【セミナーレポート】ゼロから始めるDX推進! 運用のメンバーズから見た”製薬業界にDX推進が必要なワケ”とは?

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2021.11.30

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は7月29日に行われたオンラインセミナー「製薬業界のDXって実際どうやるの?ゼロから始めるDX推進」のレポートをお届けします。メンバーズメディカルマーケティングカンパニーのユニットリーダー佐塚さんの基調講演や、UXリサーチリーディングカンパニーのポップインサイトのカンパニー社長、久川さんと佐塚さんとのトークセッションも交え、DX推進に必要なものについてそれぞれの視点で語ってもらいました。DX推進にお悩みのデジタル担当者の方は、ぜひ、ご覧になってください。

MRのマーケティングはデジタルがスタンダードに! 製薬業界には今後もDXが必要!

今回、オンラインで行われたセミナーは、佐塚さんの基調講演からスタートしました。

ここでは、改めてDXが必要になった背景を説明。現在のコロナ禍の影響もありますが、それ以前から病院への訪問に規制が掛かっていたこと、また、製薬会社ではMRの減少が続いていたことをお伝えし、ご参加いただいたみなさまと認識を合わせてセミナーを開始しました。

製薬業界では対面によるMRの情報提供は今後も減り、デジタルでの活動が中心となっていくことが考えられています。この流れは新型コロナウイルスの流行が終わったとしても変わらないと予測されており、このタイミングでDX推進が必要ではあるのは間違いないのですが、佐塚さんによると問い合わせをしてくださる製薬会社の担当者さまからは、

「何からやって良いのか分からない」、

「顧客視点が分からない」、

「従来のやり方からの変更がしにくい」etc…

というような声が多いのだとか。 DXが必要であることは他の業界でも同じであり、さまざまな革新的な事例が周囲に溢れていたとしても、「自分ごと」として具体的な道筋を見つけていくのが難しいのかもしれません。

「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」、類語も含めてDXの定義をおさらい

また、佐塚さんは「DXという単語が一人歩きしているのでは?」 ということにも触れ、「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」という類語もあり、それらの区別も曖昧であったり、DXの本質が理解できないという方も意外と多いということを伝えていました。

ここで再度、DXの定義をおさらいしてみると、
経済産業省のガイドラインではDXについては以下に定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

また、戸惑う方が多い「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」も併せて、この段階で意味の違いも把握しておきましょう。

【デジタイゼーション(Digitization)】
プロセスは変えず、アナログからデジタルに変換すること。

【デジタライゼーション(Digitalization)】
デジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変化させ、新たな利益や価値を生み出す機会をもたらすこと。

【DX(デジタルトランスフォーメーション)】
デジタル技術を活用し、顧客や社会ニーズを基にビジネスモデルだけでなく、組織・プロセス・文化を変革し優位性を獲得すること。分かりやすく言えば、インターネットがあることでビジネスを組みなおし、ビジネスを成功に導くこと。

そして、聴講されている方が気にしていたと思われるのは、「DXを推進するとコミュニケーションにはどのような変化が起きるのか?」ということです。 この答えは、DX推進によって、それぞれの層の顧客への最適化されたコミュニケ―ションが可能になっていくということ。リアルとデジタルの施策を掛け合わせることで、これまでカバーしきれていなかったドクターとのコミュニケーション、ドクター一人一人に合わせた情報提供ができるようになるということを説明しました。

変化の多い時代に対応するなら「アジャイル型運用」という手段も!

さらに、「最適化されたコミュニケ―ション」を実現する方法の1つに【アジャイル型の運用】があると語った佐塚さん。 企画の検討~仮説の立案までを高速で運用できることから、運用方針の転換をすることもDX推進へと繋がる一歩になると説明。次のトークセッションでアジャイル型の運用のメリットなどを挙げつつ、製薬会社のDX推進について語ります。

トークセッションで製薬業界のDX戦略を語り合う!

ここからメンバーズのグループカンパニー、ポップインサイトカンパニーのカンパニー社長、久川 竜馬さんに登場いただき、佐塚さんとのトークセッションが開始しました。

そもそもDXって何?

