【プロデューサーインタビュー:顧客理解 前編】現場を知る大切さを実感! 介護支援サービスの販路拡大時代

インタビュー

公開日:2024.04.30
更新日:2024.05.05

対面重視傾向のこれまでの医療業界
顧客となる医療・介護関係者の方々などを理解するために実践したこととは

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回からプロデューサー内海篤人(ウチウミ アツト)さんのインタビューを新連載としてお届けしていきます。第1回目のテーマは「顧客理解編」の前編です。これまでのお仕事を通じて顧客となる医療・介護関係者の方々などを理解するためにやってきたことについて当時を振り返りつつ語ってもらいました。ぜひご覧ください。

医師会の先生や医療従事者の皆さんとの対話で顧客理解を深めた日々

―― 今回より内海さんのインタビューをシリーズ化していきますので、よろしくお願いします! 最初は、これまでのお仕事を通じて顧客に対して理解を深めることがどれだけ大切なのか、「顧客理解」の観点でお話しいただければと思います。

内海さん「分かりました。よろしくお願いします。じゃあ、過去から遡って話していきましょう。僕も前回の自己紹介のインタビューで話したように、この業界に来る頃に親ががんに罹ってしまったので、がんセンターの方とお話をする程度で、医療や介護業界の知識は一般の方と同じくらいしかありませんでした。

その後に転職をして地域包括ケアに関する領域の事業を手掛ける会社にカスタマーサクセスのディレクターとして入社しました。そこで、医療従事者・介護従事者・患者さんを繋げる専用のSNSを作っていて、サービスに関して問い合わせがあった際に副社長と一緒に同席をしながら説明していたことが顧客理解について考え始める良い経験になりました」

―― 具体的にはどのような感じだったのでしょう?

内海さん「この会社では営業のような業務としてサービスの説明を行っており、大きく2種類ありました。問い合わせがあった医師会様に対してご説明に伺うパターンと、もう1つは、すでに導入いただいている施設様へのご説明ですね。僕は、その中でも医師会の先生によく話をしに行きました。医療業界は対面を重視する傾向がありますから対面で話をしに行くことが多かったですね。

それに、当時はまだ2018年~2019年だったので新型コロナウイルスが流行する前ということもありましたし。そこで、僕は医師会の先生などにサービスの説明として『地域連携ができるサービスです』とか『国の方針はこうですよ』という事も含めてお話をするんです。

そこで『じゃあ、導入しよう』という事になると地域連携のサービスなので、医師会に所属している先生がいる医療機関や関連する訪問看護ステーション、当然ながら関係のある介護施設の方などを交えてさらに話をすることになります。

2時間ぐらい時間を使って使い方やデモンストレーションに参加してもらったり、質疑応答にも半分くらいの時間を割きました。参加される方はドクター、看護師、事務長、訪問看護ステーションの方々、ケアマネージャーさんや介護ヘルパーさんの方々を含めて幅広く話をしていましたね」

―― 地域包括ケアに関するサービスとなると、そんなに関わる方がいらっしゃるんですね。

内海さん「ちなみに大手の病院では事務長さんと話をする事も無いわけではないのですが、大きな病院は在宅に関わる診療科があるので、そこの医師と話をしていましたね。僕はドクターの方と話をする機会がどうしても多くなるのですが。

また、ドクターの方と話をしていて感じたのは、医師というのはやはり体力勝負であるという部分もあるのでものすごく体力がある方が多い印象です(笑)。もちろん、病院に勤務される先生、開業医の先生、それぞれ大変なことが違う部分があるとは思っています。

開業医の先生であれば、診察以外にも経営判断であったり、採用も担当しなければならないですよね。病院に勤務されている先生は当直もあるし、さらに当直中の緊急手術があったり、論文を書かなければならなかったり……。

僕が直接不満を聞くことはそれほどなかったのですが、もうじき医師の働き方改革の新制度が施行されますし(インタビュー時は2024年3月)、やはり大変であることは予測できますよね。あとは、介護用おむつの販売促進を大手製紙メーカーさんと一緒にやっていた時の話ですが……」

