製薬会社で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)事例まとめ(2021年2月~3月)

DX事例まとめ

2021.04.14

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は2021年2月~3月の製薬会社の動きをまとめています。

引き続き、MRの活動はデジタル対応ありきとなっていますが、オールデジタルという形ではなく、リアルとリモートのハイブリッド型を目指している企業が多い印象です。また、AIによるデータ解析技術やデジタルサービスの連携など、デジタル化の次のステップへと踏み込んでいる企業も見受けられました。 DXを実現し始めている製薬企業の動きをぜひ、ご覧ください。

コロナ禍以降のMRは、「リアル」と「デジタル」を使い分けられる「ハイブリッド」な人材であること!

製薬業界全体のニュースとしては、ワクチン関連の話題が毎日聞かれるようになりましたが、その一方で、デジタル化もどんどん進んでいます。3月まで緊急事態宣言が続いていることもあり、MRの活動はリモートが中心となり、各社のインターネットコンテンツなども以前に比べて有効活用されている事が数字でも明らかになっています。しかし、過去一年程は「デジタル対応が何より優先」という潮流ではあったものの、現在、各製薬企業の中ではリモート対応で完結することを必ずしも目指している訳では無いようです。デジタルの方が効率の良いパーツというのを切り分けることで、医療従事者とのより良い関係を構築し、デジタルとリアルが共存する理想的なMRの活動や医療体制が実現できるのかもしれません。

◆MR活動◆

1月より都市部などで2回目の緊急事態宣言が発出されたことでMRのリモート面談が増え、医療関係者側もホームページなどのインターネットコンテンツの情報発信やLINE WORKSを導入し、柔軟にデジタル化への対応が進んでいる事が判明しました。

ミクスOnline:ミクス調査・MR意識調査2021年版 MRが選ぶ「リモート面談」成功企業 1位武田薬品、2位ファイザー

ミクス編集部が、現役MRを対象に「リモート面談」で成功していると思う製薬企業名を調査。第1位が武田薬品、第2位がファイザー、第3位が日本イーライリリーという結果に。また、「デジタルコンテンツの活用が上手い製薬企業」でも、第1位は武田薬品、第2位にファイザーが選ばれた。コロナ禍の時代となり、MRにとっての「リモート面談」、「デジタルコンテンツ」、「デジタルツール」(メール、自社サイト、3rd Party、Web講演会など)の活用はもはや三種の神器になってきたとみている。

しかし、リモート面談だけで情報提供完結を完結させるというより、リアルとリモートの「ハイブリッド型」の活動を目指す企業の方が多い。その一方で、医療者へのコンタクト手段としてリード(顧客のメールアドレス等)の獲得に苦戦する企業も多く、リアル活動に慣れたMR側のマインドセットをいかに進めるかが課題となっている。

日刊薬業:対面ディテールが前月比1~2割減、オンラインに変更 インテージヘルスケアImpact Track1月度

インテージヘルスケアの医療用医薬品市場調査によると、1月はMRによる医療機関での説明が20年12月比で1~2割減少したことが分かった。医師との対面ディテールは、16.3%の減少、MRの院内説明会は17.5%減った。その一方で、MRと医師のオンライン面談は21.5%増加。この時期は、都市部を中心に2度目の緊急事態宣言が出ていた時期となる。それによって、オンライン経由の情報発信は増加、Web講演会は全社合計で107万2840(前月比:5.3%増、前年同月比:56.8%増)。企業ホームページなどのインターネットによる情報提供の合計値は、366万424(前月比:4.7%増、前年同月比:47.6%増)であった。

日刊薬業:武田薬品、ウェブサイトでMRの呼び出し可能に 医療者向けチャットボックス設置、機能追加しニーズ対応

武田薬品工業株式会社は、国内医療関係者向けのWEBサイト「武田メディカルサイト」の機能を強化。チャットボックス機能「タケダコンシェルジュ」を設置し、医療関係者の情報検索時にサイト上をアテンドする。さらに、担当MRを呼び出す機能も追加し、設置後一か月で運用実績も上がっているという。約600件の使用実績があり、その内約30件がMRへの相談、MRとのアポイントにつながったケースも約15件あった。また、これらの機能改修は社内でデジタル技術の推移役を果たす「デジタルリード」の構想会議から生まれ、アイデアの着想~実装までのスピードも「異常な速さ」と伝えられており、さらなる機能追加も検討中という。

