
1月22日に開催された「生成AIサミット」のイベントレポートをお届けします。
メンバーズ外部顧問 池田朋弘氏主催によるオンラインセミナーにて、生成AIプロジェクト統括の彦坂プロデューサーが登壇し、池田氏とともに生成AIのビジネスにおける可能性を探るトークセッションを行いました。今回はその前半部分をレポートしていきますので、ぜひご覧ください。
申込者数1万人越え!生成AIの最新トレンドをキャッチアップ
1月22日(水)にオンラインで開催された「生成AIサミット-Vol.4」。
生成AIに特化したビジネスエキスパートやクリエイターが一堂に集結し、最新の技術、経験、トレンドを共有するイベントです。今回は申込者が1万名を超え、回を重ねるごとに盛り上がりを見せるイベントへと成長しています。
当日は、生成AIを活用した新規事業開発や人材開発、分析などのセッションが行われ、メンバーズからは私たちメンバーズメディカルマーケティングカンパニーの彦坂プロデューサーが登壇しました。彦坂プロデューサーは生成AIプロジェクトを統括、「生成AIサミット-Vol.2」でもトークセッションを担当しています。
今回は『投資対効果がわかる!生成AI導入の3つのステップ』をテーマに池田氏とトークセッションを行いました。
※過去記事「生成AIサミット-Vol.2」のイベントレポートはこちら!

【イベントレポート:前編】生成AIサミット-Vol.2開催!業務活用を阻む5つのハードルと対策を解説
2024.10.18
以前告知した7月17日に開催された「生成AIサミット」のイベントレポートをお届けします。メンバーズ外部顧問 池田朋弘氏主催によるオンラインセミナーにて、生成AIプロジェクト統括の彦坂プロデューサーが登壇し、生成AI活用の […]

【イベントレポート:後編】生成AIサミット-Vol.2開催!業務活用を阻む5つのハードルと対策を解説
2024.10.18
7月17日に開催されたオンラインセミナー「生成AIサミット」のイベントレポートの後編をお届けします。前編に続き、メンバーズ外部顧問 池田朋弘氏と生成AIプロジェクト統括の彦坂プロデューサーのトークセッション内容をお伝えし […]
生成AI導入の成果創出に悩む声は多い!

本セッションのテーマは、生成AI導入後の投資対効果にスポットを当てた内容であることから、開始直後に池田氏は「投資対効果はクライアントにも求められることであるし、社内でも気になる方が多いのでは?」と興味を示しつつ、スタートしていきました。
まず彦坂プロデューサーより生成AI活用の現状について、株式会社Helpfeelの調査データを参考に「8割弱(77.6%)の企業が課題を実感している」ということが語られました。この1~2年の間に多くの企業で生成AIが使える環境になり、導入に踏み出しているにもかかわらず課題がある状況に悩んでいるようです。

さらに、その課題の内容は「必要なスキルを持った人材がいない」「ノウハウがなく、どのように進めればよいか分からない」「活用アイデアやユースケースがない」といった人材・ノウハウに関わるものがかなり多いことが判明しています。
また、導入効果をどう評価しているかについては、「期待を大きく上回る成果をあげた」と「期待を下回る結果になった」という回答の両方がそれぞれ出ており、成果の二極化が進んでいました。このデータに対し彦坂プロデューサーも「成果を出すか、出せないか、まさに成果創出の分岐点に差し掛かっていることを感じている」と語りました。
生成AI活用で成果を創出するための3つのステップを解説!
次に本題について解説に入っていきました。
生成AIのビジネス活用が拡大する中で支援の数も増え、そこでどのようにして短期間でビジネス成果に繋げていくことができたのか。直近の具体的な支援事例をベースに、課題に対してどのようなアプローチが有効なのか、以下の3つのステップに分けて解説していきます。
【STEP1】業務整理~活用領域の特定:業務のどこで生成AIが使えそうなのかを特定する
【STEP2】プロトタイプ高速仮説検証:特定した領域に対してプロトタイプを作成。クイック検証を行う
【STEP3】PoC開発~業務フロー組み込み:PoCの具体的な開発と本格的な業務フローへの組み込み
それぞれのステップごとの事例を詳しくご紹介します。
【STEP1】業務整理~活用領域の特定
最初のステップは、業務を整理し、どこで生成AIが使えそうなのかを特定するパートです。
生成AIの導入効果をどう評価しているかについてのPwC Japanグループの調査データによると、米国では約1/3が「期待を大きく上回った」と回答していますが、日本では期待を上回ったという回答は1割もありません。この差は何だろう?ということを探っていくと、企業での生成AI活用のスタイル〈全社で活用するor特定部署に特化させて活用する〉の違いが見えてきます。
実は、日本では全社活用を目指す企業が多く、米国では個別の事業部門での活用が先行していました。ということは、活用スタイルを特化させることによって成果が期待を大きく上回る可能性が見えてきます。

