みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、新しい医療のスタイルとして取り入れ始められた「オンライン診療」について解説していきます。
現在、日常のやり取りのオンライン化がどんどん進む中、医療の在り方にも変化が出始めています。病院に行かずにできる診療は現在どんなところまで進んでいるのか。オンライン診療の知識を付けて、これからの新しい生活様式の中でお役立てください。
需要増!オンライン診療の「今」
新型コロナウイルスの流行によって、感染を恐れる患者さんたちの足が医療機関から遠のき、施設によっては経営状態が悪化しています。
そんな中、患者さんのリスクを引き下げられる新しい診療方法として「オンライン診療」に注目が集まり始めました。みなさんも「オンライン診療」という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。
しかし、実際にどんな診療なのか、細かな内容までは分からないという方は多いのではないでしょうか。今回は、新しい生活様式が実践される中で需要が増えている「オンライン診療」の基礎的な内容をご紹介していきます。
まず、「オンライン診療」という言葉は、厚生労働省で以下のように定義づけされています。
『遠隔医療(※)のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。』※遠隔医療…情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為
やや難しい説明になっていますが、要するにスマートフォンやパソコンの画面を通じて医師に診察してもらえるということです。
リモート会議やテレワークが日常となった今では珍しいものに思えないかもしれませんが、医療業界においてこのようなデジタルコミュニケーションを駆使した医療行為が取り入れられるというのはとても画期的なことです。医療業界も、いよいよ本格的なデジタル活用によって患者さんの治療が行われる時代が来たことが感じられます。
それでは、以下から「オンライン診療」の歴史や診療方法などを見ていきましょう。
90年代から存在していた「遠隔診療」の概念
オンライン診療の歴史をたどると、インターネット黎明期から「遠隔診療(=のちのオンライン診療)」という概念は存在していました。まず始めに、現在のオンライン診療にたどり着くまでの歴史を振り返ってみましょう。
【1997年】
遠隔診療は当時の厚生省の通知によって「診察になり得る」とされていた。しかし、遠隔診療は離島や僻地に適用するものとなっており、初診は対面診療にしなければならない等の留意事項や診療報酬などの条件が厳しく、日常的な普及には至らなかった。
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【2015年】
特に変化のない時期が長く続いていたが、8月10日厚生労働省医政局長事務連絡によって、僻地以外でも遠隔診療を行うことは差し支えないとの見解が示された。ここで、ようやく僻地以外の遠隔診療に変化が出てくる。さらに、スマートフォンの普及もあって健康相談アプリなどの類似のサービスも普及を見せ始めていく。
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【2018年】
3月の診療報酬改定のタイミングで遠隔診療から「オンライン診療」という名称へ。保険診療が適用された。
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【2020年】
新型コロナウイルスの感染拡大防止の面から、オンライン診療に注目が集まる。新たに「オンライン診療」のサービスを始める医療機関や、健康相談のスマホアプリを開発する企業などが出る。
※これまで「初診は対面診療が原則」となっていたが、4月には新型コロナウイルス感染症拡大期の「時限的・特例的な対応」として、初診からの「電話や情報通信機器を用いた診療」が可能になった。
現在の診療の対応については時限的なものという影響もありますが、2020年の今が最もオンライン診療を受けやすい環境となっていることが分かります。
「オンライン診療」の特徴を詳しく知ろう!
【オンライン診療で診ることができる症状は?】
現在は、新型コロナウイルス感染症拡大期の「時限的・特例的な対応」が取られているため、疾患の制限がなくなっています。初診は受けられないというルールが今の時期のみ廃止されており、また、専用アプリなどの普及もあって「時限的・特例的な対応」の期間は受診する人が増え続けることが見込まれます。
【オンライン診療が向いているのはこんな症状の方】
・症状が安定している。
・生活習慣病や花粉症など慢性の疾患で薬の変更がない。
・心療内科(体に触れずに診療が行える)
【オンライン診療が向いていないのはこんな症状の方(対面診療の方が良い方)】
・急性の腹痛や頭痛など、症状が安定していない。
・その場で処置してもらいたい症状がある。
・全身を見てもらいたい(PCやスマホのカメラではみられる限界がある)。
【メリットはこんなところ!】
対面しないで診療を受けられる
院内感染・二次感染のリスクがないので、患者・医師、共に安心して診察を受けられる。
受付~薬の手配までオンラインで可能
(※注意:院外処方の場合は処方箋が届く)
長くなりがちな待ち時間もカットでき、時間を有効に使える。クレジット決済に対応していることも利便性を高めている。
距離の制約がなくなる
(病気の内容にもよるが)遠くて行けなかった医療機関での診療も可能になる。遠方であればあるほど、交通費の負担を減らせる。医師側もオンライン診療によって新規で獲得できる患者が増やせる。
【デメリットはこんなところ!】
直接患者に触れる触診や聴診ができない
医師は画面を通した情報しか、診断の手掛かりになるものがない。患部に触れたり、聴診器をあてるなどの行為はできない。また、WEBカメラなどを通した画像になるため、顔色なども判断しにくい場合がある。
その場で処置ができない
医師が目の前にいるわけではないので、診察後すぐに治療という流れにはならない。
専用機器などがないため、診察できる症状に限界がある
レントゲンのような機器もないため、精密な検査まではできない。
手数料がかかる
オンライン診療には、システム利用に要する費用「情報通信機器の運用に要する費用」が加算される場合もある。
これらの状況をまとめてみると、オンライン診療ならではの課題が見えてきます。距離や時間の制約を超える代わりに、情報に制限がかかるということや、そもそもインターネット機器に慣れていない場合には利用が難しいこともあります。医療機関で診療していないということは、セキュリティへの備えも必要になるでしょう。
また、医師たちの声としては、デメリットに挙げたような診療への不安や、診療報酬が安いことから導入に不安を感じている方も多いようです。オンライン診療の課題については、医師や患者さんだけでなく、社会全体でうまく運用できる仕組み作りを考える時なのかもしれません。
【オンライン診療が抱える課題】
【患者側】
・その場での処置が不可能。正確な診断が得られない場合がある。
・高齢者などは機器に慣れていない患者も多い。
・電話などの受診の場合は医師や患者の身分確認にリスクがあり、確認するのも時間がかかる。
【医師側】
・患者さんの症状を確認しにくい。
・診療報酬が低い。
「オンライン診療」への備えを!