 佐塚さん:
「先ほども少し触れましたが、『やっていることがDXなのかどうなのか?』など、今の段階でのDXについては単語先行になっていると感じています。 “デジタイ~”、“デジタライ~”…の違いなども浸透していないのが現状ではないでしょうか? そこを理解してから始めるのが重要かと思うのですが…いかがでしょう?」

久川さん:
「僕はそこはファジーに考えていて。どのような形でもデジタル化を推進して事業を変革していけば良いのではないでしょうか。DXじゃないからやらないというのもナンセンスなのでは? と。やろうとしていることが何に繋がっているのか、それがDXであればいいのではないかなと思っています」

佐塚さん:
「そうですね。企業さまが達成すべき目的・目標、さまざまなものがあるかと思いますが、この時代に合った達成の手段としてDXがあるのかなと。とはいえ、難しく考えずにDXや“デジタイゼーション”、“デジタライゼーション”…など似ているけれど意味が違う単語があることをまず理解していただければと思います」

時代に取り残されないための業務フロー改善方法(アジャイル型運用について)

佐塚さん:
「業務フローの改善こそがDX実現のカギになるのではと思っていますが、その辺りを久川さんからお話しいただければと思います」

久川さん:
「今はVUCAの時代と呼ばれ、変化が激しく多様性を求められる時代の中においては、アジャイル型のアプローチが有効かなと思っています。先ほどもお話しいただきましたが、いかに今の業務や業務改善のプロセスをアジャイル型にしていくかが重要かと思っています。ウォーターフォールか、アジャイルか…という点では、みなさんあまりご自身に関係がない事と思われるかもしれませんが、アジャイルの本質は早く・短くというだけではないので。製薬業界では難しいことかもしれませんが、その辺はどうしていけば解決できるのかを佐塚さんとお話しして行ければと思っています」

佐塚さん:
「よろしくお願いいたします」

久川さん:
「基本的な事ですが、ウォーターフォールというのは、半年とか一年という長い期間の中で細かく要件を詰めっていったり、物を作り、サービスを固めていく…というような手法です。これまでの時代は、ここまで変化のスピードが速くなかった事や、拡大再生産の需要が多かったのでこれで良かったのです。今はVUCAの時代となり、変化や多様性の時代の中で、方針や前提自体が大きく変わってしまったりという事で作り直さねばならないケースが増えていると感じています。こういった外的要因にも短いスパンで対応できるようにアジャイルで開発したり、新サービスを考えたり、サービスを改善できる仕組みを持つことが重要かなと思っています。製薬の現場ではどう取り入れるかというのはあると思いますが。佐塚さん、いかがでしょう」

佐塚さん:
「そうですね。製薬業界ではウォーターフォール型のプロジェクト進行が必要になるケースというのはあります。命に関わる薬剤を扱う業界ですから、アジャイル型のトライアンドエラーを繰り返すような俊敏性・柔軟性を重視したプロジェクト進行ではなく、あえてウォーターフォールにして長いスパンでやることはあります。それ以外の部分では、既にある薬剤をどうユーザーに届けるのか? のような課題に対してはウォーターフォールでのプロジェクト進行だと届けにくくなってしまう。そういった小さい業務フローからアジャイル型を取り入れると上手く改善するのかなと思っています。なので、そのプロジェクトがウォーターフォール型の方が上手く行くのか、アジャイル型の運用に切り替えるべきなのかというジャッジが今後は重要になって来るのかなと思っています」

久川さん:
「おっしゃる通りですね。どのようなケースでウォーターフォールかアジャイルか…という判断をしているのでしょうか?」

佐塚さん: 
「例えばですが、Webサイトを活用して医療従事者の方に薬剤の認知向上をする時などはアジャイル型に特化した方が良いと考えています。具体的な例ですと、BtoCで患者さまに向けたWebサイトを運用している時は、ウォーターフォールよりはアジャイルの運用を取り入れた方が企業さまの目標達成に近づきやすくなると思います」

久川さん:
「ありがとうございます。勉強になります」

佐塚さん: 
「なので、このテーマに対しての答えとしては、ウォーターフォール、アジャイル、それぞれの開発手法の性質のどちらがプロジェクトに適しているかを判断し、運用することが重要なのかなと思っています」

