メディカル・インサイト 鈴木英介氏 勉強会レポート:後編【がん治療の進化と個別化医療〜遺伝子パネル検査の意義】

コラム

公開日:2023.02.22
更新日:2023.03.06

みなさん、こんにちは。広報担当です。
今回は、株式会社メディカル・インサイトの代表取締役社長、鈴木氏による勉強会「がん治療の進化」の続きの内容となります。前編では、がん治療の歴史を辿ってきましたが、後半は最新のがん治療や治療の組み合わせなど、さらに興味深く深い話が展開されて行きました。また、遺伝子パネル検査の情報の活用などについてもディスカッションしています。ぜひ、ご覧ください。

多くの患者さんにはまだ遠い「がん遺伝子パネル検査」

佐塚さん「それでは、引き続き『がん治療の進化と個別化医療〜遺伝子パネル検査の意義』ということで、勉強会を続けていきますので、よろしくお願いいたします」

清水さん・中野さん「よろしくお願いします」

鈴木氏「前回、がん治療の進化の歴史については概ね皆さんに説明をし終えましたので、ここからは質問を伺っていきましょうか」

佐塚さん「では、私から質問させてください。例えば、少し体調が悪い程度だと『がん遺伝子パネル検査』をやってみようかという話にはならないかと。体調不良を感じてから、がん治療までの道のりが遠く感じました」

鈴木氏「良い質問ですね。いつ、どういうタイミングで患者さんは『がん遺伝子パネル検査』を受けるのかということですが、理想的にはがんだと判ったら、そこでその人に最適な治療を調べるべく『がん遺伝子パネル検査』を受けられると良いんです。でも、そうなっていないのは、まず、見つかる遺伝子異常に対応する治療薬が大半のケースでまだ無いということがあります。遺伝子異常の情報が分かった時に一番対応する治療薬があるのは肺がんですが、肺がんでも、全員にいきなり検査ということにはならない。原則としていわゆるステージ4というような人に実施する検査になっていて、他のがんの場合は同じステージ4でも標準治療をやって、それでも手立てが無くなったら…というケースですね。保険適用という意味では。なので、肺がん以外の一般的ながん患者さんにとっては、まだ少し遠い話です。今後、対応する治療薬が増え、検査のコストが下がってくれば、いつでも『がん遺伝子パネル検査』をしましょうという時代が来るかもしれないですね。それほど近しい未来ではないかもしれませんが」

「がん遺伝子パネル検査」のデータをどう扱うべきか?

佐塚さん「ありがとうございます。2つ目の質問ですが、治療のコストについて。がん治療の市場は、世界という単位で見てもすごく大きいですよね。この『がん遺伝子パネル検査』は、がん治療薬の市場に含まれているものなのでしょうか」

鈴木氏「これに関しては、あくまで検査なので薬の市場には含まれないですね。でも、がん遺伝子パネル検査の価値は本来大きいものです。この検査で真に効果のある治療が特定でき、無駄な治療を行なう必要がなくなる訳ですから。これまで検査はそれほど大きな市場ではありませんでしたが、個人的にはがん遺伝子パネル検査は価値に応じた大きな市場になって行くと考えています」

佐塚さん「分かりました。ありがとうございます。医療機器の企業さまとの関係性が気になったので、ちょっとお聞きしました」

鈴木氏「日本の医療機器メーカーでこの検査を扱っているのは、シスメックス (Sysmex)…こちらは女子フィギュアスケートの選手が所属している会社という方がピンとくるかもしれませんね。海外ならガーダントヘルス(Guardant Health)、ナテラ(Natera)…いくつかありますね」

佐塚さん「我々もデジタルを支援している会社なので、こういった先進技術には興味があります。今後このような検査はデジタルとどうミックスしていくのか、我々のビジネスとしてどんな可能性があると思いますか?」

鈴木氏「メンバーズがどこまでやるか、というのはまた別の話として。以前のインタビューでPHR(Personal Health Record)の世界が脚光を浴びるようになるという話をしたと思いますが、そこと一番ダイレクトに結びつく話だと思っています。自分の治療の方針として重要な情報、パーソナルな情報でもありますよね。自分自身の健康情報を扱ううえで極めて重要かつ、センシティブな情報となって来るので、組み合わせの相性は良さそうだと感じます」

佐塚さん「ありがとうございます。例えば、データベースをどのように活用してデータを管理するとか、遺伝子情報である程度ターゲットの傾向を見て、マーケティングオートメーションを使って患者さまに治療のアプローチをするとか…最近参加したBtoDの集まりでも、マーケティングオートメーションについてはホットな話題になっていたのでお聞きしました」

「部位別」だったがんの種類が「遺伝子変異の種類」へ変わる?

