メディカル・インサイト 鈴木英介氏 インタビュー:前編【疾患啓発サイトの重要性と役割】

インタビュー

公開日:2023.08.02
更新日:2024.06.24

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏へのインタビューです。

テーマは「疾患啓発サイトの重要性と役割」。前半は製薬企業の現状と絡めて今後の運用の方向性などを語っていただきました。デジタル活用にお悩みの製薬業界の方は、ぜひ、ご覧ください。

SNSも使い方次第! デジタルのトレンドで変わる患者の行動

―― 今回の新企画は「疾患啓発サイト」です。これまでの鈴木さんの製薬企業のコンサルティングの実績などから制作のポイントや運用にあたって必要な視点についてインタビューさせていただこうと考えています。

これからの医療環境をより良いものにするために疾患啓発サイトがいかに大切なものであるか、何をポイントに制作運用するべきか、過去事例のエピソードなどと併せてお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

鈴木氏「よろしくお願いします」

―― 私たちも疾患啓発サイトのご支援に携わってきましたが、この数年の間のDX推進、コロナ禍でデジタルに関して患者さんや医療従事者も含め、Webサイトの活用に積極的になっているように感じます。

インターネット活用に関して患者さん側の変化は感じていますか? また、医療従事者であれば、MRへ直接連絡を取ることから製薬企業のWebサイトからの情報取得に移行しつつある(または、思ったほどWeb活用はしていない)など、サイト活用を取り巻く状況を教えていただけますでしょうか。

鈴木氏「それでは、患者さん側の話からして行きましょう。まずはペイシェントジャーニーを『病気に気付く』、『調べる』、『受診する』、『治療を継続する』と設定しましょう。

『調べる』という所に関しては、10数年前までは高齢者がオンライン上のリソースを使うというイメージは無かったけれど、今は70代でも普通に使いますね。そういうイメージに変わって来たかなと。これは世の中のWeb活用の推移と重なっていると思います。

そして、若年層はSNS。Instagram、Twitter、TikTok、その中で情報収集を済ませるパターンが増えた。長い文字を見るより、動画をパッと見て理解する。それで良いのかどうかというのは、また別の話で(笑)。作り手側は、こういう見せ方をフックにして作らないといけない……というような変化を感じます。

次の『受診する』というフェーズでは、コロナウイルスの対応でオンライン診療がある程度は選択肢に入ってきています。対応する医療機関も増えてはいますが、それが主流になって行くというような話にはまだなっていないのかなと。

患者さんにとってオンライン診療したい場面というのを、もうちょっと調査した方が良いと個人的に感じています。というのは、そういう場面はある程度限定されてくると思うからです。例えば、忙しく働いている世代で詳しい診療ではなく、いつも処方してもらえる薬が欲しいだけの時、とか。

そういう時にこそオンライン診療は必要だし、マッチする場面と思いますが、現状のサービスが果たしてこうしたニーズにしっかり応えられる設計になっているのかどうか、疑問です。着実に広がりつつあるとは感じていますが。

そして、『治療を継続する』というフェーズでは、さらにまだまだ……でしょうね。例えば、アプリの“おくすり手帳”も一定数の患者さんは使いこなせていても、それほど多くの患者さんに広まって使いこなせているイメージがない。患者さんサイドだとこんな感じですね」

―― やはり現在の若年層のデジタルの流行は、TikTok(動画)やInstagram(画像)で、そこからの情報発信が多く、ユーザーが自分の好きなものを投稿してニーズを満たしていますが、私たちが携わる医療や製薬業界の情報は“正確であること”、“信頼性が高いこと”が必須ですよね。

業界としてフィットするツールや表現なのかは疑問なので、やはり、Webサイトの必要性はあるのかなと思いました。

鈴木氏「そうですね。正しい情報を届ける……という事を考えると、TikTokがフィットするかというと疑問ですが(笑)。ただ、幸か不幸か、病気になる方の多くは中高年なので、若年層のトレンドは掴んでおきつつも、フォーカスは中高年で良いと思います」

医師の行動はデジタル化で追跡しにくくなっている?!

―― では、医療従事者側のデジタル活用はいかがでしょうか。

鈴木氏「お医者さんサイドは、製薬会社側の視点で見ると分かりづらくなってきていると思います。大別して、『オンラインで情報収集する』、『MRから(リアルで)情報収集する』、『積極的に情報を収集しない』というタイプがあって。

とはいえ、昔のように必ず担当MRが付いて先生の情報がある程度分かる状況じゃなくなってきていているので、先生が何を考えて、どう行動しているのか見えにくくなってきています。製薬会社のオウンドサイトやメルマガに登録している先生は、そこから見えるので良いのですが。

でも、そこに引っ掛からない、現場でMRもフォローしきれないような先生が結構出てきているかなと。だからこそ、製薬会社側からはマルチチャネルやオムニチャネルという言葉が出てくるのだと思います。

どこのボタンを押せば、対象の先生が情報を取ったり動いたりしてくれるのか、個別化が進み過ぎて見えづらい状況になってきているなぁと。それが大きな流れとして感じている事です」

―― さらに言えば、医療・製薬業界のマーケティングには独特の難しさがありますよね。例えば、製薬会社が直販したり、Webサイトで販売できる商品ではないため、売上金額のような具体的な成果が見えにくいという点。

製薬会社側でもWebサイトの運用のお悩みとしては多いと思います。このような課題をフォロー、解決する手段はどのようなものがありますか?

