国内製薬企業ランキングまとめ!売上げや開発費から読み解く製薬業界の動向

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2021.09.15

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、製薬会社に関するデータのランキングをまとめてご紹介していきます。

企業規模の関係もあり、売上高などは大きく変わらないかもしれませんが、世の中の情勢が変わることによって少しずつ変化していく企業が出てくることがあります。

ランキングに関する記事は今後シリーズ化していきますので、定期的に製薬企業の動きを把握したい方は、ぜひチェックしてみてください。

ランキングで見る国内製薬企業の動向!

コロナウイルスの流行により、私たちの医療を取り巻く環境は大きく変わりました。ブログでも何度もお伝えし続けていますが、コロナ禍によって製薬会社のMRの動きにもこれまで経験したことがないほどのインパクトがあり、従来のリアルマーケティングのみの時代に戻ることはないと断言できるような状態になっています。

今では「デジタル」、「リアル」それぞれを使い分けられるハイブリッドなMRが必要になっているなど、医療・製薬業界ともに新たな時代に突入しています。

また、ミクス編集部「MR数調査2021年版」では、MR数は1年で1,000人以上減、コール数より生産性重視にシフトしたという調査結果も出ていました。そんな中で、売上高や研究開発費、売上上位の医療用医薬品のランキングが気になる方もいるのではないでしょうか。

ミクス編集部「MR数調査2021年版」 MR数1年で1000人以上減 コール数より生産性重視にシフト

今回は、新シリーズとしてランキング形式で製薬会社や医療用医薬品の動きを調査。さまざまな切り口で見る、医薬品や製薬会社のランキングに興味のある方はぜひ、ご覧ください。

国内製薬会社の売上高、営業利益ランキング

まず最初に、国内の製薬企業の売上高ランキングを見て行きましょう。

こちらは企業の規模にも左右されるので、上位の企業の変動はさほどないかもしれません。これらのデータは、長い年月を通して見ていくことで企業の変化がくみ取れる部分もあります。継続的に調査し、順位の変化を眺めてみると、また違うものが見えてくると考えられます。

※AnswersNewsのランキング記事を参考にメンバーズ側で加工。
<https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21102/>

1位の武田薬品工業は、COVID-19の世界的な流行拡大に伴う2020年度の連結業績への影響は、複数の要因が相殺し合ったため軽微だったとの報告が上がっていました。2020年度の売上収益合計の約82%を占めたのは、主要な5つのビジネスエリア、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス。財務ベース売上収益は合計2兆6,237億円となりました。

2位の大塚HDは、事業利益は上場以来の最高益となる2,169億円を達成したとのこと。グローバル4製品(エビリファイ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ)の売上収益が14.5%成長し、連結業績を牽引したようです。

3位のアステラス製薬は、特に第1四半期におけるCOVID-19の影響による売上減少や独占販売期間満了、日本での販売契約終了による売上の減少があったものの、がん領域の主力品、前立腺がん治療剤「XTANDI」、抗体-薬物複合体「PADCEV」、FLT3 阻害剤「ゾスパタ」等は力強い成長を継続していました。

※AnswersNews:ランキング: 【2021年版】国内製薬会社ランキング 武田、今年も3兆円超えでトップ…コロナ禍でも海外は好調

※武田薬品工業株式会社 ニュースリリース:2020年度は力強い利益率と強固なキャッシュ・フローとともに安定的な業績を達成、 2021年度には実質的な売上収益成長のさらなる加速を見込む

※大塚HD 2020年度決算説明会(PDF)

※アステラス製薬株式会社 2020年度決算概況(PDF)

国内製薬会社研究開発費ランキング

次は、研究開発費にどれくらいかけているかを見て行きましょう。

これらの費用も企業規模にほぼリンクしていますが、武田薬品工業は2位の第一三共のほぼ倍の開発費になっていることに驚かされます。

※AnswersNewsのランキング記事を参考にメンバーズ側で加工。
<https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21102/>

売上高とともに研究開発費もダントツの1位となった武田薬品工業。世界規模の研究開発体制は、社内の研究能力を活用するとともに、世界中の革新的なエコシステムに積極的に関わることによって推進されているようです。

今後も約40以上の優先順位の高い新規候補物質の開発と新たな提携をさらに推進し、またオンコロジー領域の強化、臨床試験開始、およびデータとデジタルサイエンスにおける能力を高めるため、研究開発投資を5,220億円へと拡大する計画です。2021年度は、年度末までに最大6件の承認申請を計画し、4つの承認獲得の可能性も見込んでいるとのこと。

※AnswersNews:ランキング: 【2021年版】国内製薬会社ランキング 武田、今年も3兆円超えでトップ…コロナ禍でも海外は好調

国内・グローバル 医療用医薬品売上ランキング

次は、国内と全世界に分けて医療用医薬品の売上げが多い製薬会社のランキングを見てみましょう。

※各社の公開情報等からメンバーズにて作成

こちらも1~3位のランキングの武田薬品工業、第一三共、大塚ホールディングスなど大手の製薬会社が並んでいますが、4位以下は医療用医薬品に絞ると、売上全体とはまた違った並びに変わります。

さらに、1位と2位の売上高の差もそこまで開いていないというのもリアルな数字ではないでしょうか。5位のメルク(MSD)は、がんの治療薬「キイトルーダ」を製造しており、がんの多い日本では売上額も連動していることが想像できます。6位のノバルティスも同様に、患者数の多い糖尿病の治療薬「エクメット」や「エクア」を製造しています。