久川さん:
「1つ、アドバイスというか、ご提案なのですが…。アジャイル型にしていくためには、自分たちがやったことに対するフィードバックを定期的に得るような仕組みにしていただきたいなと思っています。アジャイル型はスピーディーな開発であるだけではなく、本質は外的要因の変化、前提条件の変化に対して俊敏に対応できるという事です。やりっぱなしにしてそのままにするのではなく、あくまで自分たちが実行したことがユーザーなどにどんな影響を及ぼしたのか。それがポジティブなのか、ネガティブなのかを常に理解しながら、ネガティブなら直す、ポジティブならそれを強める。それがアジャイルの価値なので。そのフィードバックを得なければ、単に短いアジャイルを繰り返すことに過ぎなくなってしまうので。そう言った面を取り入れるようにして欲しいなと思います」

佐塚さん:
「ありがとうございました。柔軟性、対応力が必要という事ですね。私も非常に勉強になりました」

■UX(顧客体験)の観点からプロダクト改善を行う事例

こちらでは、ポップインサイト社のプロダクト改善が、どうDX推進へと繋がったのか事例を紹介いただきました。

久川さん:
「ポップインサイト社の業務内容でもある、ユーザー体験・顧客体験をどう考えるかということや、フィードバックをどう得るかということを、私たちはUX     リサーチ(ユーザテストやインタビューなどの定性的な調査)を通して行っています。

その方法は、実際にWEBサイトやアプリをユーザー(お客さまや社内メンバー)に使ってもらって行います。それによって、何を改善したらいいのか、何に困っているのか、悩んでいるのか、サイトをどうしたら使ってもらえるのかを調査しています。

以下から、みなさまにイメージしやすい事例をピックアップしてご紹介していきます」

【CASE1】保健情報サイト:LPで仮説検証し、本体サイトに展開


申し込みたいと思うか? 何を考えながらサイトを見て、何が分からないと思うかを調査し、ユーザーの不安を払しょくすることで気になっていると感じたポイントを改善、CVRが1.2倍となりました。こちらは情報精査をすることによる、CVRの改善事例です。

【CASE2】ブライダル企業サイト:ユーザテスト×ABテストで成功率8割!

こちらはA/Bテストの事例です。上記と同じような形で、ユーザーはどのような事を気にしていて、どのような事を知りたいのかを調査。これによって来店予約が1.5倍になりました。

【CASE3】自動車保険サイト: アクセス解析なし・デザイン変えなくとも成果あり

ユーザテストによってサイトデザインなどを大きく変えることを不安に思う方もいらっしゃいますが、必ずしも変更することは必要ではなく、ユーザーの不安を払しょくし、申し込みたくなるような情報を提供することが本質です。これによってCV数が10倍になりました。

【CASE4】中古車査定サイト: バナーでニーズ別ボリュームを把握

購入までの検討フェーズが異なることをユーザビリティテストとインタビューで発見した事例です。サイトに訪問する前の段階に合わせたバナー広告やLPで申し込み数を1.5倍へと改善できました。

【CASE5】小売店ECサイト:売上より店舗送客の価値が高いことを発見

ユーザー調査によってWEBサイトの使い方は、そのサイトから購入するために使うのではなく、新商品チェックや実際の店舗で何を買うのかを検討するために、カタログとして使っているユーザーが居ることが判明した事例です。WEBサイト単体ではなく、店舗に訪れる総客数やサイト経由の訪問がどれくらいなのかで見ていくことが大切になります。

【CASE6】タブレット教材:検討~申込~利用後のカスタマージャーニーを把握

申し込み前~利用後のそれぞれのフェーズでの調査を実行した事例です。ユーザーの行動や求めることを知ることによって、サイトだけ、教材だけ、という形ではなく、ビジネス全体を通した課題を発見できるようになりました。

【CASE7】スマホ向けアプリ検討:ブレインストーミングのための材料集め

こちらは他の事例とは少し異なり、アプリ検討時のブレスト用の資料として、そもそも何をすればいいのか? を発見するために実施したものです。
さまざまなモニターにスマホのスクリーンショットを送ってもらい、アプリの優先順位などを調査しました。

