【医療情報×SNS勉強会:後編】情報を見極めるポイントをチェック!

コラム

2024.03.06

SNSで医療情報を収集する際に気を付けるべきこと

みなさん、こんにちは。広報担当です。今回は、私たちの顧問であり、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長を務める鈴木氏と弊社社員による勉強会のレポート後半です。テーマは引き続き「医療情報×SNS」です。身近な情報発信ツールによって医療の情報は誰によってどんな発信がされるようになっているのか。そして、情報を受け取る際に何に気を付けるべきかなどついて質疑応答を交えながら解説しています。ぜひ、ご覧ください。

SNSの怪しげな投稿にも理由がある?

佐塚さん「では、後半も『医療情報とSNS』について、引き続きよろしくお願いします」

鈴木氏「よろしくお願いします。では、前半に続いてみなさんはSNSでどのような方をフォローしたり、チェックしていますか?」

マルダンさん「YouTubeでよく見る、アメリカのお医者さんのチャンネルがあります。病院で起こったことや、病気の対応方法が紹介されています」

鈴木氏「ありがとうございます。アメリカの方が圧倒的にYouTubeを活用されている先生は多いだろうなという風に思います。若いお医者さんの教育という意味もあるでしょうね。みなさん、X(旧Twitter)は日常的に見ていますか? (挙手をチェックして)……半分くらい。では、Instagramは? (挙手チェック)……こちらの方が優勢ですね! Facebookは……みなさん手を挙げるのをためらっているのはなぜでしょう(笑)。YouTubeは(挙手チェック)……たくさんいらっしゃいますね。ある意味、YouTubeは普遍的に見られているのかもしれないですね。医療情報の為かどうかというのは別の話で。医療従事者のフォローはいかがですか?」

菰田さん「あの、TikTokでフォローしているわけではないですが、美容整形をおすすめしている怪しげな先生の動画が流れてくることがありますね(笑)」

鈴木氏「ありがとうございます。TikTokを出しそびれていました(笑)。最近の中高生なら他のSNSよりTikTokの方が見られているのかな、という感じですね。美容整形業界の方たちというのは、こういうものに感度が高いというか、自分のお客さんになるターゲットがどんなメディアを見て、どんな行動をとるのかを一番考えていますね。あとは、みなさんは、コロナ禍の頃はどんなSNSの情報を見ていました?」

センセーショナルな情報に飛びつく前に考えよう

言い切るのが難しい医療分野において、センセーショナルなメッセージはいったん引いて考えよう

寺戸さん「SNSではないですが、自分が通っている整体の先生のメルマガを登録して読んでいました。その先生が、反ワクチンの先生で(笑)。『この情報を信じても良いのだろうか……?』と悩みました」

鈴木氏「ありがとうございます。良い問題提起をしてくれました。整体の先生方は、『先生』と呼びますが、お医者さんではないんですよね。信頼されるポジションではありますが。で、そういう方たちがある意味突っ込んだ情報を出して来る、というのはありますよね。悪い言い方をすれば、騙されかねないような。ちなみに、新型コロナウイルスが流行していた頃、みなさんはワクチンについて調べたりしました?」

小森さん「僕は調べたわけじゃないんですが、父が元々獣医をしていて。それで、医療従事者しか入れないサイトの情報を見に行って、『ワクチンを打たない理由がない』ということを言っていたので、僕もその影響でワクチン接種をしていたというのはあります」

鈴木氏「ありがとうございます。勉強会前半で『医クラ(医療クラスター)』の話も出しましたけど、コロナウイルスのワクチンや放射能関連のように両極端に意見が分かれる情報が出ている場合、自分が信じたい情報だけを追っていくという傾向があって。自分が信じたくない意見はブロックするとか、聞かないとか、そういう行動に走るケースがあります。みなさんが情報をピックアップする時にどういう事を注意した方が良いかという話をすると、強いメッセージ発信をする方については、一旦は眉唾だと思って見ておいた方が良いです。これは、SNSに限った話ではないですが。そもそも医療というのは、言い切るのが難しいんです。例えば、『お薬が絶対に効く』、『絶対に副作用がない』なんて言い切れないです。医療は確率論でしかないので、分かっている人ほど言い切らないものです。まぁ、言い切らないと強くアピールが出来ないので、悩ましいのですが(笑)。なので、強く言い切る、センセーショナルに伝えてくるようなものは、一旦引いて見るというのがひとつ。あとは、違う意見を言っている人達が何を言っているのかを見ておく。そして、誰が言っているか、というのも大事です。その領域の専門医が数名、同じことを言っていたなら確かな情報だな……と思うような感じです。ちなみに、専門領域が同じでも、みなさん仲が良いわけではないです(笑)。でも、そこで同じような意見があれば、信じても良さそうだという感じになりますよね。この辺りがSNSをチェックする時のコツです。では、みなさんの方から何かご質問はありますか?」

小森さん「先ほど、海外はSNSでも発信をしているけれど、日本は薬機法などの関係もあって発信するメリットが殆ど無いのでリスクを冒してまでやらないということでしたが、僕の認識では海外でも薬機法のようなものがあって規制もあると思っているんですけど……」

製薬業界のSNSにもまだまだ活路はある!

