【プロデューサーインタビュー:顧客理解 後編】開業医を対象にしたアプリ&患者の不満解消で契約増加を実現!

社員インタビュー

公開日:2024.05.15
更新日:2024.07.25

医療・製薬関連の新サービス導入時に経験した苦労や工夫とは

プロデューサーの内海篤人(ウチウミ アツト)さんのインタビュー第2回目をお届けしていきます。
テーマは引き続き「顧客理解編」の後編です。医療・製薬に関するアプリのカスタマーサクセスに従事していた当時の医療従事者の方々に関しての顧客理解のお話です。
新たなサービスを導入する際にどのような苦労や工夫があったかが伝わる内容です。ぜひご覧ください。
前編はこちら

医療機関は契約の待ち時間が「年」単位!?

―― では、後編もよろしくお願いします!

前回の終盤では、MRの今後についてのお話やMRさんとドクターの関係をしましたが、内海さんのようにサービス開発をする企業の担当者とドクター、といった場合の関係性はどうなるのでしょう?これもやはりMRさんと同様でドクターが絶対、なのでしょうか?

内海さん「人によるかも知れないですね。基本は対等に見てくれたと記憶していますが、僕も関わった方が限られているので何とも言えない部分もあります(笑)。

それに、自分が携わったサービスの多くは医療機関で無料で使用することができたので、サービスの提供側がそこまでかしこまる必要もなかったというか。なので、大きなお金が動くシステムなどであればまた感覚が違うと思います。

あとは、病院のシステムは扱っているデータの性質上、外部システムと繋がないようにしているという部分もありますので、医療機関側が『ウチに合わせて欲しい』という感じで主導権を握る形になることがあるかな、という感じでしょうか。それから、サービスの契約という所にも医療機関ならではの性質があって」

―― 契約ですか。

内海さん「契約に関して『ちょっと待ってほしい』と言われて、それが年単位で待つということもあります(笑)。契約を締結できたので、じゃあ来月から……とはなりにくいんです。医療機関は既存のシステムを年単位で契約しているものもあったりするので、2年ぐらい待ったり。それに関係者も多かったりするところも待ち時間の長さに繋がりますね。

決定権を持つ医師や看護師さん、介護関係や地域と連携するならその周辺で関わる方々……。僕らから見えない所に思った以上に関係者の方がいらっしゃるんです。そこで契約を急ぎたいからと言ってこちらから催促していけるものでもないので、その内に立ち消えになってしまったり、塩漬けになってしまったり……」

―― 関係者が多いことで独自の苦労があるという事ですね。

内海さん「そうですね。なので、その後に転職したWeb問診のSaaS企業では、開業医に絞ったサービスだったので、スピード感はありましたね。当時は反響営業が多かったのですが、開業医の方に話をしに行くと、その場で契約を決めて下さる方もいらっしゃいましたね。

または、その場では契約がなかったとしても1週間ぐらいで導入を決めて下さったり。開業医の方は、イコール決裁者なので早かったです。

あとは、コロナ禍だったので特需もありました。この頃はお客さまからの問い合わせが多く、インバウンドで契約がどんどん増えましたね。広告もやっていましたし、それ以外にもFAX営業、DM、ウェビナーもやっていました」

ターゲットにマッチしたサービスで多くの医療機関と契約!

ターゲットにマッチしたサービスで多くの医療機関と契約!

―― あの頃、オンライン診療など対面する時間を減らしたり、無くすことができるサービスは次々にリリースされていましたね。

内海さん「あとは、基本的に開業医に絞ったサービスだったので、ターゲットに合わせてサービス内容も最適化されていました。1つの診療科で使う形、もしくは夫婦で経営しているクリニックの場合に問診票を分けて使えるような想定で設計されています。

でも、これが病院になってしまうと診療科によって情報に関して扱う方針が違っていたりで、ちょっと手間取る所もあるんです。しかも、僕が提供をしていたサービスでは、問診データは一か所に一覧として表示がされます。これも夫婦で経営しているクリニックのような医療機関であればそれ程ほど気になることはないようです。