中外製薬・嶋内部長 コロナ禍のLINE WORKS活用 医療者の信頼を得る「現場のMRこそヒーローだ!」

2月18日、ワークスモバイルジャパン主催の「2021 LINE WORKS DAY」がオンラインで開催された。昨年7月にLINE WORKSをMRなど社員2400人に導入した中外製薬の嶋内隆人営業本部カスタマーソリューション部長が対談形式で登壇、LINE WORKS活用事例を報告した。嶋内部長は、10年来同社がサポートしてきた医療者によるチーム医療のワークショップを、MRがLINE WORKSを使って支援する取り組みで一役買っていることを紹介。こうした取り組みを通じて医療者の信頼を得ていることに対し「現場のMRこそヒーローだ!」と強調した。また、導入の直後は、1か月間のトレーニング期間を設けてルール作りやFAQの整備などを進めたと語る。例えば、夕方5時半以降や休日の問い合わせへ対応のルール化や社内にLINE WORKSの専用サイトを立ち上げるなどの対応を取ったという。実走後は、LINE WORLSによるコミュニケーションを医師側に広める活動なども行い、成功実績を積み上げることでMR側のモチベーションのアップにつながっているという。

アッヴィ、医療関係者との新たなコミュニケーションツールとして LINE WORKS を導入(PDF)

2月より、アッヴィ合同会社はMRのコミュニケーションツールとしてLINE WORKS を導入した。まずは、面談日時に関するコミュニケーションを中心に活用していくという。社長のジェームス・フェリシアーノ氏は、医療関係者のニーズに応じてさまざまなチャネルを組み合わせたオムニチャネルの構築を目指すと語り、新しいチャネルも積極的に導入、患者さんおよび医療関係者に貢献出来るような情報提供環境の整備に尽力するという。

◆新サービス◆

オンライン診療とオンライン服薬指導の連携や、リモートMR、AIを活用したチャットボットなど、デジタルを取り入れた医療環境がスタンダードなものとして広まりつつあるようです。また、8月1日に施行される添付文書の電子化への対策も進んでおり、医療現場もデジタルを取り入れる事によって変わり始めています。しかし、3月から運用開始が予定されていたマイナンバーカードの健康保険証利⽤についてはプレ運用の遅れやシステムのエラーが起きており、延期が発表されています。

日医工株式会社:「kakari for Clinic」と「kakari」との連携機能の開発について(PDF)

日医工株式会社とメドピア株式会社は、かかりつけクリニック支援サービス「kakari for Clinic」とかかりつけ薬局化支援サービス「kakari」を連携させた新サービスを今春から開始すると発表した。この連携により、「kakari for Clinic」でオンライン診療を受診した患者は、「kakari」アプリ上でスムーズにオンライン服薬指導を受けることができる。連携開始に先駆けて「kakari for Clinic」のオンライン診療支援機能を段階的に強化し、非対面での決済を可能とする決済機能のリリースを2月中旬に、保険証情報や領収書・診療報酬明細書のデータ送付をより簡単に行える「保険証画像登録機能」、「領収書・診療報酬明細書添付機能」が順次リリースされる予定。

伊藤忠 医薬品情報サイト「ヤクジエン」でリモートMRサービス開始 先発企業3社が利用

伊藤忠商事は2月から、同社の医薬品情報サイト「ヤクジエン」の新機能として、リモートMRサービスの提供を開始した。「ヤクジエン」は、国内で利用されている2万超の医療用医薬品の情報および副作用情報等が記載された医薬品の添付文書を常に最新情報で掲載し、医療介護専用SNS内の各患者が服薬している医薬品情報ページと連携している。リモートMRサービスの内容は、MRから直接話を聞きたいとの医療従事者の申し出を同サイト上で受け付けて製薬企業につなぎ、製薬企業のMRが情報提供をする。まずは、医師向けサービスとして始め、今後は利用対象を薬剤師に広げることを検討中。現時点では大手の先発品企業3社が同サービスを利用しており、2021年度中に同サービスの利用企業を10社まで増やしたい考え。

コグニティ株式会社:【プレスリリース】MRディテーリングの暗黙知を客観的にAIで見える化、 製薬企業19社のデータから行動変容を促す「COG-DTL」を新たにリリース 〜国内トップ30のうち8社に導入した、DX化事例を共有するウェビナーも開催〜

