
私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。テーマは、「日本の医療における構造的問題」について、増加する「直美」の医師の話題に絡めてお届けしていきます。ぜひ、ご覧ください。
勉強会の参加者

2018年中途入社
営業
佐塚さん

2022年新卒入社
Webディレクター
清水さん

2024年新卒入社
ディレクター
森田さん

2017年中途入社
ディレクター
嶋田さん

2023年中途入社
プロデューサー
内海さん
直接、美容クリニックに就職する『直美』の医師が激増!
それでは鈴木さん、よろしくお願いします。
出席者は僕と、嶋さん、内海さん、清水さん、森田さんです
よろしくお願いします。早速質問ですが、みなさん『直美(チョクビ)』というのを聞いたことはありますか? “ナオミ”と読みそうですが、“チョクビ”です。この言葉、ご存知ですか?
“ナオミ”と読んでしまっていました(笑)
そうですよね(笑)。あっ、内海さんは手を挙げていらっしゃいますね。
ちなみに、『直美』はどこで知りました?
医師の偏在問題に絡む問題としてニュースで聞いたことがありますね
ありがとうございます。では、初めて聞く方のために説明しましょう。その前に、認識を揃えておいた方が良いと思うんですが、みなさんは、お医者さんがどういう経路を経てお医者さんになるのかご存知ですか?
じゃあ森田さん。お医者さんになるために何が必要でしょうか?
免許みたいな……医師免許ですか?
そう。医師免許が必要ですね。
いつどんなタイミングで取るかご存知ですか?
研修医を終えた過程とか?そんなイメージです
私は逆で、研修医になっている人は医師免許を持っていて……
だから、大学卒業のタイミングだと思っていました
お二人ともありがとうございます。
まず、医師免許と研修医の関係で言えば、医師免許を取るのが先。お医者さんになるためには医大、もしくは大学の医学部に入って行かなきゃならない。これは大丈夫ですよね。で、医学部の卒業資格を取るには学部の4年間とその先の大学院で2年間、計6年間が必要。
この卒業のタイミングで、医師免許を取得するための試験を受けてお医者さんになる。基本的には殆どの方が受かるんですけどね。そして、先ほど森田さんがおっしゃっていた研修医。
みなさんは、研修医って何をどのくらいするものだというイメージでしょう?
当てずっぽうで良いですよ(笑)。あ、佐塚さんが指を2本立てていますね。
2年間、ということですね。他の方はどうです?
3年間くらいのイメージです
私は完全にドラマのイメージなんですけど(笑)。1年間ぐらいのイメージかな?
では、答えを言いますね。答えは……基本的には5年ぐらい。
この研修というのが、初期研修と後期研修というのに分かれるんです。初期は2年間で、医師免許を取ったらすぐ初期研修に入るんですね。
この2年間は何をするかっていうと、いわゆる診療科のローテーションです。
お医者さんとして臨床に携わるうえで、色々な診療科の基本的な部分を知っていなければいけない……ということで、内科だけじゃなく、小児科、耳鼻科、皮膚科etc.さまざまな診療科をぐるぐる回る必要があるんですね。
で、各科のお医者さんの仕事はどうなっているのかというのを実体験する、と。
それが終わったら3年くらいの後期研修をやる。そこで専門とする診療科を選んでいきます。なので、泌尿器科医を目指すなら泌尿器科。眼科医なら眼科。消化器外科医なら外科を中心にやると。大学に所属する方なら、医局に所属し始める時期になります。日本のお医者さんはそんな感じで、自分の専門領域を決めていくという格好になっているんですね。
で、最初の『直美』の話に戻りましょう。
一人前のお医者さんになるには今説明したような流れになっているのですが、『直美』というのはどういうことかというと、卒業して初期研修を終えた後すぐに直接、美容クリニックに就職すること。
それを『直美』と呼びます
給料の差は歴然!『直美』医師の年収とは?