でも、病院になってしまうとたくさんの診療科があって、それを一覧として扱うと大変になってしまいます。そんな理由もあったので、僕らは病院に対して積極的なアプローチはしていなかったですね。後は、支払いの形式にクレジットカードを使用していましたが、それが病院だと支払い用のクレジットカードを持っていなかったり、契約周りがクリニックよりも大変だったりというのもありました」

―― 経理や支払い周りでも大病院とクリニックのようなところで違いがあるとは……。

内海さん「そうなんです。なので、サービスの提供側としても難しい部分がありましたね。サービスの導入にあたっても、クリニックは導入後に1回話をしに行けば大抵の場合は終わりますが、病院だと関わる方も多くなるので難しいですね。この方に話をしたら、次はこの方、次はこの方、次は……となります」

―― やはりクリニックなどの方が相性の良いサービスなのですね。ちなみに、導入トラブルなどは全くないのでしょうか?

内海さん「いえいえ。新しいシステムを導入する時は、一般社会でも多いですが現場の方と上長の方で意思疎通が取れていない場合があったりしますよね。『こんなシステムを導入するなんて聞いていないぞ!』みたいな(笑)。それに、今までと異なる新しいシステムを入れる事になるので上手く立ち上がらなかったり……というのはありましたね。

あとは、組織内には一定の反対勢力というのも存在するので、そちらをどう説得するかなんていうのもあります。『このぐらいの患者数なら新システムは要らないだろう』みたいな声が上がることもありますから」

―― それって、説得のコツとかってあったりするのでしょうか……。

内海さん「うーん、これに関しては特別な事ってないと思うんです。もう、懇切丁寧に説明するしかない。操作や運用フローなんかはちゃんと説明して。
でも、それでも無理なら『とりあえず使ってみてください』と言ってなんとか触ってもらう。使ってもらわないと価値は感じ取ってもらえないですから」

患者の不満にダイレクトに働きかけたことも成功の要因!

―― でも、こういったWeb問診のようなものは医療機関も利用者さんも受け入れてもらいやすい時代なのでは?8割ぐらいは受け入れてくれていたりしませんか……?内海さんの体感としていかがでした?

内海さん「5割ぐらいでしょうか。これに関しては地域差もあると思います。政令指定都市や都市部は患者さんの数が多いですからね。当然、そういった場所であれば患者さんの奪い合いみたいな形になりますから、比較的受け入れてもらいやすいとは思います。

その一方で、地方の医療機関であればWeb問診を使わないであろう患者さんしか来ないようなところもあるんです。それと、診療科ですね。小児科や婦人科は受け入れてもらいやすい印象です。若い方が受診する診療科だったり、お子さんの親世代であれば、こちらも比較的若い世代、デジタルネイティブな方が多いからですね。予約と問診のシステムが連携しているので待ち時間を調整できたり、また問診票に表立って書きにくいことを書き込んでおけるという点でも良かったようですね。

あとは、小児科は〇ヶ月健診などでクリニックに行く機会も多いですし、その際にアプリのようなツールがあると便利だったりします。マイページ機能も搭載しているので、必要な情報を何度も繰り返して書き込む必要がないですし」

―― 診療科によって相性が良いというのも分かる気がします。お子さんは待つのが苦手ですしね。

内海さん「そういった点で言えば、医療に関する調査をしている日本医師会総合政策研究機構のワーキングペーパーに『第8回 日本の医療に関する意識調査(※)』というのがありまして。その中で、受けた医療の満足度という調査項目で一番低かったのが待ち時間なんです」

(※)参考:日本医師会総合政策研究機構:「第8回 日本の医療に関する意識調査」

―― ということは、医療を受ける方の不満にダイレクトに働きかけているアプリという事になりますね!