リリース後まで可視化できなかった医療・介護現場の実情

リリース後まで可視化できなかった医療・介護現場の実情

内海さん「この時、簡単な質問に答えるだけで最適な介護用おむつを選べるという排泄ケア支援アプリを提供していました。前回のインタビューもお話しましたが、業務用とドラッグストアで売っている介護用おむつは全く同じではないのですが、一般の方の視点で考えると介護用おむつについてはメーカーごとの性能の差の部分は殆ど区別がつきにくいと思います。

なので、この排泄ケア支援アプリを使うことによって業務用のおむつ選び情報を引き継いで在宅介護になった時も同様のケアが出来るようにしたり、おむつの“あて方”のガイド機能や、使っているおむつが自宅周辺のどのお店で利用されているかを調べられる機能も搭載していました。

介護をしている方でないとなかなか調べる事がないと思うのですが、介護用おむつの使い方には尿漏れパッドと一緒に使うタイプがあったり、履くタイプのおむつでも回数によって厚みが違ったりします。あとは、おむつを着けていることが目立ちにくいタイプの薄いものまで色々な種類があります」

―― 介護用おむつといっても、何を使うか、どう使うかという観点に立つと、考えなくてはならないものがたくさん出てくるものですね……。こういったアプリは利用者の方にとって喜ばれそうですね。

内海さん「しかしながら、アプリを開発する時には気付かなかった点がありまして。こういった介護用おむつは自治体の補助もあるし、特定のメーカーのものを利用者さんに選んでもらうのが難しいという話をケアマネージャーさんや介護ヘルパーさんの方からお聞きして、初めて現場レベルの実情を知ることになったんです。でも、当時は何も分からなかったわけですから、おむつのサンプルを持って飛び込み営業なんかもしましたね」

―― なんと、飛び込み営業ですか……!

内海さん「やりましたよ(笑)。1日10km位は歩いたかな……。頑張っていましたね。でも、その飛び込み先で『サンプルが余っちゃうから、そっちを利用者さんに渡しちゃうんだよね~』なんていうことを聞くこともありました(苦笑)。

その頃は出張も多く、遠い所なら愛媛県の今治市に行って話をしたことがあります。何もわからない状態から成果を求められていたので、本当に必死になって色々な営業を試していました。

ちなみにですが、利用することが想定される方々へ電話・メール・FAXを使ってご連絡もさせていただきましたが、そこで一番反応が良かったのがFAXだったんですよね」

―― 初めて聞きました! FAXが良いというのは、他の業界とは違う部分かもしれないですね。

内海さん「そうですね。出張は全国各地、遠い所なら宮崎や福岡、あとは名古屋などにも行っていたんですけどね(笑)。でも、結局のところ、このサービスはニッチすぎるものだったのかなと。とはいえ、ニッチではありましたが介護用おむつは大事なものであるので、ニッチなことが悪かったわけではないと思っています。

介護用おむつがあることで寝たきりの方の肌への刺激やかぶれを防いだり、感染症のリスクだって軽減できますし、適切に使用することで介護者の負担も軽減されます。

ただ、特定のメーカーの商品のみに絞ってしまうことでちょっと使い勝手が……というものになってしまいましたね。あとは、外部要因も大きかったなと。振り返るとそう思います」

―― 何が絡んでくるかという部分はこうして説明してもらうことで理解できますが、知識を持っていないと見えにくい部分のような気がします。

内海さん「他の業界でも言えることだと思いますが、資格だけを持っていても現場の事は現場に出ないと分かりづらいものなんだと実感しました。

それに、医療や介護に関わるシステムというのは地域単位で関わりを持つことになるので、病院や介護施設単独でどうにかできるものではないんです。当時扱っていた医療従事者・介護従事者・患者さんを繋げる専用のSNSサービスの方は、基本的には医師会から段階的なアプローチで進めていき、利用者を広めることができました。

一方で排泄ケア支援アプリは、特定の医療機関・介護施設という形で営業を掛けていたのですが、どちらかと言えば、その地方で拠点となる病院や自治体、例えば市役所の福祉課、地域包括支援センターなどから始めれば良かったのかなと。今であればそう思います」