今後、みなさんがオンライン診療をする事になった場合、対面診療との大きな違いは医師も患者もインターネット環境を整え、オンライン診療独自の環境を作る必要があることです。そのため、通院にはなかったインターネット環境の準備がオンライン診療には含まれます。医師と患者さん、それぞれにどんな準備が必要なのか見ていきましょう。
オンライン診療の手順:【予約】→【準備】→【診察】→【決済】→【処方】
医師側:
オンライン診療システムの導入
開発した企業によってシステムの特色が異なる。自分たちに合うサービスを導入し、デモンストレーションをしておく。
システムのメンテナンス
OS やソフトウェア等を適宜アップデートするとともに、必要に応じてセキュリティソフトをインストールするなどの対応も。
物理的なプライバシーに配慮する
プライバシーが保たれるように、患者側、医師側ともに録音、録画、撮影を同意なしに行うことがないよう確認する。
患者側:
対応可能か確認
オンライン診療に対応しているかどうかを事前にWEB検索や電話で問い合わせをして確認。
インターネット環境を整える
診療を受ける場所でインターネットが使えるかどうかを確認。問診票、保険証登録などの準備、パソコンやスマートフォンのカメラのチェックも。高齢者や小さなお子さまなど、デジタルに不慣れな患者は診療時も含め、家族のサポートが必要。
費用の確認
保険診療と自費診療がある。すべてが保険診療ではないので注意。(現在のガイドラインでは保険診療の適用になる疾患には限りがあり、すべての疾患でオンライン診療を受けられるわけではない。)システム利用の手数料が発生する場合もある。※細かな規定は、厚生労働省の資料に掲載されています。
・オンライン診療の適切な実施に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf
オンライン診療に対応している病院やクリニックを探そう
実際に診療を受けたい人と考えている方は、行きたい医療機関がオンライン診療に対応しているかをWEBサイトなどで検索してチェックしておきましょう。
以下は、オンライン診療サービスを提供している企業のページです。
・オンライン診療・服薬指導アプリCLINICS (クリニクス)
https://clinics.medley.life/
・オンライン診療アプリcuron(クロン)
https://curon.co/home
・CARADA オンライン診療
https://lp.telemedicine.carada.jp/p.html
オンライン診療の種類
実は、「オンライン診療」と呼ばれるものの中には、内容の異なる類似のサービスがあります。それらの名称や何ができるのか、厚生労働省の定義を元に明確な違いを覚えておきましょう。
【オンライン診療】
定義は冒頭で説明したもの。医師から音声通話もしくはテレビ通話を用いたオンライン上で診察、処方が行える。
【オンライン受診勧奨】
医師ー患者間において、情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムで行う。患者からの症状の訴えや問診などによる情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択すること、また状況に応じて、非受診の勧奨も可能。疾患の治療方針を伝達すること、一般用医薬品の具体的な使用を指示すること、処方等は行えない。
【遠隔健康医療相談(医師)】
医師-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。
【遠隔健康医療相談(医師以外)】
医師又は医師以外の者-相談者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやりとりを行うが、一般的な医学的な情報の提供や、一般的な受診勧奨に留まり、相談者の個別的な状態を踏まえた疾患のり患可能性の提示・診断等の医学的判断は伴わない
全ての人にストレスフリーな医療を!
オンライン診療の「特例措置」は、しばらくの間継続されることが決まっています。
もしかすると、みなさんやみなさんのご家族が近い未来にオンライン診療を受ける機会があるかもしれません。
また、単語として「オンライン診療」は広まってはいますが、環境が整っていない病院やクリニックは依然として多いままです。しかしながら、新型コロナウイルスの影響が続く限りはオンライン診療の需要は増え続けるでしょう。
この先の日本の医療は、「対面/オンライン」どちらも自由に選べて、患者さんと医師、双方にメリットを持たせられるような社会でありたいと願っています。また、そんな社会を目指すために、私たちは今後もDXを通じて医療従事者をサポートし続けていきます。