内海さん「お陰さまで。で、個人的に面白いと思ってるのが、自由診療や動物病院にも対応しているところでしょうか。ちなみに僕がこの会社を退職した後なんですが、ウチで飼っている猫を動物病院に連れて行った時にこのサービスを使いましたね」

―― “利用者”としてサービスを改めて使ったという事ですか!なかなかできない経験ですよね。

内海さん「はい。導入されていることは知ってはいたのですが、ちょっと嬉しかったですね。ちなみに、このサービスの特長として問診内容は自由に作れるんです。なので、そのテンプレートの1つとして、動物病院があるという形です。もちろん、産婦人科や内科、小児科などもあって、使うか使わないかはその医療機関さんが選ぶことになるんですけど、問診内容にこだわりのある先生は一定数いて、そういった先生方には良かったのかなと」

医療の課題にどのようにアプローチするかを考えるのが今のミッション!

医療の課題
病院の7割が赤字経営・医師の長時間労働

―― ちなみに、医療機関は便利なサービスであれば予算もすぐに下りるということはないのでしょうか?予算は豊富に持っているという勝手なイメージがあるのですが……。

内海さん「いえ、病院は7割が赤字経営(※)と言われていますからね。自由診療であれば別でしょうけれど。なので、経営改善をして利益を上げようとしているけれど苦しい、というのが実情でしょうか。なので、公立の病院は統合や再編を促されているというわけです。

でも、それをすることによって医療にアクセスできなくなる患者さんが必ず出て来ます。だからといって赤字経営を放置しておくわけにもいかない……。医療機関はこんな板挟みの状態だから大変ですよね。

でも、改めて考えてみれば、適切な医療が受けられるのは医師が患者さんのために働き過ぎなぐらい働いていてくれるからなんです。そして、またそれが医師の働き方改革の話に繋がって来るんですが。その辺りに関わっていたのが、次に働いていた会社ですね。こちらでは事務方とお話することが多かったように思います」

(※)参考:一般社団法人 日本病院会、公益社団法人 全日本病院協会、一般社団法人 日本医療法人協会「2023 年度 病院経営定期調査」

―― 今度は医療機関の事務方なのですね。ちょっとまた関わり方が変わるのでしょうか。

内海さん「そうです。大きな病院というのは、ある意味では大企業と同じようなもので、何か一つシステムを新しくするという話になると、そこに関わっている人がどんどんあぶりだされて来ます。ですが、それが思った以上に多かったり、コストも掛かっていることが判明するんです。

でも、病院は組織として大きすぎるからなのか、コストに対する意識はそれほど感じていないようです。お話ししたところがたまたまそうだっただけの可能性も十分にありますが、人員整理も積極的にはなされないようです。そこは、一般企業に比べてある意味優しい部分なのかもしれないのですが。

なので、例えば電話応対する人員が足りないなら、医療機関はコールセンターに委託するとか、物量でカバーする傾向があるように思います。もちろん、新たな予約システムを導入しようという話が無いわけではないようですけどね。一般的な企業とは解決策がちょっと違う所があると気が付きました」

―― 確かに、FAXが有効であったエピソードですとか、一般企業とは違う文化があることを感じますね。

内海さん「医療に関する電子化が進まなかった結果、こうなっているところもあるかと思います。とはいえ、これについては誰が悪いという話でもなく。国の仕組みが良くなかったところもありますから、一概に医療機関が……という話でもないんですけどね。未だに書類や押印はデジタル化しない所が多いですし、今から対応するのが大変というのも頷けます。この辺の課題にアプローチしていくことが僕たちの役割なので、その一助になればと思っています」

――ありがとうございました!

今後も内海プロデューサーのインタビューを通してこれまでの業務経験からどんな課題を感じ取ったか、またどのような視点を持つことが大事なのかなどについての記事を掲載していく予定です。ぜひ楽しみにお待ちください。

この記事の担当者

医療や地域包括ケア領域のサービス開発経験を通して医療や介護の現場を知るプロデューサー 内海 篤人

内海 篤人/Uchiumi Atsuto
職種:プロデューサー
入社年:2023年
経歴:Web業界(企画・ディレクター)→ゲーム業界(プランナー・カスタマサポート)→ヘルステック企業(カスタマーサクセス・事業責任者)に従事

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