【調査レポート】AIとは何か?歴史から紐解くAIの技術とその事例!

コラム

2021.01.06

みなさん、こんにちは。メンバーズメディカルマーケティングの佐塚です。

2020年もあっという間に終わり2021年新たな年を迎え、寒さも一段と強くなってきましたね。自宅でも暖房が欠かせない季節。現在のエアコンは人を感知し体温や室温に応じて快適な温度調整を自動でしてくれる高性能のものが増えております。実は、こちら「AI(人工知能)」が搭載されているのです。このように、色々な場面で急速な普及を見せている「AI」。今後ますます活躍の場が広がっていくAIについて、正しい理解とその活用方法を歴史から調査したので、発表していきたいと思います。

アクセンチェア株式会社(2018年5月)のレポートによると、日本では2030年に超少子高齢化社会の到来によって約1,000万人の労働者が不足すると言われております。そのため、AIを活用した「人の生産性向上」や「労働力不足の穴埋め」などといった、人とAIの協働は避けられないと述べられています。しかし、その一方で、「労働者とAIとの共存に向けた行動の遅れや、AIに対して漠然とした不安を抱いている現状などが指摘されています。

つまり、AIとの共存の未来が確実に起こる私たちは、AIに対する正しい理解が必要とされています。今回は、AIの定義・技術・歴史、そして製薬業界にどのような影響をもたらしているのかを調査しました。

AIとは何か?

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、「学習・推論・判断といった人間の知能を持つ機能を備えたコンピュータシステム」と定義されております。(大辞林 第三版より抜粋)

しかし、人によってその捉え方は様々で、学術的な視点では多義的であり異なります。

以下は、専門家による定義の一部を紹介します。

 松尾豊 
東京大学
人工的につくられた人間のような知能、
ないしはそれをつくる技術
中島秀之
札幌市立大学
武田英明
国立情報学研究所 
人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である
西田 豊明
東京大学
「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
溝口理一郎
北陸先端科学技術大学院
人工的につくった知的な振る舞いをするためのもの
(システム)である
長尾真
京都大学
人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである。人工的に作る新しい知能の世界である
浅田稔
大阪大学
知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に
定義できない
松原仁
公立はこだて
未来大学
究極には人間と区別が付かない人工的な知能のこと。
池上高志
東京大学
自然にわれわれがペットや人に接触するような、情動と冗談に満ちた相互作用を、物理法則に関係なく、あるいは逆らって、人工的につくり出せるシステム
山口高平
慶應義塾大学
人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための
構成的システム
栗原聡
慶應義塾大学
人工的につくられる知能であるが、その知能のレベルは人を超えているものを想像している
山川宏
玉川大学
計算機知能のうちで、人間が直接・間接に設計する場合を人工知能と呼んで良いのではないかと思う
出典:松尾 豊「人工知能は人間を超えるか」より(一部現在の在籍状況に合わせて松尾氏が改変)

AIの歴史

今では様々な領域や場面で、多くの技術が見られ認知されているAIですが、1960年代から現代までに「ブーム」と「冬の時代」を繰り返してきました。

出典:松尾 豊「人工知能は人間を超えるか」

【第一次AIブーム】

AIという言葉が誕生したきっかけは1956年にまでさかのぼります。ダートマス大学の数学教授ジョン・マッカーシーが「人間のように考える機械」をAIと名付けました。

最初のブームはまさにこの時代、1950年代後半から60年代。この時代はパズルや簡単なゲームなど、ルールが存在する問題に対して高い性能を発揮し、大きな期待がかけられました。しかし、ルールが複雑化されると問題が解けなくなり、性能に限界を迎えることでブームは下火となります。

【第二次AIブーム】

次に起こったブームは、開発から30年後になる1980年代。この時代は、AIに専門家のような「知識」をルールとして教え込み問題解決される「エキスパートシステム」の研究が発展します。

この研究が進むことで「医療診断」などのビジネスへ応用も見られるようになりました。しかし、人の持つ「一般常識」レベルの膨大な知識を記述しなければならないこと、例外や矛盾が生じた場合、対応できないといった壁に直面し再びブームは終息します。

【第三次AIブーム】

そして、2000年代から現在にかけて第三次AIブームはまさに進行形で発展しています。このブームの原動力となっている技術が「深層学習(=ディープラーニング)」と呼ばれる技術です。この技術を活用することで、学習データから自動で特徴量を抽出し精度を向上させることが可能となりました。

*特徴量とは
機械学習における特徴量とは、学習の入力に使う測定可能な特性のことです。たとえば、赤いリンゴと青いリンゴを識別する際には、「色」が特徴量となります。人はものを識別する際に、無意識に適切な特徴量を利用しますが、ディープラーニングを除く従来の機械学習では、識別に利用すべき特徴量を人間が入力していました。これまで「人の顔の識別」などの複雑な問題において、人工知能に適切な特徴量を教えることが困難でした。

AIは長い年月をかけて様々な専門家がそれぞれ定義づけを行いながらも、60年近い年月をかけて低迷期と進化を繰り返し今の技術にまで到達しました。

主なAIの技術

次にAIの技術として中核と言われるいくつかの技術を紹介していきます。

機械学習

機械学習とは、コンピュータが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術のことを指します。現在使われている最も中核となる技術です。

2000年代以降のコンピュータ性能の向上でビックデータを扱えるようになり、膨大な計算リソースを獲得したことで実用化されていきました。

画像認識

画像認識とは、人間の視覚機能と同じように静止画像や動画内容を理解する技術です。現在では、自動運転を実現するための中核技術としも注目を集めていますが、他にも工業製品の検査や製造業、また製薬業界でも中心に活用されている技術です。

その他、「音声認識技術」や「自然言語処理」「予測技術」、その中心となる「ディープラーニング」などAIには多岐にわたり様々な技術が発展・進化することで、現代にはなくてはならないものとして存在意義を高めております。

では現代社会においてこのような技術がどのような影響をもたらすのでしょうか?

