方針を発表。精神神経(CNS)と糖尿病の2領域での売上拡大をDXと共に進め、患者用アプリや介護用デジタル機器の開発にも注力していく。
次のDX戦略から目が離せない!
今回も「単なるデジタル化」を超えた各社のデジタル化の未来が感じられたのではないでしょうか。
これまでの常識が常識ではなくなる…そんなことがどの業界でも起きている現在。医療業界でも、今までに予想もしていなかった新しいサービスが誕生するかもしれません。 新たな生活様式の中で起きている変化を感じつつ、今後の医療業界の動きにも注目していきましょう。