鈴木氏「未来の話をもう少しすると、遺伝子変異のタイプは、最初は乳がんにしかHER2陽性はないとされていたのですが、他のがんにもあったんです。胃がんの一部にもHER2陽性があるので、ハーセプチンが使われるようになりました。そして、大腸がんのごく一部、肺がんのごく一部にもあるというのが分かってきています。何が言いたいのかというと、今まではがんが発生した部位でがんの種類を判断していましたが、『HER2がん』のような、遺伝子変異の種類によってがんの種類が違うと考えるようになるんじゃないかと。昔は一部のオピニオンリーダーの先生が夢として語られていたことですが、かなり現実になりつつある印象があります」

清水さん「私からも質問させてください。先ほどの話にも絡む所ですが、『がん遺伝子パネル検査』の検査情報などはセンシティブな情報ですよね。検査の期間のセキュリティの担保はどうなっているんでしょうか? 私たちができる技術もあると思いますが、ブロックチェーン技術なども相性が良いと言われています。この辺りはどうなのでしょう…?」

鈴木氏「素晴らしい視点ですが、今の段階での具体案はないと思います。現在は、各病院の電子カルテに乗ってくる情報にはなりますが、PHRとして個人が情報を扱うようになった時、どうやってセキュリティを担保するか。仰っていただいたような点はこれから大きなイシューになるとは思います」

実は学生時代、がんの治療法や遺伝子を学んでいた新卒メンバー!

清水さん「ありがとうございます。もう1点、個人的な興味なんですが、分子標的薬って治療をした後はどうするのでしょう? 光を当てるとか、治療の組み合わせとか…」

鈴木氏「化学療法剤との組み合わせは良くあります。例えば、ハーセプチンと化学療法剤との組み合わせは標準治療。放射線治療との組み合わせはあまりないですね。いま熱いのは、免疫チェックポイント阻害剤。化学療法、分子標的薬、その次に出てきたものです。本庶佑先生が2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しましたが、あの年の受賞者の研究の成果から開発されたものですね。免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬の組み合わせの開発は盛んに行われています」

清水さん「ありがとうございます。なぜ、ここに興味を持っていたのかというと…今日の話を聞くまでずっと忘れていたのですが、大学の時に光線力学療法の研究をしていた! と思い出しまして(笑)」

鈴木氏「そうなんですか(笑)! 今のお話で言うと、光免疫療法という新しい治療が出てきています。それがまさに放射線治療と分子標的薬を組み合わせたような治療で、楽天メディカルが取り組んでいて、メディアにも取り上げられています。アメリカ国立がん研究所(NCI)で小林久隆先生が開発した治療で、日本でも頭頸部がんで承認(条件付き早期承認)されましたね。中野さんはどうですか?」

中野さん「私も清水さんのような研究をしていまして、PD-1(Programmed cell death 1)の研究とか…それがビジネスとして関われると思うとワクワクするところでもあるのですが」

鈴木氏「おぉ、そうですか(笑)! そんな人ばかりが集まっているんですか。ビックリしますね(笑)」

中野さん「『がん遺伝子パネル検査』のお話で思ったのですが、乳がんは転移も多いので色々なところも調べないと…と思うのですが、遺伝子を検査するには時間もすごく掛かってしまうのかなと」

鈴木氏「そうですね。乳がんはまず、ホルモンとHER2が陽性であるかどうか。そこが大きい。でも、ホルモンもHER2も陰性、つまりトリプルネガティブの乳がんの場合、実はその中には見えていない遺伝子変異が隠れていたりするのもありうるかなと。先ほど言った、免疫チェックポイント阻害剤が効くかどうかは、PD-L1というタンパク質が陽性であるのかどうかというのを見に行くのですが、それは『がん遺伝子パネル検査』とは別の検査をしなくてはならないですね」

中野さん「ありがとうございました」

佐塚さん「では、質問も出そろったようなので、今回はここまでにしましょうか。濃い勉強会になりましたね! 鈴木さん、ありがとうございました」

鈴木氏「みなさんお疲れ様でした。ありがとうございます」

―― がん治療の進化シリーズの勉強会は以上となります。

今後も別のテーマで勉強会を開催したものをレポートしていきますので、どうぞ楽しみにお待ちください。