
私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。
テーマは、前回に引き続き「レプリコンワクチンから考える医療リテラシー」。レプリコンワクチンの問題点として取り上げられていた部分について解説していきます。正しい医療リテラシーを身に付けるとともに、SNSなどに飛び交う真偽不明の医療情報を見極める際に役立つ内容です。ぜひ、ご覧ください。
前編はこちら

【勉強会:前編】レプリコンワクチンから考える医療リテラシー
2025.01.22
私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木英介氏と弊社の社員による勉強会のレポートです。 テーマは、「レプリコンワクチンから考える医療リテラシー」。SNSでもさまざまな議論が […]
勉強会の参加者

2018年中途入社
営業
佐塚さん

2021年新卒入社
デザイナー
村上さん

2023年新卒入社
Webディレクター
田辺さん

2024年新卒入社
Webディレクター
丹羽さん

2024年新卒入社
Webディレクター
土方さん

2024年新卒入社
Webディレクター
森田さん
レプリコンワクチンが日本で初承認されたのは珍しい話ではない
それではみなさん、後半もよろしくお願いします。
引き続き、今ちょっとした話題となっているレプリコンワクチンについてのお話を進めていきますね。前半では、新型コロナウイルスが流行を始めた頃に接種していたmRNAワクチンと、今話題になっているレプリコンワクチンの違いについて説明しました。
さらに、レプリコンワクチンを接種した人の来店拒否をするお店が出てくるようになったり、SNSなども含めて物騒な動きを見せていましたが、後半ではこれをどう考えていくべきかを1つひとつ説明していきます
佐塚さん、村上さん、田辺さん、丹羽さん、土方さん、森田さん「よろしくお願いします!」
まず、看護師団体が出した声明にもありましたが、レプリコンワクチンが他の国で認可されていないことについて。
こちらに関してなぜ、日本で一番早く承認されたかというと、元々レプリコンワクチンは海外の会社が生み出したものだったんです。それを途中からMeiji Seikaファルマが開発権を買い取って治験をしました。日本の製薬会社が開発したなら、日本での承認のタイミングが早くなるのは製薬業界では普通のことです。
例えば、とある薬剤が海外では承認されているのに、日本ではなかなか承認されないというケースが『ドラッグラグ』と呼ばれています。場合によっては永遠に日本に入ってこないこともあるので、これは『ドラッグロス』と言います。こういった問題で困っているということも多いのですが、こちらは以前の勉強会でも取り上げているので、過去記事(【勉強会:前編】ドラッグラグの再来と解決のための処方箋)に目を通してもらえればと思います。
で、ドラッグラグやドラッグロスがなぜ起きるかと言うと、やはり海外の製薬会社やバイオファーマの方が新しい薬を開発する力があるので、海外の市場優先で開発が進む傾向があるからです。今回はたまたま日本の会社が開発権を持って承認も早くできたわけですから、むしろ良い話なんです(笑)。
珍しい話や悪い話でも何でもないですし、海外でもレプリコンワクチンの開発は進んでいますので、懸念するは必要ないですよね。というのが1つ目のお話です
※以下の記事で詳しく解説しています

【勉強会:前編】ドラッグラグの再来と解決のための処方箋
2024.09.03
今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏による勉強会レポートの前編です。 テーマは「ドラッグラグの再来と解決のための処方箋」。日本で新しい医療用医薬品が販売されるまでの流れ […]
良い話がまるで悪い話にすり替わっていましたね。初承認をどう捉えるかでこんなに変わるとは
2つ目は、シェディング(感染)という点。
土方さんが指摘して下さったように、そもそもレプリコンワクチンはウイルスではないです。なので、ワクチン接種して病気になるという話ではないですし、万が一、体外に出て他の人に感染したとして何が起きるのか。すでに万人単位の治験がベトナムで行われていますし、日本でも数千人単位で治験をしているんですよね。だから、もし、先ほどのポスターのようなおどろおどろしい問題が起きるなら治験で分かるでしょうし、とっくに大パニックになっていないとおかしい。
なので、シェディングはまず起こりそうなことでもないし、起こった所で特別な害悪があるとも思いません。前半で土方さんが看護師学会の声明で参照している論文について触れていますが、実はこれ、素晴らしい指摘なんです
論文の影響力の指標「インパクトファクター」も重要!