鈴木氏「ありがとうございます。すごく鋭い質問ですね。医療用医薬品の規制が緩いのは、アメリカとニュージーランドです。どういうことかというと、TVでも薬のブランド名を使った宣伝をすることが許されている国です。そういう意味では、ヨーロッパは日本に近い形の規制があります。でも、ヨーロッパでアカウントがある製薬企業と見比べてみても、日本の方が発信はしていないですね」

小森さん「ありがとうございます。それに関連してなんですが、先ほど鈴木さんは『日本の製薬企業ももっと発信しても良いのでは』という話もあったかと思うのですが、薬機法で制限されている中で日本の製薬企業のSNS発信は何をすれば良いのでしょう?」

鈴木氏「これについては2つの視点があるかと思っていて。1つは、疾患にフォーカスする。日本の製薬企業は、患者さん向けのWebサイトで疾患啓発はしています。ただ、Webサイトだとあまり更新できないし、タイムリーな発信ができない。そんな中で、該当する疾患周辺で『こんなニュースがある』、『世界ではこんなことが行われている』とか、差し障りのない範囲でSNSを使ってもっと発信できるのかなというのがあります。もう1つの視点は、CSR的な発信です。医療用医薬品は治験という厳しいプロセスを経て世に出てきているものなんですが、その事実が一般の方にはしっかり伝わっていないんですよね。それについては業界団体がやるべきことなのかもしれないですけど、どうやって医療用医薬品が開発されたり作られているのかであったり、例えば『がんで使っている免疫チェックポイント阻害剤はどういうものなのか?』という話を噛み砕いて説明できるようなものであったりを発信するとか。そういうことはまだまだできるように思いますね」

小森さん「ありがとうございます。あの、例えば……一般の方ではなく、医師とか、医療従事者向けの発信となると難しいのでしょうか……?」

鈴木氏「そこはSNSだと難しいでしょうね。プロフェッショナル向けに相応しい情報となると、薬機法もあるので、クローズな環境でないと難しいかなと思います」

薬の処方は調べた情報+医師への相談でよりスムーズに!

薬の処方は調べた情報+医師への相談でよりスムーズになる

小森さん「ありがとうございます。あと、僕が病気に罹った場合には、医療系のWebサイトを見て、その病気に関する薬について何を処方されるかを調べて『この薬を処方してもらえますか?』と聞いたりすることがあるんですけれど、そうするとお医者さんは嫌な顔をされたりしますが(笑)、やはり、お医者さんとして処方に対する考え方などはあるのかもしれないので、あまりそういったことは聞かない方が良いのでしょうか?」

鈴木氏「これまたすごく良い質問ですね! まず、病院に行く際に前もって色々調べているというのは素晴らしいと思います。ただ、そこで『痛いので、痛み止めを貰えますか?』という場合でも、痛みの種類によって出すべき薬は変えたりすることはあるので、お医者さんの視点に立つと、そこまで診た上で出したいというのはあると思いますね。なので、『この成分の薬が……』といった感じで伝えられると、ちょっとそれは……という風になるのは確かにあるかもしれません。一方で、毎年罹る花粉症で、『薬の眠気が辛いから、新しく発売された眠気が少ない薬にしたいのですが』というような言い方は、アリだと思います。毎年その症状で困っているわけですからね。決め打ちで『この薬が欲しい!』と言うと先生も困ってしまうので、『こういう症状を何とかしたいのですが……』のように、質問しながらだと良いと思いますよ(笑)」

小森さん「分かりました、ありがとうございます!」

佐塚さん「あっという間に時間になってしまいましたが、私の方からよろしいでしょうか。次回以降のテーマになる質問になるのかもしれないのですが……製薬企業側がSNSを運用する場合に重要な視点や、どのようにしたらより良い運用ができるのでしょう?」

鈴木氏「やはりこれは、運用に掛かるコストというのが一番ボトルネックになっているのかもしれないですね。先ほどもお伝えしたようにリスクの話もありますから、人も張り付けなくてはならないですし」

佐塚さん「そうですよね。それに、製薬企業の費用対効果という点でみると……良い効果は出にくいですからね。この辺の深い話は、また他の勉強会でお聞きできたら嬉しいなと思います。鈴木さん、出席者のみなさん、本日はありがとうございました!」

鈴木氏「ありがとうございました!」

全員「ありがとうございました!」

―― SNSは情報発信の場として、まだ整備されていない状況であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。それと同時に、製薬企業に合ったSNSの使い方についても検討の余地がある事も感じられました。製薬企業でSNS活用にお悩みの方は、今回の内容を参考により良い情報発信ツールとしてご利用いただければ幸いです。

これからも勉強会レポートとして、医療や製薬に関する専門的な内容をお届けします。