鈴木氏「これは“超”重要なポイントだと思っています。多くの製薬会社が疾患啓発サイトを作っていますが、KPI/KGIをちゃんと定義したり、それが最終的な売上にどう繋がっているのかを検証したりというのは、やり切れていない所が多いと思います。

サイト上のKPI、例えば『病院検索』のボタンがどれ位クリックされたかなどは見ていると思うんです。でも、それがCPAとして投資金額に見合うものだったのか? そこまで考え抜いてPDCAを回しているか……というと、心もとないよね、と(笑)。

もう一つ、本来は製薬会社側がちゃんとやらなければならないのですが、疾患啓発をお任せしている広告代理店さんなどに全部丸投げしてしまう傾向があります。代理店も丸投げされて検証した時に、『上手くいきませんでした』という答えは出せないですよね。

だから、検証に関しては代理店に頼るのではなく、製薬会社が自前でやるか、別の企業に依頼すると良いですね。ちなみに、メディカル・インサイトではそういった仕事もしていますが(笑)」

投資対効果を検証するのは「誰の」役割なのか

―― 代理店側の私たちからしても、検証についてはそうしていただく方が助かります……。

鈴木氏「そうですよね。代理店さん側は当然、お金をじゃんじゃん使わせたい。そこに対してモチベーションも働きます。でも、それでどんな成果があったのか。投資対効果として見合っているか?

やはり、そこまではやり切れないし、やりたくないという所もあると思います。だから、先ほど言ったような手段も考えて検証しないと勿体ないなと思いますね。それに、いくら掛けて結果どうだったか? というところは、投資してもらう人たちも含めて厳しい目で見ていく必要がある。

製薬会社の上層部だけじゃなく、デジタルマーケティングの担当者自身も答えを求める必要があります。だって、これが自分のお金だったらそうしますよね(笑)?」

―― 私たちも投資してもらう側なので、切っても切り離せない部分ですね! また、製薬会社の場合、医療関係者向けのサイト(HCPサイト)の費用対効果という課題もあるかと思います。患者さん向けとは目的が異なりますが、やはり処方数がKGIとなるのでしょうか?

鈴木氏「そうですね。最終的には処方数になるとは思うのですが、これは患者さん向けも同じで処方数の変化というのもそうだし、それ以前にサイトで伝えたい情報が伝わっているのかどうかというのがあります。

一つ手前の段階でそれが伝わって理解されているのか? サイトを見ている人/見ていない人でその後の行動がどう違うのか? そういう検証を製薬会社としては行なうべきです。

ここに関しては代理店……みなさん(メンバーズ)側ができることではないわけですよ。例えば、新しい代理店を使ってサイトをリニューアルしたとして、その前後で何が違うか。そういったフィードバックは、製薬会社自身が定期的に取っていないと分からないので」

―― それはまさにいま、求められることですね。プロトタイプを作った際に、どのタイミングでユーザーインタビューをするのか等、そういった部分が非常に重要なのだろうなと。

とはいえ、コストが掛かることなので、製薬会社さま側に啓蒙していくことも必要だなと感じました……。

鈴木氏「定期的にちゃんと効果検証していくのに調査費用は掛かりますが、そもそも医療従事者向けサイトを構築して運用していく金額と比べたら微々たるものですよね(笑)。だから、最初からやるものだ、という認識で行ってもらわないといけないでしょうね」

退屈なコンテンツは不要! 医師に役立つ情報で継続利用されるサイトへ

―― では、その先に医療関係者から求められる、「使いやすい医療関係者向けサイト」として運用するにはどのような工夫が必要でしょう。

鈴木氏「いや、これが分かっていたら……ねぇ(笑)。コンサルティング料がすごく要る案件ですよね(笑)」

―― すみません……! ストレートに答えを求め過ぎました……。

鈴木氏「とはいえ、真面目な話、お医者さんのインサイトをまずは取る必要があるのかなと。僕のこれまでの経験からすると、オウンドサイトの難しさっていうのは、医者側の立場からすると『見なくてはいけないサイトが一体いくつあるんですか?』っていう話が根本にあります。

なので、定期的に見たくなるコンテンツがあること、そちらが大事のような気がしますね。僕が編集長を務める、がんの病院・医師情報サイト『イシュラン』では、医療情報をだいたい月1回配信するメルマガもやっています。

基本は患者さん向けに書いているのですが、医療従事者の方も読んでいたりします(笑)。それは、医療従事者的にも面白いと思ってもらえるコンテンツだから。製薬会社の出すコンテンツって、ハッキリ言うとつまらないんですよ。お医者さん側からすると。

製薬会社の分かりきった製品の話を見たいわけでもない。『この会社のサイトは見ておこうかな』、『時々見たくなるな』そう思ってもらえるような、もっと”攻めた”プッシュコンテンツが必要でしょうね。自社製品の話にこだわり過ぎないことがポイントだと思います」

―― さらに重要な疾患啓発のポイントについての話は続きますが、前半は一旦ここまでとなります。

引き続き、製薬業界のWebサイト運用や疾患啓発の役割について改めて考える内容が語られていきますので、後半も楽しみにお待ちください。