メディカル・インサイト 鈴木英介氏 勉強会レポート:前編【世の中の「インチキ医療」はなぜなくならない?】

コラム

公開日:2023.05.01
更新日:2023.04.25

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏による勉強会レポートの前編です。テーマは「世の中の『インチキ医療』はなぜなくならない?」です。前半では、医師がクリニック等を開業するまでの流れや専門医とはどういうものかを説明していきます。適切な医療を受けるためのコツを知ることもできますので、ぜひ、ご覧ください。

難しい医者選び!判断基準は口コミや交通アクセスだけ?

佐塚さん「4回目の勉強会のテーマは、『世の中の“インチキ医療”はなぜなくならない?』です。鈴木さん、本日もよろしくお願いいたします。出席者は、清水、澤田です」

鈴木氏「よろしくお願いします」

佐塚さん「今日のお話は我々だけでなく、一般の方も気になる内容ですよね」

鈴木氏「そうですね。今回の話はみなさんも含め、一般の方にも向けた視点で話をしていきたいと思います。では、みなさんはまだ若い方ばかりなので少ないと思いますが……澤田さん、ここ2~3年の間で病院に行かれたことはありますか? 差し支えなければ、どんな時に行かれたか教えてください」

澤田さん「僕は肩こりが原因で、そこからリンパに行って扁桃腺が腫れて……という自分だけ分かる、いつもの流れがありまして……その時、大阪の“かかりつけ医”に行きました。自分が勝手にかかりつけ医、と呼んでいるだけかもしれませんが(笑)」

鈴木氏「ほう! かかりつけ医ですか。それはどのような科で、どのような先生なのでしょうか?」

澤田さん「診療科などはハッキリ分からないのですが……近くのクリニックに行った、といった感じです」

鈴木氏「では、かかりつけ医の話はまた後でしますね。清水さんはいかがでしょう?」

清水さん「私は風邪の時と、あとはアレルギー体質なので、皮膚科などで血液検査をしてアレルギー診断のような事をしてくれる病院を転々としていますね」

鈴木氏「それは珍しいですね。アレルギー体質というのは、いつからですか? それと、その病院というのはどうやって探していますか?」

清水さん「体質は、小さな頃からそうだったみたいです。今は症状が肌に出るのが嫌なので、病院はネットで近くの地名と“アレルギー検査”などを掛け合わせて検索しますね。その後は口コミを見たり……」

鈴木氏「ちょうどいいテーマなので、この内容で話をしていきましょう。みなさんは、皮膚科や小児科、内科、耳鼻咽喉科など、色々な科に“専門医“がいることは知っていますか?」

清水さん「初耳です!」

鈴木氏「様々な専門医の資格があるのですが、日本には『アレルギー専門医』という専門医資格があるんです。今、実際に手元のPCで『アレルギー専門医』でGoogle検索をすると、専門医・指導医一覧が出て来ませんか? 僕が医者に掛かるなら、ここに入っている先生から探します(笑)」

清水さん「あっ。私が診ていただいた先生も入っています!」

鈴木氏「それは良かった(笑)。症状や疾患によっては、その専門資格を持っている先生に診てもらった方がいいというのがあるんです。アレルギー症状は、内科や皮膚科や耳鼻科、場合によっては眼科などでも診ることはありますが、アレルギー専門医はそれを専門的に診る資格を持っているという事なので、特にしっかり診察してもらえることを期待できます。先ほどの病院選びの話で『日本アレルギー学会 専門医・指導医一覧』というものがありましたが、こちらは医師単位ですよね。専門医の資格は、クリニックではなく医師に資格が与えられるので、一覧に出てくる先生がクリニックなどを開業していた場合には、“その施設=先生”になりますが、大きな病院などでは必ずしもそうとは限らない。だから、専門医の資格を持つ先生単位で選ぶのが大事……というのが一つのメッセージです。みなさんは、専門医資格って意識したことはありますか?」

清水さん「緑内障は専門医がありますか? 眼科も定期的に行く事もあるのですが、その時に『緑内障を診られる先生が○日にくるから、その日に来院した方が良いですよ』と言われたことがあって」

鈴木氏「緑内障の専門医資格はないですが、まずは眼科専門医であることが大事ですね。清水さんは、いつも診てもらっている先生というのは、本当に専門医資格を持っていますか? ……なんて、びっくりする質問でしょう(笑)?」

清水さん「今調べてみましたが、私が通っている眼科の先生は資格を持っていらっしゃいました(笑)」

医師選びのポイントは学会認定の「専門医」であるかどうか!