【UXリサーチの活用シーン】

DX支援の場合は、下の2つ目の四角、アイデア企画~プロトタイプを作るまでで支援を行うことが多くなっています。「何のためにDXを行うのか」「DXでお客さまの何が改善するのか」という方針を考えていくことで、クライアントのみなさまのDX推進へと繋げていきます。

佐塚さん:
「(『UXリサーチの活用シーン』の図を見ながら…) 少し伺いたいのですが。ユーザー理解のフェーズがアイデア企画のフェーズに入るとおっしゃっていたんですが、我々としてもDX推進をして行くうえで、こちらの表の上でチームビルディング、顧客理解を通じてチームの統一感を高めるという意味で言うと、ユーザー理解をしながらチームの中で統一感を深めなくちゃいけないのかなと。どちらかというとチームビルディングの中にも入ってくるのかなという認識です。チームビルディングをしたうえでユーザー理解に入る方が、DXを進めていく場面では良いのかなと」

久川さん:
「順番としては、仰っていただいた通りで。チームビルディングの中でユーザー理解を通じて目線を合わせる、チームを作る…というのも重要なので。その理解で間違いないです」

佐塚さん:
「ありがとうございます。DXを支援するうえで最初の段階でユーザー理解をするということ。医療業界で言えば、患者さん、医師、薬剤師の方などがどう思っているのかということですね」 

製薬業界のDX推進を加速させるために今からできること

佐塚さん:
「それでは、最後のテーマについてお話しいただければと思います」

久川さん:
「色々考えてみたのですが。ユーザーの声を聞くのが第一歩だし、すぐにできることだと思います。また、経産省が進めている『DX推進指標』を見ていただくと、どれだけDXを実現できているのかをチェックして自己評価することができます。

DX推進組織の課題としてよく聞くのが、経営者がDX、デジタルの重要性を理解していない、『DXをしよう』と号令が出ても具体的に何を、いつまでにどうするのかが良く分からない。DXという言葉が独り歩きしているという状況です。やはり、その中での第一歩として、ユーザーや顧客に質問をするというのが一番良いと思っていて。     DXでどんな状態を実現すべきなのか? 何を課題に感じているのか?ということを、ユーザや顧客に聞いて理解し、指針やビジョンに設定して改善することが重要だと思っています。こういった声を参考に小さい所から何を改善するのかのビジョンを作って行くのが第一歩としてやりやすいのかなと。

また、こういったユーザーやお客さまの声を上層部へ報告していくと、外圧的に経営者に意思決定を促すことも出来るので、そういう意味でも、まずは自分たちの小さな改善のための最初の種をまく…という事が重要ではないかなと。誰かのフィードバックを元にアジャイル型で小さな改善を繰り返し、Webサイトが1ページ改善できたり、営業資料を一つ直す。今できていないことを少しずつデジタル化し、その結果の事例やノウハウがたまり、他部署に展開されていく…というようなサイクルをだんだん大きくしていくイメージです」

佐塚さん:
「ありがとうございます。我々としてもユーザーの声を聞いて小さなところから成功体験・事例を増やしていくことによって、製薬業界のDX支援を加速化できるように感じています。本日は非常に勉強させていただきました、ありがとうございました」

必要なDXは何なのか? DXの本質を見極め、開発手法を変えて行こう!

今回は、MMのメンバーだけではなく、ポップインサイトの久川さんとの対談になったことで新しい視点でDXをとらえることができたのではないでしょうか。

そして、本日のトークセッションを参考に、DX対応に手をつけられず戸惑っている製薬企業のデジタル担当者さまも、DXのきっかけは自分たちのやろうとしていることが最終的にDXに繋がるかどうかという観点で捉えていただけるようになれば幸いです。また、DX推進中の製薬企業さまにつきましては、「ウォーターフォール開発か? アジャイル開発か?」というジャッジについても、製薬会社であるからこそ、ウォーターフォールを選ぶこともあれば、アジャイルで小さく改善例をアピールすることも可能であることを念頭に置き、現場に合ったものを選んでいただければと考えています。

さらにDX推進ついて判断したい、相談したいということがございましたら、お気軽にMMまで問い合わせください。

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