また、具体的に生成AI活用の成果に繋がった一番の成功要因について日本も米国も最初に押さえるべきポイントはユースケースの設定という結果がでていました。つまり、〈どの領域で、どんな期待値を持ち、どのように取り組むのか〉をユースケースでしっかりと設定することがいかに大事なのかということが分かります。
次に、実際に生成AI活用の第一歩を進める際、ユースケースの設定においてメンバーズが自社で作成し使っているアプリケーションを紹介しました。

このアプリは、支援対象となる企業のURLを入力すると生成AIがその企業の事業内容から業務内容を推測し、どの業務で生成AI活用の可能性がありうるのか(営業、カスタマーサポート、マーケティングetc.)を大まかに分析して出力するというものです。ざっくりとした分析内容ですが、その内容から当たりを付けるために使うことができ、そこを起点に「この部門や業務で使えるのではないか?」という部分について人を介して探ったうえで、より詳細な分析をし「業務プロセス改善診断」として提供します。
診断は、現状の業務の体制、プロセス、品質などが一覧となっており、現状の分析を通してどんな課題があり、どんな解決方法があるのかを可視化することができます。また、診断を出す際に使用しているGPTsの画面を操作しながらの説明もありました。GPTsを使うことで具体的な改善の方向性を一定レベルで提案できるため、“たたき台”としてメンバーズ内でも有効活用できるという声が上がっているとのこと。
そして、ここで出た内容からさらに生成AIとの対話を深めて意味のある診断結果をアウトプットしていきます。

池田氏も「AIでユースケースの絞り込みから、絞ったユースケースがどこで使えそうかという診断の大枠までできてしまうことですね。素晴らしい!」と、業務整備および特定方法に興味を示していました。
【STEP2】プロトタイプ高速仮説検証
2つめは、STEP1で特定した業務領域に対してプロトタイプをクイックに検証していく段階です。
前段階で取り組むべき課題が見えてきたとしても、それを実装するとなると予算や人的なリソースが限られてきます。さらに、技術的な変化も早く、現状では実績が少ない生成AIに対して大幅なコストをかけて開発に取り組んで良いものか?となりがちですが、そういったケースにこそ「プロトタイプ高速仮説検証」をおすすめしています。
例えば、「顧客ニーズ分析における生成AI活用」「営業トークのスクリプト作成」というテーマがあった場合、どのようなプラットフォームを使ってプロトタイプを作成していくか。検証アプローチの選択肢について言及していきました。
アプローチの選択肢を「スクラッチ開発/ローコード系/ノーコード系」の3つに分けて整理すると、スクラッチ開発はコストも時間も掛かるため、初手には向いていません。ノーコード系だと、誰でも使える反面、柔軟性・拡張性がないというデメリットがあります。そして、その中間程度の機能を持つローコード系だと、開発の柔軟性などについてバランスが取れます。ローコード開発の際におすすめなのがDifyというプラットフォームで、Difyはオープンソースで日本語対応しているなど使い勝手が良く、ローコード・ノーコードでAIのアプリが作れるというもの。メンバーズでもプロトタイプを作成する際に導入しています。