鈴木氏「実は、看板を掲げている診療科の専門医資格を持っていない医師もいるんです。なぜ、こんな事が起きるかというと、日本では不思議なことに標榜という、医師が医療施設の看板に『○○科です』というのを出すのは何でも自由なんです。例えば、これまで精神科の診療をしてきた医師が、これから皮膚科や眼科をやりますと、看板を出してもOK。驚きますよね。けれど、日本ではこれがまかり通っているのです。しかも、患者さん側はその事を知らないからこそ、専門医資格を持っているかどうかのチェックはすごく大事なんです。では、この専門医は誰が認定していると思いますか?」

澤田さん「国や医療学会の偉い方でしょうか?」

鈴木氏「国というより学会ですね。基本的には学会単位で専門医資格を認定します。その学会がどういう枠組みで存在するかによって、あとは、その学会の発行する資格が専門医の認定制度に則っているかによって、専門医の資格を出すかどうかが決まるんです。先ほどの『日本アレルギー学会』も、そのようにして専門医認定をしています。医師が専門医の認定を取るためには、一定数の診療実績を残さくちゃいけないとか、学会(学術集会)に出て知識をアップデートしなくちゃいけないとか、勿論筆記試験でも良い点を取らなければいけないとかなど、様々な条件をクリアする必要があります。調べてみると分かると思いますが、専門医資格というのはかなり沢山あるので、それを持っているか持っていないかを知っておくのは大事です。でも、患者さんは自分の症状がよく分からない、という時もありますよね。ただ、お腹が痛いとか。そういう時、澤田さんならどうしますか?」

澤田さん「その場合は……自分の直近の行動を振り返って、何科かは分からないですが、かかりつけ医がいる病院へ行きます」

鈴木氏「その行動が理想的なんです。どういうことかというと、腹痛って消化器官系に問題があってお腹が痛い時もありますが、心臓や腎臓、もしかしたら精神的な事とか、全然違うものから痛みが起きているかもしれないんです。でも、自分では原因が分からないですよね。要はそういう時に何が原因なのかを探ってくれる先生が身近に居たら、その先生の所へ行きたくなりませんか? それが、本来の“かかりつけ医”の姿なので、かかりつけ医がいるという事はすごく大事です。そして、何でも診られる先生である必要があるというわけです」

澤田さん「こういう時のかかりつけ医、なんですね……!」

何でも診られる真の”ジェネラリスト”は日本では希少

鈴木氏「一般的には近所の内科の先生に診てもらうというのが良くありそうなパターンですが、その先生が本当の意味で“何でも診られる”力を備えていない可能性がかなりあります。なぜかというと、日本の医師を育てる制度が専門の科ごとにサイロ化してしまうからなんです。例えば、外科系の医師は色々な手術をしますが、外科の中でも“消化器”外科、“呼吸器”外科なのか……色々あるんですね。そこで、呼吸器外科としてトレーニングを積むとなると、肺がんなどの呼吸器疾患の外科治療を専門として臨床で経験して行くわけですが、それ以外の疾患を診ることはまずないんです。そんな風に、大きな病院などでは『この疾患だけずっと診ています』という専門科の先生がいっぱいいるんです。で、そうした病院勤務の先生がある日突然、開業するんです」

澤田さん「開業までの経緯って、そんな流れになっていたんですか……」

鈴木氏「そうです。だから、クリニックの先生も始めから開業していたわけじゃなくて、どこかの大学を出て、若い頃は病院でずっとトレーニングを積んで専門医資格を取って……というのが普通ですね。それが、さっき言ったように、ずっと呼吸器外科だった先生が、外科系は結構しんどいなとか、人事の関係で医局に残りづらい、40代・50代で人生見直したい、とか色々な理由があって、ある日突然、開業すると。そうなった時に、呼吸器外科をやっていた先生でも呼吸器外科クリニックではなく『ナントカ内科クリニック』を開業する(笑)。そういう先生が本当に”内科”を全部診られるかというと、すごく怪しい。だから、自分が通う病院の先生が若い頃にどんな病院で、どんな科で、どんな診療経験を積んでいたかを知るのは大事。となると、何でも診られる先生はどこにもいないんですか? という話になりますよね」

佐塚さん「確かにそう思います」

鈴木氏「実は、国も最近それに気付いて総合的にすべての科を網羅して診て、診断を下すことができる、英語で言うとジェネラリストというか、“総合診療専門医”という新しい枠組みの資格を作ろうとしています。ただ、残念ながら、さっき言っていたように、日本では医師をジェネラリストになるように育てていないので、“総合診療専門医”は、世の中にそれほどたくさんいるわけじゃないんです。近所のかかりつけ医の先生が、“総合診療専門医”だったらラッキーですが、実際少ないと思うので、この辺りは今の日本の医療の隠れた課題ですね」

―― 前半部分はここまでとなります。専門医資格があること、クリニックを開業する流れなど、初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。後編も質疑応答を交えながら総合診療専門医や、かかりつけ医のあるべき姿などにも触れていきます!