以前告知した7月17日に開催された「生成AIサミット」のイベントレポートをお届けします。
メンバーズ外部顧問 池田朋弘氏主催によるオンラインセミナーにて、生成AIプロジェクト統括の彦坂プロデューサーが登壇し、生成AI活用の導入を阻む5つのハードルと対策について池田氏とトークセッションを行いました。
今回はその前半部分についてレポートしていきますので、ぜひご覧ください。
ライブ配信視聴者は前回の2倍!3,000人以上が参加
7月17日(水)にオンラインで開催された『生成AIサミット-Vol.2』。4月に開催されたVol.1にも1,500人以上が参加し、注目度の高まりを感じるイベントでしたが、今回はさらに前回の2倍となる3,000人超の参加者となりました。
第2弾のイベントタイトルは『生成AI×ビジネス活用の最先端を学ぶ一日』。参加者数の多さからも引き続き業務への生成AI導入・活用が求められていることを実感しました。
イベント当日は、主催者である池田朋弘氏(メンバーズ外部顧問、YouTubeチャンネル「リモートワーク研究所」運営、株式会社Workstyle Evolution代表取締役)が、ゲストスピーカーを招いて生成AIのビジネスにおける可能性を探求しつつ、最新の情報を共有しながら進行していくスタイルで行われました。今回は私たちメンバーズメディカルマーケティングカンパニーより生成AIプロジェクト統括の彦坂圭プロデューサーがゲストスピーカーとして登壇しましたので、その模様を前後編に分けてレポートしていきます。
生成AIの認知度は9割の一方、活用率は35%!
生成AI活用のフロントランナーとして、製薬・ヘルスケア企業、その他幅広い業界の案件を手掛ける彦坂プロデューサー。今回は、その中の事例をピックアップしながら『生成AIはこんなに便利なのに、なぜ使われない?導入を阻む5つのハードルと対策とは~メンバーズのDX現場支援の事例に学ぶ〜』をテーマとしたトークセッションが行われました。
最初に、生成AI導入を掲げる企業は増えているものの実際の業務への適用が進まないという困りごとを起点として、生成AIの活用状況は認知度が9割に対して、活用率は35%であるという現状について触れました。
そこで、池田氏は「生成AIによって効率が上がっても、クオリティは下がると思い込んでいるから活用に踏み込めないのでは?」という多くの企業が持つ懸念点を指摘。しかし、実際には生成AIを業務に取り入れることでタスクに対しての遂行時間は37%減少、品質は18%向上します。生成AIの活用は〈効率とクオリティ〉のように、〈何かと何か〉のトレードオフの関係にならないということからも、さらなる活用を推奨しています。
また、メンバーズ内での生成AI活用に触れ、特に若手クリエイターの育成に力を入れるメンバーズでは、生成AIのアウトプットしたものを元に新人の育成やスキルアップにも効果を発揮していることもお伝えしました。改めて、「生成AIを使わない手はない」、メリットがあるものだという事を再認識し、本題に入っていきました。
生成AI業務活用を阻む5つのハードルとその対策を解説!
ここからテーマとなっている『生成AIはこんなに便利なのに、なぜ使われない?導入を阻む5つのハードルと対策とは』について、実業務における生成AI活用の現状から、最先端技術を導入する際に起きがちな障害とその対策についての解説が始まりました。
まず、 “5つのハードル”としてピックアップしたものがこちら。
【1】セキュアな利用環境が未整備
【2】システムのUI/UXがイマイチ
【3】プロンプト設計力の不足
【4】現場実践ナレッジが未整理
【5】業務プロセス導入が不十分
数々の案件を手掛けていく中で生成AI導入を阻んでいるものはこの5つに集約されているとして、これらの対策・具体的なアプローチを順に説明していきました。
【1】セキュアな利用環境が未整備
■よくある課題
・社内でのセキュアな生成AI環境が存在せず、個人向けChatGPTを利用している。
・入力データが学習に利用される可能性があり、業務情報を入力できない。
・生成AIでどこまで何ができるのか明確化されておらず、なかなか活用が進まない。
生成AIを導入する際に最初にしなければならないのが環境整備であり、この段階で出てくるのがこの3つの課題です。池田氏も、「環境だけ提供されてもダメ。安心して使える環境であることが大事」とコメントしていました。そして、これらの対策事例として大手不動産関連会社さまのケースを用いて説明しました。
また、課題に対する対策として環境構築やナレッジ共有とともに必要なのは、生成AIの利用規定やガイドラインの策定をセットにすることがポイントであると語られました。これによって実際に生成AIを使うメンバーに利用範囲が分かりやすくなる効果があるとのこと。さらに、池田氏がインタビューした横須賀市の生成AI活用事例をピックアップし、行政が使用する生成AIの利用率が50%を超えた理由について「ガチガチに絞り過ぎない。利用のガイドラインを2点(機密情報と個人情報は入れない)に絞ったこと」であると語り、利用者が使いたくなるようにガイドラインのハードルを下げることも大切であると念を押していました。