なぜかと言うと、今回参照した論文はインパクトファクター(学術雑誌の影響力を示す指標。掲載された論文がどれだけ引用されたかを示す平均値)が何にもない論文みたいなんです(笑)。
僕も最後まで読んで確認したわけではないですけど、他の先生たちもそのような指摘をしていますね。とにかく、ここで書かれていることには科学的根拠は殆どないということ。
あと、将来の安全性に関する問題も出ていますが、mRNAはそもそも脆いものなんです。それほど長く人体に残るというものではなく、だんだん消えていくというのが治験の中でも示されている話なので、ワクチン接種で体内で永続的に何かが起きるというものでもない。
この声明を発表した学会の方々というのは、そもそも何のためにワクチン接種の治験をするのかを理解しているのか疑問です。安全なのか、効果があるのかを確かめるために何千、何万人という単位で治験をしているからこそ認可されるわけで、それ以上でもそれ以下でもないですよね。
……と、ここまでで何かみなさん感じたことや聞きたい事はありますか?
ここで話を聞く前と後で全く印象が違いますね……!
うん、うん。そうですよね。ありがとうございます。他の方はどうですか?
私はこれを見た時に、きちんとした学会が発表をしたものということで鵜呑みにしそうになっていたので、土方さんの視点は鋭いなと。情報の出どころや内容、見出しだけではなく、読み込んで疑問を持つことも大事なんだなと思いました
うん、その気づきは大事だと思いますよ。怖い情報を出す人というのは、同じようなことをずっと言い続けるので。
以前、子宮頸がんワクチンの勉強会(【勉強会:前編】子宮頸がん(HPV)ワクチンを打つ?打たない?)でも話しましたけれど、現在でも日本ではHPVワクチン接種をする人が残念ながらまだ多くない。だからこそ、何に基づいてその話が出ているのか、その裏にどんなデータがあるのか、そこまで見るのが大事ですね。
でも、残念な事にさっきの土方さんと僕の質疑応答を聞くような人達というのは殆どいないんですよね(笑)。
だから、ある日美容院に行って突然チラシを見せられたり、『レプリコンワクチン、絶対に打たないでくださいね!』なんて言われたら、そっちを信じてしまう……というわけで現在はこういう状況になっているんです。そして、異例のことなんですが、こんなニュースが出ていました。みなさんにも知っておいていただきたいので共有しますね。なんと、レプリコンワクチンを開発したMeiji Seikaファルマが記者会見を開いたんです
※以下の記事で詳しく解説しています

【勉強会:前編】子宮頸がん(HPV)ワクチンを打つ?打たない?
2024.09.03
今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏が開催する勉強会にて「子宮頸がん(HPV)ワクチンを打つかどうか」をテーマに語ってもらいました。 私たち個人個人にも関係する内容とし […]
参考:日経電子版「明治HD系、反ワクチン団体を提訴へ 名誉毀損で」
このニュースは、『コスタイベ筋注用』についての記者会見なんですけれど、コスタイベはレプリコンを改良したワクチンで、批判を繰り返す団体を名誉毀損で提訴しますよ、というものです。ワクチンの供給に支障も出ているとありますね。
“医療従事者は客観的データに基づいて話すべきだ。誤った認識がこれ以上流布するのを防ぐため、訴訟はやむを得ないと判断した”ともありますが、先ほどの日本看護倫理学会の話を意識していることが分かりますね。相当強硬な手段に出たわけですが、業界的にもざわついているような状況です。
ちなみに、この話が出たことで何が起きているかというと、今度は日本看護倫理学会が『緊急声明に関するご報告』というのを発表したんです。
ここでは “また、一部において本学会の意図と異なる形で声明の内容が改変され、広められている事例が確認されております。さらに、9 月 27 日にはMeiji Seika ファルマ株式会社より要請書が送付されており、国民の命と健康を守る同じ立場として、建設的な対話を通じた対応策を理事会で審議中です。会員の皆さまには、理事会からの緊急声明に関する報告のタイミングや、学会の意図とは異なる文書の流布等により、ご心配やご不安な思いをおかけしてしまい、誠に申し訳ございません。”と書かれているんですね。
……みなさん、どうですか?
僕個人としては、何か遠い話だなと。インフルエンザや新型コロナウイルスのワクチンもそうなんですけど、自分が罹った時や自分の周囲の人に感染させないために接種するのであって、僕個人はワクチンに対して、その効果を知りたいだけですから(笑)。とはいえ、Meiji Seika ファルマの立場で考えれば売上にダメージがあるのは困るので訴訟するのでしょうけれど……という感じです
私も同じですね。ちょっと遠い感じがします
そうですよね。この声明に関するご報告を見ても、本当の意味で患者さんの方を向いていないよね、というのは感じます。
自分たちを守ろうとするだけじゃなく、間違った情報を書いてしまったなら謝った方が良いですし、サイエンスとしてどうなの?というだけの話なので、そこのところはちゃんと書いて欲しかったなと
言論の自由を守るためにも正しい視点を持とう!