そして、Difyを導入し成果を上げた事例として、東京都の事例をピックアップして紹介しました。「GovTech東京」は、都と区市町村を含めた東京全体のDXを効果的に進める新たなプラットフォームとして、2023年に東京都庁の外側に設立された組織であり、業務を行う際にDifyを使える環境を構築。都の各局、区や町、自治体ごとの独立したワークスペースを確保し、その中で非エンジニアである担当者がAIのアプリケーションを構築していたというもの。同様の事例は大手企業などでも発表されているようです。

また、メンバーズの事例として池田氏との取り組みでもある「生成AI活用壁打ち道場」の事例も紹介。
こちらは、生成AIを活用するための“壁打ち”をしていくという、社内の施策です。メンバーズ社員が自分の担当業務に対して何かしら効率化したい、成果を上げていきたい、という目的に対して生成AIを組み込みたいけれど方法が分からない、知見がない社員のために池田氏へ定期的に相談=壁打ち会を実施しています。壁打ち会は池田氏に対して社員が矢継ぎ早に質問し、池田氏が高速で返答して課題を解決していくというもの。壁打ちをすることでどう進めれば良いのかという答えを各々見つけていきますので、その解を持ってDifyを使って実装し、そこで試作したプロトタイプをさらに評価していくという社内への「プロトタイプ高速仮説検証」の取り組みです。
とは言っても、業務の繁忙期でそこまで手が回らないという時もあり、そういったケースでは生成AIアンバサダーチーム(※)の事務局がリソースを貸してプロトタイプを作って提供をすることもあり、工夫を重ねながら社内業務のAI化をしているとのこと。
(※) メンバーズ社内の有志で結成された、プロンプトエンジニアリング力のある社員のチーム

さらに、ここで「生成AI活用壁打ち道場」で試作した事例を2つ紹介しました。
1つは営業の領域の課題を解決するために、営業サポートエージェントを開発したという事例。STEP1で使われていた企業分析を実行し、その結果から自社のサービスと照合してテレアポのトークスクリプトやメールの文章のたたき台をDifyで作成したというものです。
2つ目は、定期的に実施するイベントのレポート作成業務の負担を軽減するもので、こちらは記事作成のプロセスをステップ(タイトル作成、構成案、見出し作成etc.)ごとに分解し、ステップごとのプロンプトをDifyのワークフローに登録していきました。そこへイベントの音声データをアップロードし、そこから文字起こしをして内容をまとめ、読まれやすいタイトルなどを組み込んでアウトプットができるように自動化していったという事例です。また、企業データの参照をしながらアウトプットを出せるRAG(検索拡張生成)も機能として活用できますので、以前はこのような作業に対してフロントエンドエンジニアやデザイナーなどがいなければ難しい作業となっていましたが、Difyであれば比較的容易に一連のフローを作って試すことができます。

これらの事例について池田氏は「軽く作ることができて実現の可能性がある程度分かるのが良いですね」と感想を述べ、彦坂プロデューサーも「Difyはプロトタイプを作る際に最適なツールだと思います」と、その効果について納得感を見せつつSTEP2の説明をまとめました。
引き続き生成AIの最新の知見と活用方法をご紹介します!

前半では、3つのステップの最初の2つ、業務領域の特定、プロトタイプ検証とともに、弊社における効果的な取り組み事例となったものについて詳しく解説していきました。後編も引き続き、生成AI活用で成果を創出するためのステップの最後(PoC開発~業務フロー組み込み)を解説していきます。生成AI活用が上手く進まない方や組織内へ浸透させていきたい方のヒントやアイデア作りに活かしていただける内容です。楽しみにお待ちください。
その他、医療・製薬・ヘルスケア企業に特化したデジタルマーケティングのご支援についてご相談がありましたら、こちらからお問い合わせください。
イベント登壇者

彦坂 圭/Hikosaka Kei
職種: プロデューサー/マネージャー
入社年:2012年
経歴:メンバーズ入社後、経営企画室で業績管理スキームの構築・推進に従事した後、SNSや広告支援を行う部署にて様々な業界のマーケティングを支援。2021年からは製薬・ヘルスケア業界特化カンパニーにて、大手ヘルスケア企業の患者向けサービスの会員獲得から活性化の戦略策定から実行支援をリード。また生成AI活用を前提とした業務フロー構築を通した、実効性のある生成AIの組織定着の支援を行う。