2月に、コミュニケーションのAI解析技術を持つコグニティ株式会社は、国内19社・3,000を超える製薬企業のデータを基に開発した、MRディテーリング(医薬品についての情報提供)の客観評価・質の向上を可能とする製薬企業特化型AIサービス「COG-DTL(コグ・ディテ)」の提供開始を発表した。ディテーリングの情報構成やヒアリング内容を分析し、第三者視点で変化を捉えることができ、同社が有するディテーリングの平均値と他MRの比較分析が可能なほか、ワークショップを通じてナレッジの定着と改善をサポートする。正式リリースは今年4月を予定している。

アムジェン株式会社:医療関係者向けの製品情報検索システムとしてAIチャットボット「AskAm(アスクアン)」の運用を開始

3月にアムジェン株式会社は、医療関係者向けのチャットボット「AskAm(アスクアン)」の運用を開始したこと発表。これによって、全製品の添付文書を中心とした製品基本情報が24時間365日、オンラインで検索できるようになった。「AskAm」は、木村情報技術株式会社が開発したIBM Watson日本語版を活用したAIシステムを搭載し、利用者の医療関係者が製品を選択して質問事項を入力すると、登録されたデータベースの中から質問に最も近い回答をするとともに、その質問に関連する情報も併せて提示される。問い合わせ窓口「メディカルインフォメーションセンター」や医療関係者向けサイトに加え、添付文書等に記載されている範囲の基本的な質問であれば、PCやスマートフォンを通じて、医療関係者への情報提供がさらに迅速にアクセスすることが可能になる。

日刊薬業:添文電子化へアプリ開発、「普及のカギはMR」 8月1日施行に向け日薬連、4月から先行運用

8月1日に施工される改正医薬品医療機器等法(薬機法)にて、添付文書の電子化を巡り、注意事項等の情報の閲覧に用いる符号(GS1コード)を読み取るための専用アプリの完成が近付いている。

日本製薬団体連合会などが共同開発を進め、機能の最終確認を経て仕上がれば、外箱に記載されたGS1コードから医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページ上の最新情報にアクセス可能な環境が整う。日刊薬業の取材で、日薬連安全性委員会の滝田諭委員長は、医療現場へのアプリ浸透の課題について「(その決め手になるのは)製薬各社のMRによる医療従事者への周知活動」と語った。 最新の情報を確実に閲覧できるようにするためには、PMDAのサイトにある医療用医薬品安全性情報掲載システムへの商品識別コード(GTIN)と添付文書番号のひも付け情報の登録が不可欠となっている。現時点で85%以上登録が登録されていると推定。5月には100%近くを目指す。滝田委員長は、会員企業に対して3月中の確実な登録を呼びかけている。

厚生労働省 第142回社会保障審議会医療保険部会 オンライン資格確認等システムについて(PDF)

2021年3⽉から本格運⽤するとされていたマイナンバーカードの健康保険証利⽤の延期が発表された。3月26日の社会保障審議会医療保険部会にて、遅くとも薬剤情報の閲覧開始を予定している10月までに本格運用が開始となる。3月4日からのプレ運用は500機関で開始予定であったが、3月22日時点で54機関となり、世界的な半導体不⾜によるパソコン調達の遅れや一部カードリーダーメーカーの生産遅れなどが発生していた。他にも、加入者データの不備による資格確認エラー、院内システムへの読み取りエラーなどが発生。システムの安定性等を検証しながら順次医療機関数を拡⼤し、ヒューマンエラーが起こりうることを前提にシステム的な対応を強化、データの精査を⾏う。

◆治療用アプリ◆

治療用のアプリもさまざまな疾病へ適用されつつあります。スマホアプリは、患者さん自身も普段から身近なツールとして使用しているスマートフォンだからこそ使いやすく、治療に対する心理的ハードルも下がるのかもしれません。また、禁煙治療用アプリを開発したキュアアップは、高血圧治療アプリの承認申請を目指しており、新しい治療法への道を開拓し続けている様子がうかがえます。

武田薬品工業株式会社 パーキンソン病患者さんを支援するための複数プロジェクトを開始 アプリケーションやポッドキャストを活用し、日常生活における運動のきっかけに

3月17日、武田薬品工業株式会社は、パーキンソン病の患者さんのQOLを向上することを目的にした、音楽を活用して日常生活における運動のきっかけにしてもらうためのアプリケーション「Parkinsounds(パーキンサウンズ)」の提供開始を発表。アプリは無料でスマートフォンへダウンロードでき、音楽に一定のビートをのせることでパーキンソン病患者さんの歩行や体を動かすきっかけにすることができる。ニューロサイエンス領域は注力する5つの主要ビジネスエリアの一つでもあり、今回の取り組みは患者の日常生活を包括的に支援することが目的の、ペイシェント・ファースト・プログラムの一環。今後も患者を支援する革新的なツールを検討していく予定。