―― 難しいですよね、誰もやっていないことを手掛けていたわけですし、介護ケア製品を手掛けているメーカーさんも気付かないかったことですから……。

病院でドクターを待ちながらMRとドクターとの関係性を体験

病院でドクターを待ちながらMRとドクターとの関係性を体験

内海さん「同業他社さんの似たようなサービスを使っていたという方にヒアリングしたことがあったのですが、同じように地域ぐるみで導入を検討しないとうまく活用できないという問題がありました。

そちらのサービスも意外と工数も掛かるものだったようで、だったら従来の電話やFAXを使った費用対効果が良い……ということだったようです。あとは、当時僕は製薬会社さんと治療支援ツールを開発したプロジェクトにも携わっていました。患者さんの体調管理をするようなツールです」

―― 2019年にアプリで治療支援を手掛けるというのはなかなか早いタイミングだったのでは……。

内海さん「チャレンジングな企業でしたし、製薬メーカーとしてはそうかもしれないですね。この時に病院には何度も通いましたので、そこで病院と製薬メーカーさんとの関係性を実際に体験して知ることになりました。

大学病院には教授の部屋がある建物があるのですが、その頃はまだコロナ禍の前でしたので、教授の部屋の前で一緒にアプリ開発をした製薬企業のMRさんとビシッと並んでドクターを待つ……なんていうこともありました。そこに他の製薬企業のMRさんもいらっしゃいましたね」

―― 緊張感の漂う場面が想像できますね(笑)。でも、MRさんとドクターの関係性は商品を売る人と買う人、という関係ならばもう少し対等であっても良いような気がするんですが、難しいのでしょうか……。

内海さん「うーん、難しいですね。薬剤を処方する権利は医師が持っているので、MRさんからすれば決裁者と話をしているようなものですから。だからって下手に出る必要は本来ないかもしれないですが、それをMRさんから強要するのも違いますしね(笑)。

それに、MRさんって、あくまでも『(薬を)売る人』ではないんですよ。基本的な流れをおおざっぱにお話しすると、医薬品の卸売業者というのがあって、そこが医薬品を仕入れて医療機関や薬局に流通させます。病院の薬剤部はそうして卸売業者から買うわけですね。クリニックのような薬剤部を持っていない医療機関の場合は、薬局が卸売業者から買うことになります。

じゃあ、MRの定義は何なのかっていうと、一般的にはMRは『Medical Representative=医薬情報担当者』と言いますよね。なので『こんな薬ができました、このような症状に対して処方できます』と説明をする役割です。

でも、MRはかなり制約が多い仕事です。当然法規制もありますし、省庁が出しているガイドライン、また、コード・オブ・プラクティスと呼ばれる自主規制がありますから」

―― 確かに、取り扱うものが医療用医薬品であれば慎重になるのも分かります。が、そうするとますますMRさんの役割って……と思ってしまいますね。

内海さん「なので、今は製薬業界や医療関係者の間でも“MR不要論”という議論がないわけではないんです。ですから今まさにMRさんの役割が変わって来るんじゃないかという段階ですね。

……なんて言いながらも、MRさんは徐々に減らす傾向があるように見えます。製薬会社の事業所の廃止や配置転換で注力する領域に人を集めるようにするとか、経験者のみでの採用にするとか、デジタル専任MRの話もありましたね」

―― 前半は一旦ここまでとなります。後半は引き続き、内海プロデューサーが医療・製薬に関するアプリのカスタマーサクセスに従事していた当時、顧客となる医療従事者の方々に関する顧客理解についてのお話です。楽しみにお待ちください。

この記事の担当者

医療や地域包括ケア領域のサービス開発経験を通して医療や介護の現場を知るプロデューサー 内海 篤人

内海 篤人/Uchiumi Atsuto
職種:プロデューサー
入社年:2023年
経歴:Web業界(企画・ディレクター)→ゲーム業界(プランナー・カスタマサポート)→ヘルステック企業(カスタマーサクセス・事業責任者)に従事