※各社の公開情報等からメンバーズにて作成

そして、グローバルで見た場合の医療用医薬品の売上は、ノバルティスが1位に。日本で1位だった武田薬品工業も全世界で比較すると10位になります。

ノバルティス、ロシュ、ともにスイスの企業となっており、ノバルティスは眼科用VEGF阻害剤「ルセンティス」や糖尿病治療薬が売上の上位を占めています。ロシュは、がん治療薬に強みがある企業で、結腸がんなどの治療薬「アバスチン」(日本では中外製薬が販売)や悪性リンパ腫治療薬「リツキサン」、乳がん治療薬「ハーセプチン」を製造しています。

※参考データ:ミクス編集部「製薬企業各社の2020年度業績 国内・グローバル製品別売上ランキング」

国内新薬承認取得数ランキング

製薬会社では、既存の医薬品を販売する以外にも新薬の開発が行われています。新薬開発は臨床試験の後に厚生労働大臣による承認が行われ、発売されることになります。各製薬会社でどれくらいの承認を取得することができたのかを見て行きましょう。

※AnswersNewsのランキング記事を参考にメンバーズ側で加工。
<https://answers.ten-navi.com/pharmanews/20425/>

1位となった小野薬品工業株式会社は、主要製品に抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」がありますが、それ以外に11の承認を取得していました。2020年は、パーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off 現象)の改善、末梢 COMT 阻害剤「オンジェンティス」や抗悪性腫瘍薬 ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「ベレキシブル」などが承認されました。また、グローバルで見た場合には、韓国・台湾においても承認数は増加傾向とのこと。今後はアメリカ・ヨーロッパにも展開していくことが課題とされています。

2位のノバルティスファーマは、眼科用VEGF阻害剤「ベオビュ」のほか、20年6月にアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト」、発性硬化症治療薬「メーゼント」、LABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤「エナジア」など、同時期に5つの製品の承認取得をしていました。

※AnswersNews:ランキング 2020年 国内承認取得数ランキング…トップは11承認の小野薬品、新規成分はノバルティスが6つで最多

※小野薬品工業 ESG説明会_スクリプト 2021年3月(PDF)

※ノバルティス ファーマ、2020年6月に5つの新製品の製造販売承認を取得 幅広い領域で患者さんに新しい治療選択肢を提供

製品別:医療用医薬品 国内売上高ランキング

こちらは、製品別で見た医療用医薬品の国内売り上げです。どのような製品が売れているかを見ることで患者数の多い病気の傾向が分かり、日本に住む人々の健康状態が見えてきます。

※AnswersNewsのランキング記事を参考にメンバーズ側で加工。
<https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21380/>

1~3位は、キイトルーダ(MSD)、オプジーボ(小野薬品工業)、タグリッソ(アストラゼネカ)は、がん治療に関わる製品となっていました。また、がん治療薬は薬価が高額のため、売上の上位を占める結果にも繋がります。

ちなみに、オプジーボの値下げは8月にも行われる予定となっていますが、体重60キログラムの肺がん患者がオプジーボを使うと、年間で1700万円。キイトルーダを使うと、年間1400万円もの費用が掛かるという計算です。

そして、4位のタケキャブ(武田薬品工業)、8位のネキシウム(第一三共)は胃・十二指腸潰瘍などの治療薬。5位のアジルバ(武田薬品工業)は、高血圧症の治療に用いられる薬。全体を通して薬価や患者数の多さが製品数の売上にも反映されていることが分かります。

※【2020年度 国内医薬品売上高ランキング】トップ3は「キイトルーダ」「オプジーボ」「タグリッソ」抗がん剤が上位独占

薬効分類別:国内医療用医薬品売上高ランキング

医療用医薬品の薬効別で売上をチェックしてみると、やはり抗腫瘍剤(抗がん剤)が1位という結果に。2位の糖尿病治療剤の倍以上の売上高であることが分かります。

※AnswersNewsのランキング記事を参考にメンバーズ側で加工。
<https://answers.ten-navi.com/pharmanews/21080/>

がんについては今後も人口増加と高齢化、食生活の偏り等によって患者数の増加が見込まれています。そのため、抗がん剤市場は世界規模でもまだ成長していくと予測されており、例えば、これから副作用が少ない抗がん剤が登場することになれば患者の注目も集まり、さらに市場も伸びていく可能性があるかもしれません。

2位は糖尿病治療剤となっており、がんとともに罹患する人の数が多い疾病の治療薬が上位を占めていることが分かります。3位は免疫抑制剤で、あまり馴染みのない薬剤ですが、臓器移植の拒絶反応を抑えたり、自己免疫疾患・アレルギー性疾患の治療で使用される医薬品です。

※AnswersNews:国内医薬品市場 20年度はマイナス2.7%…改定とコロナで打撃|トピックス

世界情勢や患者数に連動する製薬会社&医薬品市場の動向から目が離せない!

さまざまな製薬会社や医薬品のランキングをチェックしてきましたが、国内医薬品市場(20年)は2.4%減の10兆3717億円3300万円(IQVIA調べ)というデータが出ています。

日本の医療費は徐々に増えていますが、医薬品の市場の低下は新型コロナと薬価改定が響いていたようです。また、冒頭でもお伝えしたように製薬会社のMRの数が削減されていたこともあり、それらも含めて今後の医薬品市場の売上高がどう影響し、推移していくのかも気になる所です。

MMでは今後も製薬業界のランキングを見ながら業界の動きに注視していきます。