今回のポイントだと思うのが、Meiji Seika ファルマがあそこまで強い手段に出たということですね。
医療を扱う学会が、根拠のあるエビデンスに基づかない情報で多くの人々を怖がらせてしまったのは良くない。勝手に使われたとか、誤用されていると書いていますけれど、それによって『お墨付きの情報が出た!』と反ワクチン派の人たちに思われたんです。学会という立場でこういう情報を発信してしまったんですから、それに関してはお灸を据えられるのは仕方が無いのかなと。
とはいえ、SNSで人々を怖がらせるような情報を出す人をすべて黙らせる……というのが正しいかというと、僕はどうなのかと思っています。おかしな情報が流れるのは仕方がないし、言論の自由もあるので。正しい視点だったり、こういう風に考えたら良いんだよ!という情報を発信する人がもっと増えて、それが目立つようになることが大事なんじゃないかと思っています
個人個人が情報を鵜呑みにせず、自分の視点で判断力を持つということですね
だからこそ僕も医療情報を発信していますし、心ある医療従事者で同じように正しい医療情報を発信していらっしゃる方も大勢いますし、こういった動きはある程度実現されてきているので、もっと拡大していくと良いかなと。
せっかく医療に携わるようになった、ここにいる若いみなさん自身がこういう時にどうするのかを“自分ごと”として考えるきっかけになれば良いなと思って今日のテーマに選びました。
では、最後はみなさんの方から感想やこんなやり方があるよ、という提案などをお伺いして締めましょうか
貴重なお話をありがとうございました。私も医療の知識は足りない所が多いですし、どうしても一般の方々と同じように最初に見たようなチラシを目にする機会の方が多いです。そういう場で『これは本当に根拠のある話なのか?』といった視点の情報が入ってこないというのが問題なのかなと思うので、今日知ったことを知り合いや家族に広めていこうと思いました
本日はありがとうございました。先ほどの学会の件もそうだったのですが、発信元が“学会”だと正しいと信じ込んでしまう危険性があると思いました。土方さんが言っていたように、学会とつく所が発信していても内容をしっかり見て判断することを学べましたので、私もこの点を周囲に広めていけたらと思います
貴重なお話、ありがとうございました。私も自分が製薬企業の案件に携わっているからこそ、情報を鵜呑みにするのではなく、情報を深く見ることが重要だと思いました
本日はありがとうございました。私も知識が無いので、専門的な話になると正しいことを広める前に、自分が正しい情報を判断する、見極める力を付けることが大事だと思いました
私もほぼみなさんと同じような意見ですが、大学でサイエンスに関わっていたというのもあって、今回のような情報が出回った時に『また変な事を言っているなぁ……』で済ませてしまいがちなんですが(笑)、そこを自分のような立場だからこそ、情報の取捨選択をしながら正しい情報を広めることが大事だなと思いました。ありがとうございました
SNS上だと論破してくる人がいますよね。偉い先生でも相手を叩きのめそうとする人がいますけれど、そうするとどうなるかと言うと、相手はもっと頑なになる(笑)。
だから、そこは論破することを目的にするのではなく、違う考え方があることに上手く気付いてもらうのが大事です。そういう意味でコミュニケーション手法も意識していく必要があるんじゃないかなと。100%間違っている人、100%悪意だけの人っていないと思うので、その辺りも僕は常に心掛けるようにしていますね
ありがとうございました。僕にとっても非常に学びがありました。改めて情報の見方を考えるということや、何に対しても視点を変えて考えることが重要だと思いました。今日参加したみなさんも学んだことを業務や私生活の中でも上手く活かしていきましょう。鈴木さん、本日もありがとうございました!
―― 製薬企業が訴訟を起こすほどの事態になったレプリコンワクチンですが、正しい知識を持つことやいくつかの視点に立って考えることができれば情報に振り回されずに冷静に判断できるということが学べました。また、私たちも医療・製薬業界に関わる企業として勉強会を通じて新しい情報とともに医療リテラシーを上げていける情報をお伝えしていきます。
この記事の担当者

佐塚 亮/Satsuka Ryo
職種:sales
入社年:2020年
経歴:大手スポーツメーカにて店舗sales,エリアマネージメント業務を担当。のちWEB制作会社にてWEBサイトの提案からディレクションをこなし、コンサルタントとしてサイト立ち上げ後の売上向上まで支援。その後2020年にメンバーズへ入社。主にクライアントからのヒアリング及び検証データを基に要件定義を行い、サイトの構築運用を実施。定常的に支援サポートを行う。クライアントはもちろんエンドユーザーの立場・視点に立ち、問題抽出から改善案の立案までを手がける