キュア・アップの高血圧治療アプリ、P3試験で有効性 年内に承認申請へ

株式会社CureApp(キュアアップ)は、3月16日に自治医科大内科学講座循環器内科学部門の苅尾七臣教授らと共同研究してきた高血圧症の治療アプリについて、国内の臨床第3相試験を終了、主要評価項目である「24時間の平均収縮期血圧の変化量」で統計学的に有意な改善が示されたと発表した。 今回の結果を基に2021年中に承認申請を行う予定で、22年度中の保険収載を目指す。

◆新会社・新組織設立・事業計画・業務提携◆

製薬企業各社は、他社との協業やデジタル推進の強化など、医療をさまざまな面からサポートする方向へと舵を切っているようです。特にMRの営業スタイルはリアル+デジタルの体制へと変革が求められているため、サポート体制を整えながら時代に合ったスタイルへと柔軟に対応することが鍵となるようです。

協和キリン株式会社:「2021-2025年中期経営計画」医療にとどまらないLife-changingな価値の創出へ(PDF)

2月4日、2021年~25年の5か年の新中期経営計画を発表。宮本昌志社長は、この日に開いたウェブ会見で、2030年に向けた新ビジョンと、新ビジョンの前半5年間に取り組む施策や戦略をまとめた新中計を発表した。「Life-changingな価値を実現する人材、基盤の強化は重点投資ポイント」と述べ、DXと新たな価値創造プロジェクトのひとつとして、日本の営業本部に「営業デジタル推進室」を4月1日付で新設することを紹介。数値目標については、「ROE10%以上」「5年間の平均成長率10%以上」「研究開発費率18~20%」「25年度のコア営業利益25%以上」「40%を目処に継続増配」とした。投資計画の内訳は、研究開発投資に約4000億円、デジタル基盤や安定供給体制などの設備投資としては約1000億円とのこと。

SCSK株式会社:医療データを高度化し、ヘルスケア業界のDXを推進~SCSKとエンサイスが協業開始~

2月16日、SCSK株式会社は、エンサイス株式会社とITソリューションおよびサービスの企画・開発に向けた業務提携を行ったと発表した。その第一歩として、SCSKはMR向けの営業支援ソリューション「MR2GO」のCRM・SFA機能に蓄積されるデータと、エンサイスの医薬品販売データを一体化したレポートテンプレートの開発を企画している。製品シェアを掛け合わせた分析が「MR2GO」上で実現分析されることにより、営業戦略の立案と情報提供活動が可能になる。また、ユーザーの要望に合わせた細かなカスタマイズなど、柔軟な対応が可能な仕組み・体制を準備しているという。今後の展開としては、MRの気づきを促すアラート表示や、自社ポジションをふまえて最適な情報提供活動をMRにアドバイスするレコメンデーション機能の追加も予定している。

株式会社三和化学研究所:営業本部に「デジタル営業推進部」を新設 リアル+デジタルのHybrid型MRの育成など、デジタル対応を強化(PDF)

株式会社三和化学研究所は、4日1日付けの組織変更にて営業本部にデジタル営業推進部を新設することを発表した。リアルとデジタルを融合させたHybrid型MRの育成、リモートMRによる新たな営業スタイルの確立や、デジタルコンテンツの拡充、現場サポート体制を強化する狙い。同時に新設されたマーケティング部には、医療環境や顧客ニーズの変化、競合品市場状況などを分析・予測する機能を強化し、市場戦略・製品戦略に反映させる。さらに、効率的な営業体制構築のため、現行の14支店体制から10支店体制へ再編される。

デジタルツールのアップデートでMR活動を効率化! 新機能の追加が相次ぐ

各製薬企業においても、デジタルを推進する流れはスタンダードになっています。また、既にリリースされていたデジタルツールが機能強化されて再リリースしていることからも、デジタル化の次のステップへと進んでいる様子がうかがえました。コミュニケーションのAI解析技術の紹介もありましたが、今後はデジタル化によって集積されたデータなどの詳細な解析が進み、MR活動の効率化を促す材料となるでしょう。

医療業界のデジタル化は遅いと言われていますが、ほんの数年前には考えられなかったほどに新しいサービスが誕生しています。デジタルの力によって、MR不足や医療従事者の過重労働の問題を解決へと導く未来に期待せずにいられません。
今後も各社のDXの最新事例をお伝えして行きます。

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