多くの専門家が述べている事象の一つとして「AIが人よりも高い知能能力を得ることで、仕事を奪われる可能性がある」ことが挙げられます。

オックスフォード大学の論文によれば、「将来90%以上の確率で消える職業」が紹介されており、野村証券研究所のレポートでは、おおよそ「50%が就いている職業において代替可能」と発表されております。

このような結果を不安視する方もいらっしゃるでしょう。しかし、この先の未来で人とAIの協働や共存を目指すならば、どのようにAIと向き合うのが良いのでしょうか?それは「AIとの関わり方を知ること」にあります。

AIとの関わり方をどうすればよいか

その関わり方の一つ目は、「プログラミングを習得し、人工知能を実装する」方法です。

人工知能の中核技術である機械学習を自ら実装できるようになることでAIの技術を深め、正しい理解をすることができます。

二つ目は「人工知能をビジネスに組み込む横断的なスキルを持つこと」。

AIと関わる上で必ずしもプログラミングの習得を目指す必要はなく、「人工知能を活用できるビジネスパーソン」を目指すことも一つと言えます。例えば「G検定」もその一つで、これは、日本ディープラーニング協会が実施する資格試験です。このような資格取得やAIを扱う環境に携わることで理解と知見を増やすことが、正しい活用と理解の第一歩となるのではないでしょうか。

ここからは、医療、製薬業界において活用されているAI(人工知能)の事例を紹介してまいります。

医療・製薬業界におけるAI活用事例

画像診断サポート

株式会社エムネスでは、「医師の画像診断をサポートする人工知能を開発」していおります。アルツハイマーや脳動脈瘤の疑いがどのくらいあるか、人工知能が画像の特徴から分析し、医師に伝えてくれます。画像から脳の体積を推定し、脳の収縮についても人工知能なら画像から判断することが可能です。

出典:「AI/SUM(アイサム)」注目企業をピックアップ

生活習慣病リスクをAIで予測

SOMPOホールディングスグループと東芝グループが共同で、生活習慣病リスク予測AIを開発しました。東芝グループが持つ工場機器の故障予測で使われる「時系列分析」のノウハウを生かした病気の発症確率の予想が可能です。さらに、生活習慣病リスクや健康保険組合が必要な予算まで予測できます。

出典:疾病リスク予測AIサービス 東芝デジタルソリューションズ

AIを活用した新薬開発の期間短縮

大日本住友製薬と Exscientia Ltd.が共同研究をし、AI創薬プラットフォームの使用によって従来4年半かかっていた探索研究を1年未満で完了させ、世界初の臨床試験を行いました。

これは、AIを活用して創製された新薬候補化合物のフェーズ1試験を行い、課題であった創薬の時間短縮と化合物の提案をしたことによるものです。 従来の考え方では、新薬を作る際には膨大な組み合わせの中から適した化合物の構造を見つける必要があり、それらを発見するには2〜3年の時間を費やしていました。今回の共同研究によって、AIのアルゴリズムを活用することで適した化合物を提案、毒性などの特性予測を行うことで期間の短縮を実現することができました。

出典:大日本住友製薬と Exscientia Ltd.の共同研究 人工知能(AI)を活用して創製された新薬候補化合物のフェーズ 1 試験

医療従事者や患者からの問い合わせ対応

製薬会社には、医療従事者や患者から薬に対する問い合わせが数多く発生します。製薬会社としては、新薬を市場に提供できたら終わりではなく、効果や用法用量を正しく発信し続けていく必要があります。

中外製薬では、このような課題に対してAIの導入でアプローチするために、「MI chat(エムアイチャット)」と呼ばれる対話型チャットボットを導入しました。MI chatの導入により、医療従事者・中外製薬が従来のWEBを通じた年間60,000件の問い合わせに費やしていた時間が短縮され、製品に関する様々な質問に対応することが可能になりました。そのほか、一般的な口語文による情報検索や24時間365日対応可能で、パソコンおよびスマートフォンからのアクセスも出来ます。リアルコミュニケーションに加えAIによるデジタルコミュニケーションを実現したことで、医療従事者・患者双方の満足度を向上させています。

出典:2019年1月10日ニュースリリース 中外製薬株式会社

今紹介した以外にもすでに様々な製薬会社がAIを活用しています。

医療業界においては新薬の開発や、コミュニケーションツールの進化が、病気で苦しむ患者様の命を一人でも救う結果にも繋がるでしょう。 私たちも、AIの最新事例に理解を深めながら社会貢献につながる活用方法のリサーチを続けてまいります。