■対策のポイント
まずは、必要最低限の機能に絞ってセキュアな環境を構築する。
※リスク低減のためのガイドライン策定もセットで行う。
【2】システムのUI/UXがイマイチ
■よくある課題
・ChatGPT等のテキスト生成系サービスは、チャット形式UIがほとんど。
・業務の種類によってシステムやUIが最適化されていないと扱いづらく、利用されないという声がある。
2つ目のハードルは、インターフェースが使いづらいだけで利用率が下がってしまう点について触れました。使い慣れたUIであることも活用が広がるかどうかのポイントです。
大手メーカーさまの事例では、口コミデータ活用をしたいけれど、商品数が多すぎてチャット形式での対応では対応が間に合わないため、一括処理できる仕組みを構築して対策。RAG(Retrieval-Augmented Generation)を活用し、より正確で信頼性の高い情報提供を可能にしました。
その他、普段のレポート作成に生成AIを組み込み、通常の業務と変わらないUIで作業ができれば作業者にとって工数の負荷を掛けずにより使いたい業務に時間を割くことができるメリットがあることともに、日常的に利用するプラットフォームに生成AIを組み込んだ事例についても説明しました。
■対策のポイント
使い慣れたUI/UXをもつシステムへ組み込む。
※業務に最適化したシステムを提供する。
【3】プロンプト設計力の不足
■よくある課題
・業務に活用できるレベルのプロンプトがアウトプットできない。
・プロンプトエンジニアリング力のある一部のメンバーにしか活用が広まらない。
生成AIには、どのような情報を提供してほしいかを伝えるためのプロンプト(指示や質問)が必要ですが、業務で活用できるレベルの精度のアウトプットを出せるようにするには、“プロンプト設計力”が必要不可欠です。
ここでは、大手食品メーカーさまの集客に関する支援の事例を取り上げていました。こちらの食品メーカーさまでは、生成AIを使える環境があったにも関わらずチーム内の一部にしか使われていないという課題があったのだそうです。
■対策のポイント
個人個人の得意不得意もあるため、一律で同じ役割にせず「つくる人/使う人」で役割を分け、「つくる人」が中心となって活用を広めていくというやり方を取る。
そこで、集中的にプロンプト開発&改善をするチームを作るために業務フローを構築。その対策をした際のステップが以下です。
1.業務フロー可視化
業務に伴走し、フローに可視化されて来ない決定者や担当者の関心ごとや温度感も含め業務理解を深める。
2.生成AI活用領域の検討・特定
上記で業務理解を深め、生成AI活用のポテンシャルを見極めつつ業務や課題をピックアップ。プロンプト開発対象の優先度を決定。
3.プロンプト開発
プロンプトスキルのあるメンバーと開発に着手。一般化されたナレッジと業務固有のナレッジをプロンプトに組み込み、一定レベルのアウトプットとなるようにチューニング。
4.業務フロー組み込み&レクチャー
プロンプトを一覧化し、誰でもコピペでプロンプトを利用できる状態に。
このフローでスキルのなかったメンバーがプロンプトを利用し、自身の担当業務でベネフィットが実感できるようになり、それによって自らプロンプトをカスタマイズし、さらなるベネフィットを実感するという好循環が生まれたとのこと。
この取り組みによって業務効率化やスキル育成も同時に実現。多方面で効果的な結果が見られ、以下のような4つの成果を出すことに繋がりました。
後編も生成AI活用の事例や業務に役立つ取り入れ方をご紹介します!
引き続き後編でも、5つのハードルの乗り越え方について事例を交えた解説や私たちメンバーズメディカルマーケティングが取り組む「生成AIアンバサダー」に関する取り組みを紹介していきます。
業務内で生成AIを活用していくためには環境構築やチーム運用など、生成AIツールの開発以外にも考慮すべき点が数多くあります。後半でもこれまでの現場の事例などを通して業務適用を推進するために役立つ解決策をお伝えしていきます。生成AI活用が上手く進まない方や組織内へ浸透させていきたい方のヒントやアイデア作りに活かしていただける内容です。ぜひご覧ください。
【イベントレポート:後編】生成AIサミット-Vol.2開催!業務活用を阻む5つのハードルと対策を解説
2024.10.18
7月17日に開催されたオンラインセミナー「生成AIサミット」のイベントレポートの後編をお届けします。前編に続き、メンバーズ外部顧問 池田朋弘氏と生成AIプロジェクト統括の彦坂プロデューサーのトークセッション内容をお伝えし […]
イベント登壇者
彦坂 圭/Hikosaka Kei
職種: プロデューサー/マネージャー
入社年:2012年
経歴:メンバーズ入社後、経営企画室で業績管理スキームの構築・推進に従事した後、SNSや広告支援を行う部署にて様々な業界のマーケティングを支援。2021年からは製薬・ヘルスケア業界特化カンパニーにて、大手ヘルスケア企業の患者向けサービスの会員獲得から活性化の戦略策定から実行支援をリード。また生成AI活用を前提とした業務フロー構築を通した、実効性のある生成AIの組織定着の支援を行う。