この『直美』が、最近問題になっているということなんですが……
内海さんが先ほどおっしゃっていたように、お医者さんの偏在の問題でも言われているのが、外科とか産婦人科とか救急とか、けっこう激しい労働環境の診療科のなり手が少なくなってきてしまっていて。
その代わりに皮膚科とか眼科とか、患者さんが亡くなりにくいような診療科……
こんな事を言うと怒られてしまいそうですが、ちょっと緩やかに働ける診療科の方が近年人気になっているのです。
そういった問題がある中で、先ほどの後期研修を受けずに初期研修が終わったらすぐに美容クリニックに就職してしまう方が、年間200名位はいるだろうと推定されているんですね。お医者さんになる方は、ざっくり言えば年間1万人ぐらいいると思っていてください。
なので、全体の2%ぐらいですね。少なく聞こえるかもしれませんが、200名ですから医学部2校分の学生が美容クリニックへ就職してしまうぐらいのインパクトがあります。
……ということで、まずは『直美』って何?っていうことについて説明しましたが、みなさんから何か質問や思うことがあれば言ってください。
あっ、嶋田さん、どうぞ
先日、うちの家内の頭に粉瘤ができまして。それで病院に行ったら『皮膚科』か『形成外科』に行けっていうことになって。
そこで、『形成』で調べると『美容形成』があるんですが、そこは絶対に行かないでね!と言われたんですよ(笑)。これって何か関係があるのかなと
ありがとうございます。すごく大事なポイントを出していただきました(笑)。
『形成外科』というのは、保険の効くれっきとした診療科なんですけど、
『美容形成』とか『美容整形』というのは自由診療のビジネス。
ここはちゃんと区別した方が良い……っていう話は、また後でしていきましょう。森田さんや清水さんはどうですか?お友達で美容整形をやったことがある方がいるとか……
プチ整形はいますねぇ
私が実際に美容整形やったことがあって。それこそ、二重整形をやったことがあります
あまり立ち入ったことを聞くのもなんですけど、それはいわゆる美容整形クリニック?
そうですね
先ほど嶋田さんから出た、奥様の粉瘤の治療は保険診療ですが、二重整形などをするいわゆる美容目的の手術をする美容整形クリニックは基本的には自由診療で保険は効きません。
『直美』は卒業後、そういう自由診療の美容クリニックにいきなり行ってしまうというお話です。で、これは色々な意味で問題なのですが、その前に、なぜ、そうなるのかを考えてみましょう。昔はそんなことはなかったんですけれど、特にこの5年ぐらいの間で変わってきている事象だと思います。
なぜだと思いますか?
純粋に儲かるからとか……違います?
生命に関わる治療では無いから、医療行為を行うハードルが低いとか?
おぉ〜、それは面白い観点ですね!
流行っているというか、流行の問題もあるのかなと。
昔より美容整形を特別視しなくなっていると思うんです。TVとかでも開業医とか、カリスマ医師として出てくる方なんかもいらっしゃるし……
ありがとうございます。みなさんの意見、全部合っています。まず、医師側のニーズは、佐塚さんがおっしゃる通りお金の問題です。
『直美』なら、いきなり年収2〜3,000万円が確約されるんです。実は『直美』ではない病院のお医者さんというのは、みなさんが思っている以上に薄給です。
例えば研修医なんて、年収4〜500万です。教授になっても1,000万円出ないことも。教授って、普通の会社でいったら社長クラスですよね。
だったら数千万円位あっても当然だと思っちゃうと思います。でも、1,000万円出ない教授職というのはザラにあるんですよね。なので、病院の先生のお仕事というのは普通の仕事だけでは全然儲からないというのが前提としてあります。
でも、そうは言っても、先生達はもう少し良い暮らしをしているのでは?と思う方もいらっしゃると思いますけど、実は自分が常勤で勤務している病院以外の病院にアルバイトをしに行くことがあるんです。それでバイト先の他のクリニックに行ってガツッと稼ぐとか(笑)。そういうのを合わせて辻褄が合うというのが病院の先生達の懐事情なんですよ。
とはいえ、美容整形クリニックに勤めているような年収にはなかなかならないし、あともう1つ全然違うのがQOL(Quality Of Life)ですよね
『直美』に絡む医師自身のQOL!

2024年の4月から医療業界がてんやわんやになっているのが、医師の働き方改革。みなさんも会社員なので馴染みのある言葉かと思いますが、これがついに医療業界に持ち込まれたんです。それまでは病院の先生達は、あり得ない労働条件で働いていたんですね。夜勤やら当直やらをガンガンやって、過労死レベルの働き方が当たり前みたいな。研究なんかは、自己研鑽の時間として勤務時間に入らなかったり。それだって上司に言われてやっていたりするわけなのですが(笑)。
そんな感じで、兎に角QOLはめちゃくちゃ低いわけですね。そういう意味でも美容整形クリニックは全く違う。土日もバッチリ休めます!残業もほぼありません!
それで年収2〜3,000万円を確約されるとしたら、みなさんはどうですか?
もし、自分の初期研修が終わった時、大体26か27歳くらいでそんな条件で転職できるとしたらどうします?目の前にそんな人参がぶら下がっていたら……
転職します!
……もちろん自分が持っているスキルだったり、やりたいかどうかについても考えますけど
考えるまでもなく、しますよね(笑)。そう考える人がたくさん出てきたということで、今日のお話になっています。ここまでが、医師側から見た事情です。それに対し、美容クリニック側の事情もあります。
業界全体の需要が伸びていること、美容整形に対する忌避感が無くなってきている感もありますが、詳しくは後半でお話していきましょう
―― 前半は「直美」を目指す医師側の事情についてお話してきましたが一旦ここまでとなります。
後半では、もう一方の美容クリニック側の事情について深堀していきます。続きも楽しみにお待ちください。
この記事の担当者

佐塚 亮/Satsuka Ryo
職種:sales
入社年:2020年
経歴:大手スポーツメーカにて店舗sales,エリアマネージメント業務を担当。のちWEB制作会社にてWEBサイトの提案からディレクションをこなし、コンサルタントとしてサイト立ち上げ後の売上向上まで支援。その後2020年にメンバーズへ入社。主にクライアントからのヒアリング及び検証データを基に要件定義を行い、サイトの構築運用を実施。定常的に支援サポートを行う。クライアントはもちろんエンドユーザーの立場・視点に立ち、問題抽出から改善案の立案までを手がける